【研究成果】赤ちゃんの行動を知ることが、産後うつ予防の鍵に

研究成果のポイント

  • 米国で開発されたHUG Your Babyという育児支援プログラムを日本語に翻訳し、都内の二施設の妊娠30週以降の妊婦さんを対象に導入しました。
  • プログラムでは、赤ちゃんの発達行動学に基づき、簡単に赤ちゃんの状態を判断する方法、刺激過多を示す身体と行動の特徴、赤ちゃんを寝かせる・飲ませる・遊ぶコツなどの内容が含まれています。
  • 221人(受講者121人、非受講者100人)の産後の女性のデータから、プログラムを受講した人は、産後1ヶ月と3ヶ月の産後うつのスコアが低く(受講者1ヶ月平均5.66点、3ヶ月平均4.00点、非受講者1ヶ月平均6.93点、3ヶ月6.10点)、産後1ヶ月の育児の自信のスコア(受講者平均34.42点、非受講者平均28.11点)が高いことがわかりました。

概要

 広島大学大学院医系科学研究科の新福洋子教授および共同研究者のチームが、米国で開発されたHUG Your Babyという育児支援プログラムを日本語に翻訳し、日本で妊婦さんを対象に導入しました。
 本プログラムは2時間の妊娠期クラスの形式で、前半は赤ちゃんの発達行動学に基づき、簡単に赤ちゃんの状態を判断する方法、刺激過多を示す身体と行動の特徴、赤ちゃんを寝かせる・飲ませる・遊ぶコツなどの講義を行い、後半は赤ちゃんの人形でおくるみの巻き方を練習する体験型の演習を行いました。プログラム後に母乳育児に関する資料、HUG Your Babyの概要をまとめた資料、動画のDVDを渡し、家で復習できるようにしました。
 プログラムを受けた群、受けていない群の2群を比較する形で、産後1ヶ月、3ヶ月にフォローし、産後うつ、育児の自信などの尺度を用いて評価しました。その結果、プログラムを受けた方が、産後1ヶ月と3ヶ月のエジンバラ産後うつ病自己評価表の得点が低く、産後1ヶ月の育児自己効力感尺度(Karitane Parenting Confidence Scale: KPCS)のスコアが高いという結果が出ました。
 本研究結果は、オーストラリア助産協会のWomen and Birth誌に2022年9月1日に掲載されました。

論文情報

  • 論文題目:Prenatal education program decreases postpartum depression and increases maternal confidence: A longitudinal quasi-experimental study in urban Japan
  • 著者名:Yoko Shimpuku*1), Mariko Iida2), Naoki Hirose1), Kyoko Tada3), Taishi Tsuji4), Anna Kubota5), Yurika Senba6), Kumiko Nagamori7), Shigeko Horiuchi8)

     *)Corresponding author
    1) 大学院医系科学研究科
    2) 横浜市立大学
    3) 聖路加国際病院
    4) 筑波大学
    5) 慶應大学
    6) 聖路加マタニティケアホーム
    7) 世田谷産後ケアセンター
    8) 聖路加国際大学

  • 掲載誌:Women and Birth
  • DOI:  https://doi.org/10.1016/j.wombi.2021.11.004

発表内容

【研究の背景】
 日本の、特に都市部に在住する産後の女性は、産後うつ病のリスクが高いと言われています。これまでの研究で、赤ちゃんの行動を理解していることで、産後うつのリスクが低くなる可能性があることが示されています。HUG Your Babyは、赤ちゃんの行動を理解することを支援する育児支援プログラムで、米国で開発されました。

【研究成果の内容】
 プログラムを妊娠期クラスとして提供し、HUG Your Babyを受講した母親が、産後うつ病や育児の自身に関して、受講していない群よりも良い結果を示すか、評価を行いました。プログラムを受けた方が、産後1ヶ月と3ヶ月のエジンバラ産後うつ病自己評価表の得点が低く、産後1ヶ月の育児自己効力感尺度(Karitane Parenting Confidence Scale: KPCS)のスコアが高いという結果が出ました。HUG Your Babyのプログラムを受講することで、産後うつを予防し、育児への自信を高める効果が期待できます。

【今後の展開】
 今回の結果は一都市で実施した結果であるため、より広い範囲で提供し、その効果を検証する必要があります。現在は広島大学医学部保健学科の発達に関する授業の中でその内容を取り入れています。今後は、産後うつ予防を推進する自治体や病院と連携し、プログラムを実施していきたいと考えています。

プログラムで使用された母乳育児に関する資料

【お問い合わせ先】

<研究に関すること>
大学院医系科学研究科 教授 新福洋子
Tel:082-257-5555 FAX:082-257-5555
E-mail:yokoshim*hiroshima-u.ac.jp

<報道に関すること>
広島大学広報室
Tel:082-424-4383  FAX:082-424-6040
Email:koho*office.hiroshima-u.ac.jp

(注: *は半角@に置き換えてください)


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