広島大学大学院医系科学研究科の酒寄信幸助教、福島県立医科大学医学部の小林和人教授らの研究グループは、現代社会にみられる脂肪酸バランスの悪い食事を妊娠中の母親が食べると、生まれてくる子の脳に異常が起こり、子が高カロリー食をより好むようになることを発見しました。
オメガ6脂肪酸とオメガ3脂肪酸は油に含まれる重要な栄養素です。現代の多くの国々では、オメガ6脂肪酸を豊富に含む植物油などを口にする機会が増え、一方でオメガ3脂肪酸を豊富に含む魚などの摂取は減っています。そのため、食の高オメガ6/低オメガ3化が進んでいます。
研究グループは、妊娠マウスが高オメガ6/低オメガ3餌を食べると、生まれてくる子が砂糖や油をより好んで食べるようになり、結果として体重が増えやすくなることを明らかにしました。また、依存症などに関わることが知られるドパミン神経細胞という細胞が子の脳で過剰に作られていることも分かり、これにより子が砂糖や油をより求めるようになったと考えられます。
本研究は、世界中で肥満人口が増えている原因を新たにつきとめた可能性があり、妊娠中の栄養管理により子の将来の肥満を予防する取り組みの開発に向けて、成果の応用が期待されます。
本研究成果は、英国科学誌Communications Biologyにて掲載されました。
本研究成果は、独立行政法人日本学術振興会特別研究員奨励費、文部科学省科学研究費補助金(新学術領域研究「意志動力学(ウィルダイナミクス)の創成と推進」、新学術領域研究「学術研究支援基盤形成」、若手研究)、日本栄養・食糧学会若手研究助成、日本脂質栄養学会大塚賞のご支援によって得られました。