広島文化人類学プロジェクト研究センター

センター基本データ

  • 整理番号:04-02
  • 設置期間:2022年10月01日~2025年03月31日
  • センター長(所属/職名/氏名):人間社会科学研究科 / 教授 / 関 恒樹
  • 連絡先(TEL/E-mail):082-424-6948 / seki[AT]hiroshima-u.ac.jp ※[AT]は半角@に置き換えてください
  • 主たる研究分野:人類学・地理学・歴史学

プロジェクト概要

目的

 本センター「英名:The Anthropological Institute of Hiroshima (TAIHI)」は、「人間」に関する知としての人類学を更新する学問的かつ実践的なネットワークのハブとして構想された。人新世や資本新世と呼ばれるように歴史上全く未知の局面に入った現代世界は、同時にさまざまな分断と破壊が顕在化する世界でもある。相互につながりあった諸問題に向き合うためには、従来の学問的枠組みではあまりに不十分である。そこで、文化人類学における最先端の理論的・方法論的・実践的な課題として、他の学問領域での近年の展開をふまえつつ、重層的で多面的に横断的な関係性を感受したり新たに紡いでいくための知的土壌を醸成することが当面の目標となる。その上で、「人間」について、人間とその社会だけに限定せず、人間以外の生物、環境、テクノロジー、モノなどとの絡み合いのなかで捉え直すことを通して、「人間」に関する新たな知の枠組みを創出することを長期的な目的とする。
 すでに本センターの各メンバーは、a)マルチスピーシーズ民族誌の視点からの人、モノ、環境、b)人間同士の関係性だけではなく、その環境を含むかたちでのケア、c)人の移動と開発の現場における人間の活動と生を可能にするインフラストラクチャーと、そこから生成する関係性・社会性、d)人とモノの関係性から捉え直す平和など、相互に異なりながら重なり合うようなテーマに取り組んでいる。本センターのような具体的なかたちの拠点を設けることで、さらなるシナジー効果が期待できるだろう。

背景

 広島大学に属しつつも、部局やプログラムが異なるため、日ごろなかなか教育研究上の協働の場がなかった文化人類学研究者たちが集い、それぞれのフィールドの人々も含めて、対話し、協働し、発信するための、研究教育組織からは独立した開かれたサロン、あるいはプラットフォームの形成の必要性と意義を痛感したことが、本研究センターを着想するに至った初発の動機である。
 国内の主要大学と比しても、決して少なくない数の人類学スタッフを有し、かつマルチスピーシーズ民族誌、科学技術の人類学、ケアの人類学など、現代人類学の潮流の先端的研究を含めた多様な研究に取り組む研究者によって構成される本センターは、少なくとも国内では類例をみないセンターであり、人類学研究の実践と成果を複数の言語で国内外に発信する拠点として、国際的にもユニークなものになる。

研究計画

 本センターは、広島大学に所属するメンバーを中心にしつつも、学内外はもとより、国内外の文化人類学者、さらには隣接分野の人文地理学、政治生態学、歴史学、社会学さらには生態学や環境学などの自然科学分野の研究者ともネットワークを築き、研究交流を行う学際的な場の構築を目指す。また、広島の地の固有性に触発を受けつつも、国内外の複数のフィールドを足掛かりとして、日本語・英語をはじめとする多言語でシームレスな研究活動の展開を目指す。
 さらに、本センターでは、研究のアウトプットの方法についても、従来の論文、著作などに加えて、それ以外のより効果的な方法も模索する。具体的には、当初設置期間中(3年間)にセンター構成員それぞれが人類学と諸隣接分野のトップ国際学術雑誌に積極的に論文を投稿し、広島大学の文化人類学領域の研究活動の国際的プレゼンスを高める。加えて、学術的アウトプットの形式が多様化し、グローバルな問題へのタイムリーかつ対話・協働促進型の対応が求められている中で、学術論文以外のより実験的なアウトプットも提案し、国内、そしてアジア地域における最先端の文化人類学研究拠点となることを目指す。本センターは、下記のように、センター内でのワークショップや国内外のネットワークを通じてこうした個々の活動への必要な支援を行う。

2023年度:構成メンバー間の研究の共有。学外の研究者との連携、協働。研究会など年4回
2024年度:海外の研究者の招聘、研究の共有。研究会年4回開催。
2025年度:公開シンポジウムの開催

 メンバー各自の現在保持している科研費などに研究資金を持ち寄る他、国内外の各種研究助成へ、メンバー個人、あるいは共同での申請を行っていく。

主な研究活動

 本センターのユニークな点は、研究上のアウトプットそのものを至上の目的とするのではなく、その前提となるような土壌、知と生の源である関係性の培地を耕すことそのものを主眼としていることである。広島の地に触発されつつも、それぞれがフィールドとの間にこれまで培ってきた関係性をさらに深め、それを本センターに集う研究者との間で共有していく。こうした関係性の交差からこそ、豊かな知的土壌が生まれ、真にユニークで新しい研究が創発してくると信じるからである。学問的かつ実践的な交流によって耕される土壌の攪拌、分解、新結合を継続すること自体が、人類と地球の未来にとっての希望となるはずである。
 設置期間満了後は、本センターの土壌で培った関係性をさらに拡充しつつ、外部資金などを活用しつつ、国内外にさらにネットワークを広げていく。

メンバー

関 恒樹    人間社会科学研究科国際平和共生プログラム
中空 萌    人間社会科学研究科国際平和共生プログラム
長坂 格    人間社会科学研究科人間総合科学プログラム
西 真如    人間社会科学研究科人間総合科学プログラム
松嶋 健    人間社会科学研究科マネジメントプログラム
宮崎 広和    ノースウェスタン大学、人間社会科学研究科特任教授
吉田 真理子    人間社会科学研究科国際平和共生プログラム


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