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大学院医歯薬保健学研究科 田原栄俊教授らによる 「抗がん剤耐性がん細胞・がん幹細胞を死滅させる核酸医薬」の 研究開発がAMEDに採択

国立研究開発法人 日本医療研究開発機構(以下、AMED)による、平成29年度「革新的医療技術創出拠点プロジェクト」(北海道大学拠点)関連シーズ「橋渡し研究戦略的推進プログラム」に、大学院医歯薬保健学研究科の田原栄俊教授が研究開発代表者を務める研究が採択されました。

【課題の概要】
抗がん剤の課題は、抗がん剤治療に対する効果がないといわれる「がん幹細胞」および抗がん剤治療後に出現する「抗がん剤耐性がん細胞」に対する有効な治療薬がないことです。本研究では、これまで研究代表者らが研究開発を行っているヒトの体内に存在しているマイクロRNA*1とよばれる核酸を用いて、「がん幹細胞」および「抗がん剤耐性がん細胞」の両方に効果を示す革新的抗腫瘍核酸医薬*2の開発を行うものです。このマイクロRNAは、細胞老化に関わるマイクロRNAの中から、顕著な抗腫瘍活性を持つものとして選定されたもので、これまでにない腫瘍活性を示す革新的な核酸です。本研究のシーズBは、非臨床POC取得を目指した非臨床データを取得することを目的としたもので、本研究ではこの革新的なマイクロRNA核酸と株式会社スリー・ディー・マトリックスの開発した界面活性剤ペプチド*3を組み合わせた革新的抗腫瘍核酸医薬を用いて、悪性胸膜中皮腫(肺を覆う胸膜の表面に発生するがん)を対象疾患とし非臨床POC取得をめざした実用化をめざすものです。本研究目的が達成されれば、ヒトの臨床治験の実施を計画しており、これまでに治療が困難であり再発率も高い悪性胸膜中皮腫の治療に大きな期待が持たれます。抗がん剤による治療で抗がん剤に対して抵抗性のある抗がん剤耐性がん細胞にも効果を示すことから、再発時のがん治療薬としても期待されます。

【採択課題名】
がん幹細胞および抗癌剤耐性がん細胞に作用する革新的抗腫瘍核酸医薬品の開発

【研究代表者】
大学院医歯薬保健学研究科 細胞分子生物学研究室・教授・田原 栄俊

【分担研究者】
広島大学 原爆放射線医科学研究所・教授 岡田 守人
広島大学大学院医歯薬保健学研究科(医)・教授 田中 純子
スリー・ディー・マトリックス・事業開発部 松田 範昭

【分担企業】
株式会社スリー・ディー・マトリックス

【革新的医療技術創出拠点プロジェクト概要】
橋渡し研究戦略的推進プログラムでは、 医療法上の臨床研究中核病院等と連携して日本全体で橋渡し研究を推進する体制を強化・発展させ、日本発の革新的な医薬品・医療機器等をより多く持続的に創出することにより、世界一の健康長寿社会の 実現に貢献することを目指し、橋渡し研究支援拠点として 10 機関(北海道大学(分担機関:札幌医科大学、旭川医科大学)、東北大学、筑波大学、 東京大学、慶應義塾大学、名古屋大学、京都大学、大阪大学、岡山大学、九州大学)が採択されました。様々な開発段階にあるシーズをシーズA、B及び C に振り分けられていますが、今回の広島大学の採択は、拠点以外の大学等の研究機関シーズとしてシーズB(非臨床POC取得を目指す研究開発課題等)を行うものとして採択されました。

【悪性胸膜中皮腫について】
肺を覆う胸膜の表面に発生するがんであり、アスベストが発症原因の多くを占めています。潜伏期間が非常に長く、今後2035年をピークに2~3倍の発症の増加が予測されています。現行の治療法は手術と抗がん剤の併用ですが、手術後の再発も多く、診断5年後の死亡率は90%超と極めて高いものであり、治療のための新たな薬剤が望まれています。

【今後の展望】
広島大学と株式会社スリー・ディー・マトリックスは、両者による共同特許出願を現在準備中です。また、AMEDプログラム終了後は、ヒトへの臨床治験実施に向けて株式会社スリー・ディー・マトリックスと協議の上で、実用化をめざします。

【参考(語句説明)】
*1 マイクロRNA
生体内で合成されて存在する20~25塩基からなる微小なRNAであり、他の複数の遺伝子の発現を多様に調節することで様々な生命現象を制御する分子です。人工的に合成したマイクロRNAを核酸医薬として体外から補充することで、遺伝子発現をコントロールし、様々な疾患を治療する試みがなされています。

*2 核酸医薬
核酸医薬とは、異常な遺伝子の働きに対し、それを抑制するように作用する新しい医薬品です。様々な遺伝子に対する核酸医薬が注目されていますが、現在のところ悪性胸膜中皮腫やがんに対する治療薬として承認されているものはなく、新たな開発が期待されております。

*3 界面活性剤ペプチド
6-10残基程度のアミノ酸から構成されるペプチドで、 疎水性部分と電荷をもつ部分が存在することにより、界面活性剤としての性質を示します。水溶液中で自己組織化されることでナノチューブを形成し、マイクロRNAをはじめとする各種の分子と複合体を形成し、細胞内に分子を送達するDDSとして機能します。

【参考資料】
AMED 採択課題について
http://www.amed.go.jp/koubo/050120170306_kettei.html
田原教授研究室サイト
http://www.telomere.jp

お問い合わせ先

大学院医歯薬保健学研究科 教授 田原栄俊
E-mail:toshi*hiroshima-u.ac.jp (*は半角@に置き換えてください)


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