(廃止)環境シミュレータープロジェクト研究センター

センター基本データ

本センターは代表者退職のため廃止されました。

  • 整理番号:19-02
  • 設置期間:2007年07月10日~2016年03月31日
  • センター長(所属/職名/氏名):広島大学大学院国際協力研究科 / 教 授 / 山下 隆男

プロジェクト概要

目的

広島大学国際協力研究科では、メソスケール環境シミュレーションを目的として、大気・陸面(植生)・海洋および河口・海岸の結合数値解析システムである地 域環境シミュレーターを構築してきた。「環境シミュレータープロジェクト研究センター」は、この環境シミュレーターを学内の国際協力学に関する教育・研究 に活用するだけでなく、株式会社碧浪技術研究所との産学連携研究を行い、これを実務レベルでの環境アセスメントに適用する事を目的としている。

背景

1990年初めに海洋モデルが気象モデルに導入され全球規模の気候変動予測が可能になって以来,これに関連す る科学技術は急速な進歩を遂げ,今ではエアロゾル,動的植生モデルを融合した地球環境予測モデルへと進化してきた.この進歩に伴い,地球科学の分野では各 種数値モデルが多くの組織により作られ,公開されておりこれらのモデルを連携融合させることで高度な環境シミュレーションが可能となっている.国際協力研 究科では,大気,陸面,海洋の相互作用を導入した数値モデルシステムを構築し,「アジア環境シミュレーター」と命名し,環境教育および環境アセスメントに 活用している.

研究計画

平成22年度:インドネシア、バンドン工科大学への環境シミュレーターの移転(JICA調査プロジェクトによる。確定。)産学連携による海岸環境、防災研究を継続する。

平成23年度:インドネシア、ハサヌディン大学への環境シミュレーターの移転(インドネシア円借款プロジェクトによる工学部強化支援。確定。)産学連携による海岸環境、防災研究を継続する。

平成24年度:環境シミュレーター国際ネットワーク形成に関するJICA案件を検討する。産学連携による海岸環境、防災研究を継続する。

主な事業活動

アジア環境シミュレーター(Asian Environmental Simulator: AES)

「アジア環境シミュレーター(AES)」は,図に構成を示すように,大気・海洋,大気・陸面および河口・海岸の3パートを結合した数値モデルシステムであ る.基本となるモデル要素は,現在既に多くの研究者によって使われてきた数値モデルである.気象モデルはMM5,海洋モデルはMITgcmまたはPOM, 波浪モデルはWW3またはSWAN,陸面モデルはSOLVEG2,水文流出モデルはHSPF,河口モデルはECOMSED+COSINUS,海岸モデルは 広域海浜流・海浜変形モデル,以上のモジュールが解析対象に応じて結合を変えて使用できる.

Based on the global meteorological forecasting system starting in 1990’s, earth system simulation models, such as earth simulator, have been developed and applied to many kind of environmental assessment. This paper introduces the frame work and applications of the Asian Environment Simulator (AES) which consists of main models for atmosphere, land surface, ocean, hydrology, dynamic vegetation, and coastal, river, estuary models and urban air-water environment model. AES has been developed in IDEC, Hiroshima University for international sustainable development and cooperation.

主な研究成果

● MITgcm・MM5による台風・海洋の相互作用に関する数値実験
気象モデルMM5と海洋モデルMITgcmの非静力学モードにより,台風と海洋との相互作用を検討する.対象とした台風は黒潮海域を通過した台風0310 号で,台風と海洋との相互作用により発生する海水の湧昇流が下層の冷水を海面に持ち上げ,海面水温が下がることで台風の構造がどのように変化し,降水量が どの程度減少するのかを定量的に検討した.

● 大気・海洋・陸面結合モデルによる2006年梅雨期の南九州の豪雨解析
本研究は大気・海洋・陸面結合モデルを作成し,これにより2006年梅雨期の南九州の豪雨,河川流出の再現解析を行ったもので,この結果は河川から海岸への淡水や土砂流出,栄養塩供給量の予測と,これらの河口,海岸での挙動の解析に必須な情報である.

● MITgcmによるダム湖流の3次元シミュレーション
夏季(2006年7月)の温度成層の形成過程を再現することを目的とし,メソ気象モデルで再現された気象場の変化(流域からの降水の流入,雲による日射の 変化,風の影響を考慮する)により,湖水の加熱・冷却の日変化と風による吹送流の影響を与えながら,ダム湖内で温度成層が形成される過程を再現する.

● 干潟投入土砂の移動,地形変形シミュレーション
ECOMSED-COSINUSモデルを百貫港の干潟投入土砂の移動,地形変形シミュレーションに適用し,干潟の地形変化過程のシミュレーション,砂止め潜堤の効果のの評価を行った.

● 大気・海洋結合モデルによる山陰地方の高潮・高波の再解析
山陰地方の海岸を対象として,大気・海洋結合モデルによる低気圧,台風で発生する高潮・高波の再解析を実施し,冬季の低気圧と台風とで高潮・高波にどの程 度の差異があるのかを明確にする.また,この海域に対する高潮・高波の発生に関して危険な台風経路などのような経路で,どの程度の波浪と高潮が発生してい たのかを再解析した.

2006年7月20日~26日の間の総雨量(シミュレーション結果)
山口県北部海岸での最大潮位(シミュレーション結果)


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