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【研究成果】パラインフルエンザウイルスが感染細胞から出芽するメカニズムを解明~新規抗ウイルス薬開発への応用展開~

本研究成果のポイント

  • ウイルスのC蛋白質(※1)が宿主因子Alix(※2)と結合してできる複合体の三次元構造を明らかにしました。
  • この三次元構造を基にして、感染させた動物細胞からウイルスが出芽する仕組みを解明しました。
  • 今回の研究成果により、C蛋白質を標的とした抗ウイルス薬の開発が現実的になりました

概要

広島大学大学院医系科学研究科の小田康祐助教と坂口剛正教授は、小児や高齢者に重篤な呼吸器疾患を引き起こすヒトパラインフルエンザウイルス(※3)が感染細胞から出芽する仕組みを、近縁なセンダイウイルス(※4)を用いて明らかにしました。
ウイルスのC蛋白質は宿主因子のAlixと直接結合しますが、様々な制約のためC蛋白質に変異を入れたウイルスを作出することは難しく、なぜ結合するのかは長い間不明のままでした。
本研究では、C蛋白質とAlixの複合体構造を原子レベルで明らかにし、その成果としてAlixと結合しないC蛋白質をもつウイルスを作出することが可能になりました。
作出した変異ウイルスを用いて解析し、C蛋白質がAlixを細胞質膜上のウイルス出芽部位にリクルートすることで、ウイルスが感染細胞から出芽することを突き止めました。また今回C蛋白質とAlixの複合体構造を明らかにしたことで、C蛋白質を標的とした抗ウイルス薬の開発が現実的になりました。
 

図1:(A) C蛋白質のC末領域とAlixのN末端ドメインの複合体構造。(B) C蛋白質とAlix間の結合様式。

用語解説

(※1)C蛋白質
ヒトパラインフルエンザウイルスおよびセンダイウイルスといった、パラミクソウイルス科レスピロウイルス属がもつ蛋白質であり、インターフェロンに対抗するなどしてウイルスの増殖を増強するアクセサリー蛋白質。

(※2)Alix
宿主の多小胞体形成や、細胞基質分裂など膜リモデリングに関わるESCRT (Endosomal Sorting Complex Required for Transport) 関連因子のひとつ。一部のエンベロールウイルスは感染細胞からの出芽にESCRT機構を利用する。

(※3)ヒトパラインフルエンザウイルス
ヒトに感染するパラインフルエンザウイルス。1~4型があり、このうち1型と3型がパラミクソウイルス科レスピロウイルス属に分類される。小児気管支炎、肺炎、クループ症候群を起こす。

(※4)センダイウイルス
マウスに感染するパラインフルエンザウイルス。ヒトパラインフルエンザウイルス1型と抗原が交差するほど近縁である。

論文情報

  • 掲載誌: Journal of Virology, 2021,
  • 論文タイトル: 「Structural Insight into the Interaction of Sendai Virus C protein with Alix To Stimulate Viral Budding.」
  • 著者名: 小田康祐1*、的場康幸2、杉山政則3、坂口剛正1
    1: 広島大学大学院医系科学研究科 (ウイルス学)
    2: 安田女子大学薬学部
    3: 広島大学大学院医系科学研究科 (未病・予防医科学共創研究所)
    *Corresponding Author (責任著者)
  • DOI: https://doi.org/10.1128/JVI.00815-21
【お問い合わせ先】

大学院医系科学研究科
助教 小田 康祐
TEL:082-257-5157
FAX:082-257-5159
E-mail:kosuke-81*hiroshima-u.ac.jp
(注: *は半角@に置き換えてください)


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