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【研究成果】サリン被害者の2/3に身体的症状、1/3に精神的症状が残る~東京地下鉄サリン事件被害者へのアンケート結果~

本研究成果のポイント

  • 本研究は、広島大学大学院医系科学研究科 長尾 正崇 教授、杉山 文 助教、田中 純子 教授らの研究グループが、オウム真理教によるサリン事件被害者への継続的な支援を行っているNPO法人リカバリー・サポート・センター(R・S・C)の協力のもと、東京地下鉄サリン事件から5年後の2000年から2009年までの10年分の検診時アンケートの結果をもとに、事件被害者全体の約12%に相当する747人の身体および精神症状の有訴者割合について解析を行った。
  • その結果、東京地下鉄サリン事件では事件後長期経過後も6-7割の被害者が倦怠感や目の症状(かすみ、見えにくさ)を自覚しており、PTSDに関連した症状(PTSR)は35.1%に認められた。
  • いずれの症状も経年的な改善傾向が認められなかったことから、被害者に対しては長期的、定期的なケアが必要であることが示唆された。

概要

東京地下鉄サリン事件被害者の身体的および精神的症状については、急性期に関する報告が多く、事件後5年を超える長期および慢性期の健康障害については、ほとんど報告はありません。
本研究は、犯罪や事故、災害などで被害を受けた方たちへのケアを行っているNPO法人リカバリー・サポート・センター (R・S・C)との共同研究として、広島大学大学院 医系科学研究科 長尾 正崇教授(法医学)、杉山 文助教(疫学・疾病制御学)、田中 純子教授(疫学・疾病制御学)らの研究グループが実施しました。

R・S・Cでは、サリン事件の被害に遭われた方々に対する支援事業の一環として、毎年1回検診を行っています。本研究では、東京地下鉄サリン事件から5年後の2000年から2009年までの10年分の検診時アンケートの結果をもとに、事件被害者全体の約12%に相当する747人の身体症状および精神症状の有訴者割合について解析を行いました。

サリン中毒の症状については、縮瞳、胸部圧迫感、鼻漏、あるいは呼吸困難など急性期の症状が知られている一方で、サリン曝露による長期的な健康影響についてはこれまで十分明らかになっていませんでした。

本研究では、東京地下鉄サリン事件被害者の大規模長期データを解析することによって、事件後長期経過後も被害者の方々にはさまざまな身体症状・精神症状が高率に認められていること、またいずれの自覚症状についても経年的な改善傾向が認められないことを初めて明らかにしました。本研究成果は、被害者の長期及び慢性期の健康障害についての解明の基盤となることが期待されます。

この研究成果は国際誌「PLOS ONE」で公開されました。

論文情報

  • 掲載誌: PLOS ONE
  • 論文タイトル: The Tokyo subway sarin attack has long-term effects on survivors: A 10-year study started 5 years after the terrorist incident
  • 著者名: 杉山文1 松岡俊彦1 坂宗和明1 秋田智之1 牧田亨介2 木村晋介3 黒岩幸雄3 長尾正崇2 田中純子1
    1 広島大学大学院医系科学研究科 疫学・疾病制御学
    2 広島大学大学院医系科学研究科 法医学
    3 NPO法人リカバリー・サポート・センター (R・S・C)
  • DOI: 10.1371/journal.pone.0234967.
【お問い合わせ先】

<研究内容について>
広島大学 大学院医系科学研究科(法医学)
教授 長尾 正崇
TEL: 082-257-5171
E-mail: nagao*hiroshima-u.ac.jp (注: *は半角@に置き換えてください)

広島大学 大学院医系科学研究科(疫学・疾病制御学)
教授 田中 純子
TEL: 082-257-5160
E-mail: jun-tanaka*hiroshima-u.ac.jp (注: *は半角@に置き換えてください)

<報道に関すること>
広島大学 財務・総務室広報部 広報グループ
TEL: 082-424-3701
E-mail: koho*office.hiroshima-u.ac.jp (注: *は半角@に置き換えてください)


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