理化学研究所 広報室 報道担当
TEL:048-467-9272
FAX:048-462-4715
E-mail:ex-press[at]riken.jp
広島大学 広報グループ
TEL: 082-424-3749
FAX: 082-424-6040
E-mail:koho[at]office.hirichima-u.ac.jp
※上記の[at]は@に置き換えてください。
理化学研究所(理研)生命医科学研究センターがんゲノム研究チームの中川英刀チームリーダーと広島大学大学院医歯薬保健学研究科消化器・代謝内科学の茶山一彰教授らの共同研究グループ※は、肝臓に感染したB型肝炎ウイルス(HBV)のゲノム解析を行い、HBVのヒトゲノムへの組み込み機序とウイルスによる発がん機構の一部を解明しました。本研究成果は、今後、B型肝炎から発生する肝臓がんに対する新しい治療薬・予防法と新しいウイルス治療薬の開発への貢献が期待できます。
HBVは肝臓がんの主要な原因であり、世界中で年間約88万人がHBVに起因する疾患で死亡していると推定されています注1)。HBVの感染に伴い、肝細胞のヒトゲノムにHBVゲノムの組み込み[1]が起こり、それが肝臓がん発生に寄与すると考えられています。今回、共同研究グループは、HBV感染者の肝臓がんと隣接する肝臓組織、およびHBV感染マウスモデル[2]から抽出したDNAについて、1,600カ所以上の組み込み部位を検出し詳しく解析しました。その結果HBVゲノムが、マウスモデルでは感染早期の3~7週間で主にミトコンドリアゲノム[3]に、ヒトの肝臓がんや隣接肝臓組織では1サンプルあたり1~279箇所も組み込まれていることが分かりました。ゲノム組み込み部位は、クロマチン[4]が開いている領域に多く、肝臓がんでは、特定のがん関連遺伝子に組み込こまれており、これががん化に寄与していると考えられます。さらに、HBVとヒトとの融合遺伝子の発現が確認され、これがHBVの感染成立やがん化と関連があると推測されます。
本研究は、米国の科学雑誌『Oncotarget』に掲載されるのに先立ち、オンライン版(5月18日付け)に掲載されました。
※共同研究グループ
理化学研究所 生命医科学研究センター がんゲノム研究チーム
チームリーダー 中川 英刀
研究員(研究当時) 古田 繭子
広島大学 大学院医歯薬保健学研究科 消化器・代謝内科学
教授 茶山 一彰
東京大学 医科学研究所 ヒトゲノム解析センター
教授 宮野 悟
和歌山県立医科大学 第2外科
教授 山上 裕機
注1)WHOホームページ
http://www.who.int/mediacentre/factsheets/fs204/en/
【補足説明】
[1] HBVゲノムの組み込み
ウイルスゲノムの組み込みとは、ウイルスのDNA配列がヒトのゲノム配列に入り込む現象のことを指す。HBVの場合、まずウイルスに感染した正常肝臓組織においてHBVゲノム組み込みが起こり、それが契機となってがん化が起こり、がん化に伴いがん細胞にも引き継がれると考えられている。
[2] HBV感染マウスモデル
HBVはヒトの肝臓にのみ感染するため、HBV感染のモデルには、ヒトの肝臓細胞を移植して生着する特殊なマウスが用いられる。このマウスにHBVを感染させ、経時的に肝細胞を採取し、その中に増殖したHBVを解析する。
[3] ミトコンドリアゲノム
ミトコンドリアは、細胞に必要なエネルギーを取り出す呼吸機能を担う細胞内小器官。ミトコンドリアは細胞内に数百個以上存在し、ミトコンドリア内にも約16,000塩基対ほどのゲノムが存在する。ミトコンドリアゲノムは、呼吸機能をつかさどる酵素など37個の遺伝子をコードしている。HBVは、感染した際にミトコンドリアに作用するという報告がある。
[4] クロマチン
2重DNA鎖は、細胞内ではさまざまな修飾が加わった上で、ヒストンタンパク質の周りに巻き付き、折り畳まれている。この構造をクロマチンという。RNAへの転写、DNAの複製、DNAの修復の際には、この折り畳み構造がほぐれて、2重DNA鎖は露出して、さまざまな分子や外来物が直接作用できる状態になる。
B型肝炎ウイルスのヒトゲノムへの組み込み
理化学研究所 広報室 報道担当
TEL:048-467-9272
FAX:048-462-4715
E-mail:ex-press[at]riken.jp
広島大学 広報グループ
TEL: 082-424-3749
FAX: 082-424-6040
E-mail:koho[at]office.hirichima-u.ac.jp
※上記の[at]は@に置き換えてください。
掲載日 : 2018年05月25日
Copyright © 2003- 広島大学