(廃止)肝臓プロジェクト研究センター

センター基本データ

本プロジェクト研究センターは、平成26年度自立した研究拠点(Centers of Excellence)として選定されたため、プロジェクト研究センターを廃止しました。詳しくは研究拠点のウェブページをご覧ください。

  • 整理番号:15-05
  • 設置期間:2004年04月01日~2015年03月31日
  • センター長(所属/職名/氏名):大学院医歯薬学総合研究科 / 教授 / 茶山 一彰

プロジェクト概要

目的

劇症肝不全は内科的治療や肝移植を利用しても治癒できる症例は限られている.また肝硬変や代謝性肝疾患では病 態の進行につれてQOLの低下をきたし,肝移植以外の有効な治療方法はない.そのため提供者不足から肝移植の適応にならない急性および慢性肝疾患の新しい 治療法の開発が必要である.さらに,急性・慢性肝障害の原因である肝炎ウイルスについても小動物モデルが無く,研究や治療開発の障害となっており,これを 解決する手段が必要である.本肝臓プロジェクト研究センターは,本学における肝臓研究を集約し,一体として新しい組織にしたものであり,このような組織 は,国内には存在しない独創的なものである.本センターにおける研究は再生医学の臨床応用が可能で,急性・慢性肝疾患に対する新しい治療法の開発に繋がる ものと思われる.

背景

肝臓に関する生命科学の以下の点について研究を行う。
肝細胞の分離培養とその臨床応用
ヒト肝組織バンクの設立と広島組織バンクの設立
ヒト肝細胞キメラマウスを応用した肝炎ウイルスの研究と臨床応用
培養肝細胞を使用した肝炎ウイルスの研究
ヒトゲノム解析による肝疾患の研究
肝臓の生理、薬物動態に関する研究
肝細胞癌に対する分子生物学的研究

研究計画

■肝細胞の分離培養とその臨床応用
急性肝不全,慢性肝疾患に対する凍結肝細胞ならびに培養肝細胞を用いた細胞治療法の研究
平成21年度
ラット急性肝不全モデルにおいて凍結肝細胞ならびに培養増殖肝細胞移植を行い,救命効果について検討する.Viabilityの良い凍結法や肝細胞を長期機能維持させる培養方法についても検討する.
平成22年度
上記の検討を踏まえ,劇症肝炎症例に対して凍結保存した,あるいは培養肝細胞を用いた肝細胞移植を倫理申請の後,臨床応用する.
平成23年度
肝硬変や代謝性肝疾患に対して増殖培養した自己肝細胞あるいは同種肝細胞を用いてQOLの改善,根治的治療を目指した肝細胞移植の臨床応用を検討する.

■ヒト肝組織バンクの設立と広島組織バンクの設立
平成21年度
・これまでと同様にヒト肝細胞の採取・保存を継続し,ヒト組織バンク(ヒューマンサイエンス研究資源バンク)に送付する.
平成22-23年度
・ヒト肝組織バンクと同様に,皮膚,骨,軟骨などの組織バンクを設立する.

■ヒト肝細胞キメラマウスを応用した肝炎ウイルス研究と臨床応用
平成21年度
・ これまでに確立したHBVおよびHCV感染患者血清を用いたHBV,HCV感染マウスあるいはリバースジェネティクスの手法による感染マウスを用いて,製薬会社との共同研究により,基礎化合物のscreeningを行い,新規抗ウイルス性肝炎治療薬の創生を行う.
・ 各種抗ウイルス薬に耐性のクローンを作成し,リバースジェネティクスの手法により作成した感染マウスを用いて,抗ウイルス薬耐性のメカニズムを解明し,さらにこれら耐性クローンに対する有効な抗ウイルス両方を探索する.
・ HBVおよびHCV感染マウスにインターフェロンを投与し,肝臓内に発現する遺伝子あるいはmiRNAをアレイ解析し,インターフェロン抵抗性に関与している遺伝子あるいはmiRNAを探索する.
平成22年度
・ 同定した遺伝子を発現するplasmid,あるいはmiRNAを肝癌細胞株に導入し,その機能解析を行う.
平成22年度
・機能解析により得られた結果をもとに,これらの遺伝子をターゲットにした新規薬剤,あるいはインターフェロンの作用を増強する薬剤を開発し,臨床応用する.

■培養肝細胞を使用した肝炎ウイルスの研究
平成21年度
・ ラミブジン,アデフォビル,エンテカビル,テノフォビルなどの種々の核酸アナログ耐性ウイルスを産生する細胞を樹立し,これらの対する新規抗ウイルス薬の 効果判定が解析できる系を確立する.これらの細胞のウイルス産生能を向上させ,高度のウイルス産制が可能な細胞株を樹立する.
・ Genotype 1b型のC型急性肝炎患者よりHCV全長をクロニングし,HepG2,Huh7などの肝癌細胞株あるいは不死化肝細胞に遺伝子導入し,細胞内で感染・複製するHCVクローンを同定する.
平成22-23年度
・ 作成した薬剤耐性HBV複製細胞に種々の核酸アナログを組み合わせて添加することにより,耐性株に対する抗ウイルス効果,およびさらなる耐性株出現の有無の検討を行う.
・ 作成したgenotype 1b型HCV感染細胞を用いて,製薬会社との共同研究により,基礎化合物のscreeningを行い,新規抗C型肝炎治療薬の探索を行う.
・ siRNAやmiRNAを細胞内に導入することにより,インターフェロン抵抗性発現の要因となっている蛋白を同定し,新規治療薬開発に応用する.

■ヒトゲノム解析による肝疾患の研究
平成21年度
・ これまでの研究と同様に,C型慢性肝炎に対するインターフェロン治療の効果と関連する遺伝子の探索を行い、その機能解析を行う.
・ 東京大学医科学研究所、理化学研究所との共同研究を継続し,ヒトゲノムに存在する約10万のSNPを網羅的に解析し,インターフェロンの治療効果,副作用と関連するSNPを同定する.
平成22-23年度
・ 同定されたSNPが含まれる連鎖不均衡ブロックの探索を行い,このブロック内に存在する遺伝子の多型をさらに詳細に検討し,インターフェロンの治療効果,副作用と関連のある遺伝子を同定し,機能解析を行う.
・ 同定された遺伝子について,HBV産生細胞やヒト肝細胞キメラマウスを利用したウイルス感染,ウイルス肝炎のモデルシステムを利用して機能解析を行う.またtransgenic mouse,knockout mouseも作成し,機能解析を進める.

主な研究成果

我々は、チンパンジーに変わる小動物実験モデルとしてヒト肝細胞キメラマウスを使用したC型肝炎ウイルス、B型肝炎ウイルスの感染実験を行い、長期間に及びウイルス血症を持続するマウスを作製し得た。
さらに、難治例に対する対策を確立するために、増殖力が高いと考えられるB型肝炎ウイルスキャリア、C型急性肝炎の症例から得られたウイルスゲノムを使用してinfectious cloneを作製、リバースジェネティックスの系を確立した。
さらに、ウイルス増殖、耐性獲得に関しては宿主要因の関与が必須であり、トランスクリプトーム、プロテオーム解析によりゲノムワイドに探索し、新規治療薬の開発のシーズとなる宿主因子の同定を行った。

肝炎ウイルス感染モデルマウスを用いたB型肝炎,C型肝炎の研究


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