アジア熱帯生態系プロジェクト研究センター

センター基本データ

  • 整理番号:19-06
  • 設置期間:2007年10月01日~2024年03月31日
  • センター長(所属/職名/氏名):大学院総合科学研究科 / 教授  / 奥田 敏統
  • 連絡先(TEL/FAX/E-mail):082-424-6513  / 082-424-0758 / okudato[AT]hiroshima-u.ac.jp
       (※[AT]は半角@に置き換えてください)

プロジェクト概要

目的

東南アジアの熱帯地域に分布する生物多様性の維持機構や森林保全に資する調査研究をおこなう。また研究者間のネットワーク構築,地元学生・研究者との交流,アジア熱帯における生態系管理(エコシステムマネージメント)のモデル化を行う。
 

背景

日本の食や資源の安全は熱帯アジア地域と密接に連動しおり,それだけに当該地域で発生する様々な“環境問題”は我が国と切っても切り離せない状況にある。 自然資源の持続的利用や環境問題については,アジア地域全域を対象とした包括的な対応がのぞまれるところであるが,時間やコストを考える場合,東南アジア圏でモデルサイトを設定しそこから周辺国・地域への“開発したモデル手法”の波及を進めるほうが効果的である。こうした観点から,これまで熱帯林に関する 多くの研究蓄積があるマレーシアパソ保護林及び周辺域に研究サイトを定め,本学内に研究プロジェクトセンターを設置したうえで,地元の研究機関との人的交流を行うための基盤づくりを進めることを提案したい。
 

研究計画

22年度~24年度
・環境総合推進費による[生態系サービスからみた森林劣化抑止プログラム(REDD)の改良提案とその実証研究]を実施する。
・総合地球環境研究所FS課題による[ソフトランディングのための生態系サービスの最適化と持続的利用に関する予備的研究]を実施する。
・研究概要に掲げた項目について調査・研究を実施する。また地元研究者とのネットワークを強化するための人的交流(研究者・留学生受入など)を積極的におこなう。共同研究発表・ワークショップなどを定期的に開催する。
 

主な事業活動

現在以下の研究を行っています。
1.森林伐採や土地利用転換が熱帯生態系のエコシステムサービス及ぼす影響森林が本来持ち得ているサービス機能の評価を整理し,森林を保全することによって得られるサービス機能と土地利用変換による代替サービス機能との関係の解析や,森林の管理状態の評価軸を抽出する上で必要なサービス機能の定量化が行えるようなデータベースを整備しています。さらに,森林のもつサービス機能のうち物質循環機能,土壌保全機能,多様性保全機能に着目し,これらが伐採や森林管理形態の違いによりどのような影響を受けるかまた,それぞれのサービス機能間でどのような関係があるかを明らかにしながらエコシステムサービスの定量化を試みています。
2.熱帯生態系における共生系に関する研究熱帯には地球上の約半分の生物種が棲息しているといわれています。特定の生き物によって寡占化が起こらず多様な生物が共存できるしくみは何なのかを動物と植物との相互作用や,それぞれの生き物間での時空間的な棲み分けなどに焦点をあてて研究しています。

熱帯域におけるエコシステムマネージメントに関する研究(環境省地球環境研究総合推進費)エコシステムマネージメントでは,特定の森林群落の保全だけを対象とするのではなく,例えば“集水域“全体を対象とする場合のように様々な植生や土地利用形態を含むエリアから得られる多様な生態系サービスを最適化し, 健全かつ自立型地域社会の形成を促すことを究極的な目標としています。
本研究ではこのアプローチを熱帯地域の森林をはじめとする生態系の持続的管理・利用に応用することを目標とし,以下の内容について研究を行いました。
1.生態系が提供する様々な公益機能(エコシステムサービス)の総合評価とそれらをより広域的エリアに適用するための技術開発並びにそのための基準・指標 (Criteria & Indicator)抽出
2.土地改変に伴う環境リスクの時空間的に広域エリアに広げるためのスケールアップ技術の開発やゾーニングプランのためのアセスメントツールの開発
3.資源管理の合意形成推進を目的とした自然資源と地域社会の関わり合いについての解析。これらの研究はマレーシア半島部(ネグリセンビラン州,パハン州を対 象にまたがる概ね100km四方の地域をパイロットエリアとして),マレーシア森林研究所,マレーシア工科大の協力のもとに行いました。

マレーシア半島部やボルネオ島に分布するフタバガキ科カプール(Dryobalanops aromatica)の種子。まるくみえるのが種子。羽子板のように5枚の羽が付き散布の際には回転しながら落ちてくる。

マレーシア森林研究所に植栽されているカプール。樹高50mの大木が互いの樹冠を重ねないように枝を広げ天空を覆う。その姿はまるで天然のドームのよう。フタバガキ科の多くは数年に一度他種と同調して開花,結実する。この一斉開花のしくみには訪花昆虫や種子を食する動物との関連から様々な仮説が立てられている。これらが一つ一つ解き明かされることで熱帯林の多様性の維持機構も少しずつみえてきた。
 

活動情報

2017年度「ジャパンSDGsアワード」に「緑の回廊プロジェクト」というタイトルで応募しました。
活動内容について、広く皆様に知っていただくため、応募書類を掲載しました。

活動の要旨
マレーシア半島では、近年パーム油を採るアブラヤシ農園開発により膨大な面積の熱帯雨林が伐採されています。その結果、残った熱帯雨林は分断され孤立化しているため野生動物の生息環境が悪化し、生物多様性が喪失しています。そこで、2002年から分断孤立化した熱帯雨林をつなぎ、野生生物の生息域を拡大するために「緑の回廊」を住民参加で推進するプロジェクトを展開しています。本プロジェクトは、地元住民の持続的な経済活動を維持しつつ、一方失われていく野生生物の生息環境の保全を図るために、地元住民、政府研究機関、日本の研究機関、一般企業のネットワークにより活動のモニタリングを実施し、PDCAサイクルを回しながら緑の回廊を進めることによりSDGs目標を達成する活動を行っています。


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