日時：平成30年12月19日（水）16:20～17:50
場所：理学部 B301
演題：「酢酸を中心とした植物の乾燥耐性機構の発見とその応用」
演者：金 鐘明 先生（東京大学大学院 農学生命科学研究科＆アクプランタ株式会社 CEO）

要旨：複雑に絡み合ったメカニズムを利用して、植物は乾燥から身を守る。我々は、これまでに知られている乾燥応答性の植物ホルモンアブシジン酸や適合溶質であるプロリンなどの作用機序とは全く独立した、植物の新規乾燥耐性メカニズムを発見した。このメカニズムは、比較的早い段階の乾燥に応答して生合成した酢酸を出発点として、傷害応答ホルモンであるジャスモン酸の一過的合成とシグナル伝達経路を活性化するとともに、酢酸自体が基質としてクロマチンレベルでのゲノム活性化に機能するものである。また、この機構を利用して、酢酸を外部から与えるだけで単子葉、双子葉を問わず多くの植物に乾燥耐性を付与することができる。本セミナーでは、この新規乾燥耐性メカニズムの詳細と、現在この発見をもとに進めている社会実装時に向けた研究開発と利用拡大の取り組みについて紹介したい。