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【研究成果】タンザニアの助産師向けスマートフォンアプリで母親の健康に貢献へ パイロット研究の結果

本研究成果のポイント

  • タンザニアで高い母子死亡率を抑えるために、女性の医療アクセスの向上が求められる。
  • 助産師向けスマートフォンアプリのパイロット研究を実施し、その効果を調査した。
  • 助産師の学習成果において、有意な改善が確認された。
  • 妊婦の出産準備に関する知識スコアが、アプリを使用した施設で有意に向上した。
  • 助産師がアプリの使いやすさや満足度について、高い評価を示した。
  • 助産師の学習効果が向上し、それが母親の健康促進に間接的につながる可能性がある。

概要

タンザニアの高い妊産婦死亡率を解決するために、女性の医療へのアクセスを向上させることが重要です。そのため、助産師向けのスマートフォンアプリを用いたパイロット研究が行われ、アプリによる助産師教育が母親の健康に貢献する可能性が示唆されました。
なお、本研究成果は2023年3月31日に「PLos One」に掲載されました。

論文情報

・著者:Shimpuku Y1,*, Mwilike B2, Mwakawanga D2, Ito K, Hirose N1, Kubota K3
 1:広島大学 大学院医系科学研究科
 2:ムヒンビリ医科学大学
 3:東京大学 医学部附属病院
 *:責任著者

・タイトル:Development and pilot test of a smartphone app for midwifery care in Tanzania: A
 comparative cross-sectional study. 
・掲載誌:PLoS One
・ doi: 10.1371/journal.pone.0283808. 

背景

タンザニアは、母子の健康状況の改善が遅れている国のひとつであり、特に妊産婦死亡率が高いことが課題となっています。このような状況の背後には、医療アクセスの制約や質の低さ、助産師のスキル不足が挙げられます。これらの問題に取り組むため、様々な開発支援が行われてきましたが、依然として十分な改善が見られていません。その一方で、近年の情報コミュニケーション技術(ICT)の発展により、タンザニアもスマートフォンの普及が急速に進んでいます。スマートフォンを活用した教育や情報提供が、医療分野での新たな取り組みとして注目されています。このような背景から、助産師を対象としたスマートフォンアプリの開発と評価が求められており、本研究では、タンザニアの助産師向けに開発されたアプリのパイロット研究を行いました。このアプリは、助産師の知識やスキルの向上を支援することを目的としており、その効果を助産師と妊婦の両方から現地で評価しました。本研究を通じて得られた知見は、今後の開発支援や医療分野でのICT活用の方向性を示すものとなることが期待されます。

研究成果の内容

このパイロット研究では、助産師に教育アプリが提供され、その使用状況や助産師の学習成果、アプリの使いやすさに関するフォーカスグループディスカッションを行いました。また、アプリを使った助産師から妊婦への適切な情報提供がなされたかを、妊婦に対する質問紙で評価しました。結果として、87.5%の助産師が2ヶ月後もアプリを利用し続けました。アプリ利用後のミニクイズで、平均スコアが有意に向上しました。フォーカスグループディスカッションでは、全ての助産師がアプリに満足していることが明らかになりました。その理由として、包括的な内容、自信の向上、相互コミュニケーションが挙げられました。また、妊婦に対する質問紙の分析には207人の回答が含まれ、女性を中心としたケアの尺度では、非有意ながらアプリを使用した施設において向上が見られました。出産準備度の尺度では、介入群では知識スコアと自宅出産の価値スコア(高い方が病院で産む意向が高い)が有意に向上しました。

今後の展望

本研究の結果は、助産師向け教育アプリが大規模に実施される際の潜在的なインパクトを示しています。特に、助産師の学習成果に対する効果が示されたことから、以下のような展開が期待されます。
•    本アプリのさらなる改良・発展により、より効果的な教育プログラムを提供する。
•    タンザニアをはじめとする開発途上国での母子の死亡率低下に向けた取り組みの一環として、アプリの普及を図る。
•    助産師だけでなく、妊婦やその家族も対象としたアプリを開発し、妊娠期から出産後までのケアについての理解と意識向上を図る。
•    今後の研究で、アプリ導入の長期的な影響や他の指標による効果検証を行い、より確かなエビデンスを蓄積していく。
 

図. スマートフォンアプリ開発の内容

【お問い合わせ先】

大学院医系科学研究科 国際保健看護学教室
Tel:082-257-5555
E-mail:yokoshim*hiroshima-u.ac.jp

 (*は半角@に置き換えてください)

 


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