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大学院医歯薬保健学研究科 安達伸生教授と三洋化成工業株式会社らによる「革新的半月板損傷治療技術の創生研究」の研究開発がAMEDに採択

~機能性タンパク質シルクエラスチンを半月板治療に展開。生体組織の修復・再生促進の足場として期待~

広島大学大学院医歯薬保健学研究科(整形外科学教室)安達伸生教授らの研究グループは、三洋化成工業株式会社が有する機能性タンパク質「シルクエラスチン※1」を整形外科領域に応用し、新たな組織修復・再生療法の開発を進めており、この度、研究課題「革新的半月板損傷治療技術の創生研究」が、国立研究開発法人日本医療研究開発機構(AMED)の医療分野研究成果展開事業「産学連携医療イノベーション創出プログラムセットアップスキーム(ACT-MS)」に採択されました。ACT-MSは、可能性検証フェーズを対象とする支援プログラムです。

シルクエラスチンは、2009年に同社が技術導入した機能性タンパク質で、細胞親和性が高く弾性に富むという特長を生かして創傷治癒材向けに研究開発を進めています。その過程で、細胞の分化・増殖の足場として損傷部の修復を促進することがわかってきました。このことは、骨などの硬組織も含めた生体組織の修復・再生促進の足場として高い可能性を秘めています。

一方、同研究グループでは膝関節疾患の治療・改善において長く研究に携わり、数々の治療実績を有しています。また、自己の半月板の組織を用いた修復・再生の研究開発に取り組んでおり、現在、三洋化成工業株式会社の開発しているシルクエラスチンを応用すべく共同で開発を行っています。

膝関節の膝軟骨や半月板は、運動の衝撃を吸収するクッションとしてはたらき、関節の摩擦を低減して滑らかに動かすために重要な組織です。しかし、加齢やスポーツなどにより、膝軟骨や半月板が損傷・変形するなどした場合、変形性膝関節症につながり、慢性的な痛みから日常生活にも支障をきたします。

近年、膝関節疾患の根治のためには、軟骨の修復だけでなく、半月板の修復・再生が重要であることが明らかになってきました。しかし、半月板は血行に乏しく、一度損傷すると元に戻らないと言われており、やむを得ない場合は半月板の切除などにより痛みを取り除く治療が行われています。しかし半月板の切除は一部であっても膝の機能に大きな影響を及ぼし、後に変形性膝関節症を生じて曲げ伸ばしや歩行が困難になるため、できるだけ温存することが望まれています。

今回、広島大学の動物実験において、半月板修復の足場(移植基材)としてシルクエラスチンの有効性が確認できたため、臨床応用に向けてより具体的な研究を行っていきます。

本研究プログラムでは、シルクエラスチンの移植基材としての機能評価、最適な材型の選定、作用機序の明確化および生物学的有効性の検証および臨床上の問題点の抽出と解決方法の立案などが計画されています。本研究を通して低侵襲で根本的な治療法が確立され、膝の疾患に悩む患者の救済につながることが期待できます。

AMED産学連携医療イノベーション創出プログラムは、大学発の技術シーズを効率的に実用化プロセスに乗せるための、産学連携による研究開発を支援する制度です。

ACT-MSは、大学の「挑戦的な技術シーズ」について、技術的ボトルネックを解消することを目的とした“中継ぎ的(セットアップ)"研究開発を効率的に支援する制度です。

広島大学はセットアップ企業である三洋化成工業株式会社と協力して半月板損傷治療技術の実用化を目指していきます。

【※1:シルクエラスチン】
シルクエラスチンは、天然由来のタンパク質であるエラスチン(皮膚を構成するタンパク)とシルクフィブロイン(シルク(絹)を構成するタンパク)を模倣し、遺伝子組み換え技術によって作製された人工タンパク質です。シルクエラスチンの特長として、分子内にエラスチン配列を多く含むため、細胞親和性が高く、かつ、弾性に富むことから、創傷治療剤などに適しています。

【採択課題名】
革新的半月板損傷治療技術の創生研究

【研究者】
広島大学 大学院医歯薬保健学研究科(整形外科学) 教授 安達 伸生
広島大学 大学病院未来医療センター 講師 亀井 直輔
広島大学 大学病院未来医療センター 講師 味八木 茂
広島大学 大学院医歯薬保健学研究科(整形外科学) 助教 石川 正和
広島大学 大学病院(整形外科) 助教 中佐 智幸

シルクエラスチンの感温ゲル化性

シルクエラスチンの感温ゲル化性
加温することで不可逆なゲル化物となる

シルクエラスチンの材型加工性

シルクエラスチンの材型加工性
スポンジ状、フィルム状などさまざまな形状に加工できる

【お問い合わせ先】

広島大学大学院医歯薬保健学研究科
教授 安達 伸生

TEL: 082-257-5230
E-mail: seikei*hiroshima-u.ac.jp (*は半角@に置き換えてください)


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