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【研究成果】認知症本人・家族に寄り添う観点から基礎知識・具体的行動プランをまとめた新型コロナウィルス感染症対策パンフレットを初めて作成~日本老年医学会と共同で行った調査結果を基に~(動画あり)

本研究成果のポイント

  • 広島大学大学院医系科学研究科共生社会医学講座が主となって実施した先般の研究調査では、新型コロナウィルス感染症(COVID-19)拡大下において、調査対象の入所系医療・介護施設の約4割、介護支援専門員の約4割が介護サービスの制限や外出自粛等の感染予防の取組によって「認知症者に影響が生じた」とし、特に認知機能の低下、身体活動量の低下等の影響がみられたと回答しました。
  • 調査結果を踏まえ、この度、認知症ご本人とご家族がご本人の状態に応じて実践できる感染予防や認知・身体機能悪化予防の取り組み、感染拡大時に備えるための基礎知識と具体的な行動プランをまとめたパンフレットを作成しました。

概要

新型コロナウィルス感染症(COVID-19)感染流行は第3波が到来し、今後も長期的な感染予防に配慮した新しい生活様式の継続が必要となってきています。一方、認知症の人は、認知機能低下による情報やサービスへのアクセスの困難さ、環境変化への適応の困難さなどから新しい生活様式への実践が困難なケースがあり、そのためにご家族(介護者)の介護負担感が増していると言われています。

また、日々メディア等を通して新型コロナウィルス感染症に関する多くの情報に接する中、ご本人、ご家族の中には不安が増大し、大きなストレスを抱えている方もおられます。さらに、新型コロナウィルス感染症に対する恐怖心から、過度な介護保険サービスの利用控えや外出自粛につながっている方もおられます。これらによって、認知症の人のさらなる認知症症状の悪化や身体機能低下、さらにはご家族自身の負担感の増大や抑うつの発症などのリスクも高まっていると考えられます。

以上より、新型コロナウィルス感染予防のための日常生活の工夫や感染拡大時の備えに関する適切、かつ個人の状態に即した情報提供や感染予防実践への支援は、緊切の課題と言えます。

本成果の根拠となる調査研究結果(感染拡大下において認知症の人にみられた影響)
広島大学 大学院医系科学研究 科共生社会医学講座の石井伸弥寄附講座教授は、これまでに一般社団法人日本老年医学会、広島大学公衆衛生学講座と共同で高齢者医療・介護施設および介護支援専門員を対象としたオンラインによる質問票調査を行い、認知症の人に対する新型コロナウィルス感染症感染拡大の影響を調査しました。

その結果、医療・介護施設の38.5%、介護支援専門員の38.1%が認知症の人に影響が生じたとしており、特に行動・心理症状の出現・悪化、認知機能の低下、身体活動量の低下等の影響が見られたと回答しました。この調査結果に基づき、この度、下記パンフレットを作成しました。

本成果 -認知症ご本人とご家族を対象にしたパンフレットの作成
今回、広島大学大学院医系科学研究科共生社会医学講座では、一般社団法人日本老年医学会、公益社団法人認知症の人と家族の会広島支部、広島大学病院感染症科、広島大学公衆衛生学講座とともに、認知症ご本人とそのご家族を対象とし、認知症症状を踏まえた感染予防や認知・身体機能悪化予防の取り組み、感染拡大時の備えを実践するための基本的な情報を提供し、かつ認知症の人の状態や生活などに沿った実際の行動プランを紹介するパンフレットを作成しました。このパンフレットでは、おおきく次の3つに関する情報を掲載しています。

パンフレットに掲載した3つの情報

  • 心構えとして知っておいていただきたいこと
  • (新型コロナウィルス、特に認知症の症状を踏まえた感染予防などに関し必要な知識)
  • 感染拡大の前に心がけていただきたいこと
    (介護保険サービスが縮小された場合や認知症ご本人・ご家族が感染した場合への備え)
  • 新型コロナウィルス感染拡大時において認知・身体機能をできるだけ悪化させないために、毎日続けていただきたいこと
    (社会とのつながりを保つ、運動など)

本パンフレットは、認知症ご本人とご家族が日々の生活で心がけて頂きたいこと以外にも、感染拡大に備えてかかりつけ医や介護支援専門員などに相談する時に気をつけていただきたいポイントもまとめています。例えば、次のような内容を記載しています。

  • 感染拡大時、介護保険サービスが縮小した場合に備え、他のご家族と必要な介護を見える化したり、介護の役割分担や協力体制形成を検討するポイント
  • 介護保険サービス縮小時、あるいは認知症ご本人またはご家族が感染した時をあらかじめ想定し、携わる医療・介護専門職と話し合っていただきたいポイント

今後、本成果(パンフレット)は、認知症ご本人とそのご家族が感染予防を実践しつつ、感染拡大への備えを行っていくための情報、検討材料として活用されることが期待されます。

参考資料

医療・介護施設の38.5%、介護支援専門員の38.1%が認知症者に影響が生じたとしており、特に行動・心理症状の出現・悪化、認知機能の低下、身体活動量の低下等の影響が見られたと回答しました。

図1.感染拡大下において認知症者にみられた影響

パンフレットは、新型コロナウィルス感染症を正しく恐れながら、日常生活を続けるために、“日々の生活で心がけていただきたい3つのこと”ついてまとめました。
具体的には、認知症ご本人がマスク着用・手洗いが難しい場合にその方に応じた感染予防の工夫、介護保険サービスが縮小した場合に備えた必要な介護の見える化、だれがその介護を担うか・協力するか検討するためのポイントなどを紹介しています。

図2.今回作成したパンフレット
※ 現時点のものであり、微修正が入る可能性がございます。

【お問い合わせ先】

<研究に関すること>
広島大学大学院 医系科学研究科 共生社会医学講座寄附講座
教授 石井 伸弥
TEL: 082-257-2018 
E-mail: sishii76*hiroshima-u.ac.jp (注: *は半角@に置き換えてください)


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