【研究成果】口腔癌が顎骨浸潤に及ぼすVEGF-Flt-1経路の役割を解明

本研究成果のポイント

  • 本研究により、口腔癌が産生する血管内皮増殖因子(VEGF)がVEGF-Flt-1経路を介して破骨細胞を誘導し、顎骨浸潤に関わることを明らかにしました。

概要

口腔癌が顎骨に浸潤すると治療が難しく予後が悪くなりますので、骨浸潤を制御することは口腔癌の治療においてとても重要です。

VEGFが血管内皮細胞に作用し、腫瘍血管形成を誘導することで、癌の増殖や浸潤を促進しており、癌の悪性形質において重要な役割を担っています。VEGFの受容体の1つであるFlt-1が破骨細胞前駆細胞にも発現し、破骨細胞の遊走や活性化に関わることが報告されていますが、口腔癌の骨浸潤における関与は明らかでありません。

広島大学大学院医歯薬保健学研究科口腔顎顔面病理病態学研究室(髙田 隆教授)の宮内睦美准教授を中心とした研究チームは、口腔癌において高発現しているVEGFが破骨細胞前駆細胞上のFlt-1を活性化し、破骨細胞の形成や活性を促進すること、また、VEGFは癌細胞自体のFlt-1にも作用し、癌細胞にRANKLを発現させ、破骨細胞の分化や活性化をさらに促進することを明らかにしました。VEGF-Flt-1経路を標的とした新しい口腔癌の骨浸潤制御の可能性を見出しました。

本研究成果は、「PLOS ONE」オンライン版に掲載されました。

【図】OSCCが破骨細胞を活性化する2つの経路
Pathway1;OSCCの産生するVEGFは破骨細胞前駆細胞のFlt-1経路を直接活性化し、破骨細胞形成を促進する。
Pathway2;口腔癌の産生するVEGFは口腔癌のFLT-1経路を活性化し、RANKL発現を誘導して破骨細胞形成を活性化する。

論文情報

  • 掲載雑誌:PLOS ONE
  • 論文題目:Roles of VEGF-Flt-1 signaling in malignant behaviors of oral squamous cell carcinoma
  • 著者:Ajiravudh Subarnbhesaj, Mutsumi Miyauchi*, Aki Mikuriya, Phuong Thao Nguyen, Chea Chanbora, Nurina Febrianti Ayunintyas, Miniru Fujita, Shigeaki Toratani, Masaaki Takechi, Shumpei Niida, Takashi Takata*
    *Corresponding author(責任著者)
  • doi: 10.1371/journal.pone.0187092
【お問い合わせ先】

広島大学大学院医歯薬保健学研究科
歯学講座 口腔顎顔面病理病態学研究室
准教授 宮内 睦美

TEL: 082-257-5632
E-mail: mmiya*hiroshima-u.ac.jp(注:*は半角@に置き換えてください)


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