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【研究成果】微小重力環境で筋肉の分化が遅延するメカニズムを解明 ~筋力低下の病態解明や創薬への応用に期待~

本研究成果のポイント

  • 宇宙飛行士のフライト後に代表される微小重力環境への曝露や加齢によって筋力低下が生じることが知られていましたが、その要因については明らかになっていませんでした。
  • 重力制御装置を使用して微小重力環境で筋肉の元になる筋芽細胞 (注1)を培養すると、宇宙実験の結果と同様に筋芽細胞の分化が遅延することがわかりました。また、分化が遅延するメカニズムとして、MyoD1 (注2)のプロモーター (注3)領域におけるDNAメチル化 (注4)が関与していることを発見しました。
  • 本研究成果は、筋力低下の病態解明や新薬の開発等へ応用されることが期待されます。

概要

広島大学大学院医歯薬保健学研究科 弓削類 教授、同大学原爆放射線医科学研究所 谷本圭司 研究所内講師らの研究グループは、微小重力で筋肉の分化が遅延するメカニズムの一端を明らかにしました。

本研究では、重力制御装置 Gravite® (株式会社 スペース・バイオ・ラボラトリーズ)を用いて、ラットの筋芽細胞を微小重力環境 (10-3G: 地上の1/1000倍の重力) (注5)で培養し、通常重力 (1G: 地上における重力)での培養と比べて筋芽細胞の分化が遅延することを発見しました。さらに、微小重力環境での培養によって細胞の分化が遅延する要因として、筋肉の分化を制御する遺伝子の発現を調節する領域におけるDNAメチル化が関与していることを明らかにしました。本研究の成果は、宇宙飛行士に生じる筋力低下や加齢による筋力低下の病態解明や新薬の開発等へ応用されることが期待されます。

本研究成果は、英科学雑誌『Nature Partner Journals (NPJ) Microgravity』に掲載されました。

5月23日、本件について、広島大学霞キャンパスにおいて記者説明会を行いました。

【用語説明】
(注1) 筋芽細胞:筋線維の由来となる細胞。筋芽細胞が分化すると、多核の筋管細胞を形成し、筋線維へと成熟していく。
(注2) MyoD1:細胞が筋細胞系譜へ運命決定する際に重要な役割を果たす遺伝子。
(注3) プロモーター:転写 (DNAの情報をもとにRNAが作られる過程)開始に関与する遺伝子上流部分のことで、遺伝子発現を制御する。
(注4) DNAメチル化:DNAのCpG配列部分でC (シトシン)に-CH3分子 (メチル基)がつくこと。一般に、プロモーターがDNAメチル化されるとその遺伝子の発現は抑制される。
(注5) G:重力を示す単位。

図1:重力環境の変化による筋芽細胞の形態学的および遺伝子発現の違い
微小重力環境では、筋芽細胞のMyoD1遺伝子発現変動が抑制され、筋芽細胞の分化が遅延した。一方、DNAメチル化阻害剤5-AzaC処理によって、微小重力環境での培養の影響が消失した。

説明を行う猪村助教(左)、弓削教授(中央)、古川さん(修了生)(右)

論文情報

  • 論文題目:Simulated microgravity attenuates myogenic differentiation via epigenetic regulations
  • 著者:Takuma Furukawa, Keiji Tanimoto*, Takahiro Fukazawa, Takeshi Imura, Yumi Kawahara, Louis Yuge*
    *:Corresponding authors (責任著者)
  • 掲載雑誌:Nature Partner Journals (NPJ) Microgravity
  • DOI:10.1038/s41526-018-0045-0
【お問い合わせ先】

広島大学大学院医歯薬保健学研究科 
教授 弓削 類
TEL: 082-257-5425
E-mail: ryuge*hiroshima-u.ac.jp (*は半角@に置き換えてください)

広島大学原爆放射線医科学研究所 放射線医療開発分野
研究所内講師 谷本 圭司
TEL: 082-257-5841
E-mail: ktanimo*hiroshima-u.ac.jp (*は半角@に置き換えてください)


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