【研究成果】蕁麻疹でみられる発疹の症状を数理モデルで再現 ~新たな治療法確立の可能性~

本研究成果のポイント

  • 蕁麻疹はよくある皮膚疾患で、様々な形や大きさの発疹(膨疹)が現れますが、それらがなぜ、どのようにしてその形で現れるか分っていませんでした。
  • 本研究では、反応拡散モデルと呼ばれる数学的な方程式を基に、膨疹形成の数理モデルを構築することに成功しました。
  • 数理モデルによる分析から、臨床的に観察される膨疹には、従来考えられてきたヒスタミンの作用とそれに対する抑制性の作用の二つの機序が関与することが予測されます。
  • 今後、数理モデルから予測される抑制系に関わる分子や機序が生物学的手法により分子レベルで同定され、蕁麻疹の病態理解が進み、膨疹の形態分析に基づく新たな病型分類や治療法の確立につながることが期待されます。

概要

広島大学大学院統合生命科学研究科 李聖林 准教授、広島大学大学院医系科学研究科皮膚科学 秀道広 教授、高萩俊輔 助教、柳瀬雄輝 助教は、蕁麻疹の定性的な臨床データと数理モデルを融合することにより、蕁麻疹でみられる発疹(膨疹)の多様な形を数理モデルで再現することに成功しました。

蕁麻疹では、その種類や患者さんにより、さまざまな形、大きさの膨疹が現れますが、これまでその多様な形態がどのようにして形成されるのかは分っていませんでした。

本研究では、数学的手法である反応拡散モデルを用い、膨疹形成の数理モデルを構築することに成功しました。そのモデルからは、蕁麻疹の膨疹形成には従来から考えられてきたヒスタミンの作用の他、それに対する抑制性の機序が関与することが予測されました。

今後、生物学的手法によりその抑制系の機序および分子が同定されることにより、蕁麻疹の病態理解が進み、ひいては膨疹の形態分析に基づく新たな病型分類あるいは治療法の確立につながる可能性があります。

本研究成果は、「PLOS Computational Biology」オンライン版に掲載されました。

蕁麻疹で見られる多様な幾何学的形態と数理モデルにより再現された膨疹の形態

蕁麻疹で見られる多様な幾何学的形態と数理モデルにより再現された膨疹の形態

論文情報

  • 掲載誌:PLOS Computational Biology
  • 論文タイトル: A Single Reaction-Diffusion Equation for the Multifarious Eruptions of Urticaria
  • 著者名: 李 聖林1,3,*, 柳瀬 雄輝2, 高萩俊輔2, 秀 道広2,*  
    所属
    1 広島大学大学院統合生命科学研究科・数理生命プログラム
    2 広島大学大学院医系科学研究科皮膚科
    3 JST さきがけ
    * 共同責任著者
  • DOI: 10.1371/journal.pcbi.1007590
【お問い合わせ先】

<研究に関すること>
広島大学大学院統合生命科学研究科 数理生命科学プログラム 
准教授 李聖林 
E-mail: seirin*hiroshima-u.ac.jp (注:*は半角@に置き換えてください)

広島大学大学院医系科学研究科 皮膚科学
教授 秀 道広 
TEL: 082-257-5235
E-mail: ed1h-w1de-road*hiroshima-u.ac.jp (注:*は半角@に置き換えてください)

<JST事業に関すること>
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舘澤 博子
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