中国古典文学プロジェクト研究センター

センター基本データ

  • 整理番号:14-07
  • 設置期間:2003年04月01日~2026年03月31日
  • センター長(所属/職名/氏名):大学院人間社会科学研究科 / 准教授 / 太田 亨
  • 連絡先(TEL/E-mail):082-424-6675 / tota[AT]hiroshima-u.ac.jp(※[AT]は半角@に置き換えてください)

 

プロジェクト概要

目的

本プロジェクトは中国古典文学研究の推進を目的とする。特に六朝文学に関する研究を基幹に据え、そこから先秦・漢魏、或いは唐宋以降の文学へと視野を広げ ていくことを企図している。また、本プロジェクトで重要視したいのは、漢字情報処理というコンピュータを駆使した新しい研究方法と、旧来の伝統的研究手法 との融合である。このような機関は我が国はもとより中国をはじめとする諸外国にも他に例を見ることができず、その点で独創的な研究成果が期待できるのでは ないかと考えている。

背景

広島大学中国文学研究室は、昭和の初期から六朝文学研究において輝かしい業績を挙げ、幾多の優秀なる研究者を輩出して今日に至っている。このようにして蓄 積されてきた研究方法と研究成果とを、グローバル化の進んだ新しい時代に対応しつつ、包括的かつ機能的に進展させると同時に、国内外に広く発信するための 機関として本研究センターの設立を考えた。

研究計画

中国古典文学、特に六朝文学について、その特徴を語彙・表現の面から考究し、併せて文献学的研究データを広く内外に提供する。

  1. 中国古典文学研究資料のデータベース化とその研究。国内外には既に多くの中国古典文献に関するデータベースが構築され、広島大学中国文学研究室でも いくつかのデータベースを公開している。電子情報上での漢字を取り巻く環境はなお流動的であり、字体やデータの取扱い方などの問題も残されたままである。 これらの問題を視野に入れつつ、新たなデータベースを作成し、既設データベースの有効な利用方法を構築する。
  2. 六朝詩の語彙および表現技巧の研究。六朝詩には、前代からの詩語を継承したものの他に、新たに詩人達が創り出したものが多く含まれております。そう した詩語を収集・整理してデータベース化し、有効に活用し、また、六朝詩に見られる表現技巧の特徴について、具体的な資料をもとに考察する。
  3. 『文選』の研究。広島大学中国文学研究室の伝統である「文選学」の実績を活用して、『文選音決』を活用した中古音資料及び義注としての研究と、『文 選』李善注を活用した文学言語の創作と継承の研究を行う。前者は、すでに統計的処理が完成している『文選音決』のデータをもとに、『経典釈文』などとの比 較検討を行い、音義としての『音決』の価値を研究する。後者はすでにデータベース化している李善注・五臣注と『文選』語彙を対照しながら文学言語の創作・ 継承過程を解明する。
  4. 日本の漢字文献資料のデータベース化
  5. 地域貢献の一環として、中国古典文学をテーマとする公開講座を開催する。

主な事業活動

平成15年度の事業の一環として、県立広島女子大学教授・西安交通大学教授、顧明耀先生による特別講演会を下記の要領で開催した。


日時:2003年11月25日(火)午後3時~4時
 場所:文学部B251講義室 講演内容:「辞書についての話」
 辞書の分類
 特徴
 辞書の編纂
 辞書の正確さを考えて
辞書使用についてのアドバイス

当日は、中文研究室だけでなく他コース・他分野の学部生、院生や当研究センター研究員も出席し、50名近い参加者があった。顧先生は、日中・中日辞書の特 徴や問題点を、数多くの具体例と自らの辞書制作経験を踏まえながら、中国語のわからない出席者のために講演のほとんどを日本語で行われた。辞書を作る側、 使う側の双方向から辞書に関する問題点を様々な角度から、丁寧かつ力強い調子で語られた。その内容はとても興味深く、特に講演の締め括りで述べられた「辞 書使用についてのアドバイス」は、学部生、院生だけでなく我々研究員にとっても、辞書を使用するに当たっての素晴らしい指針を示して下さったように思われ た。それは、「使用目的によって選ぶ。」「原文の辞書と一緒に使う。」「同時に複数の辞書で調べる。」「疑問を持って最後まで読む。」「ヒントしか得られ ないことを肝に銘じる。」という5点にまとめられるだろう。
 講演は予定の1時間を少し回ったが、先生の熱意もあって、我々参加者にはたいへん有意義な時間となった。

主な研究成果

年報『中国古典文学研究』創刊号を刊行した。
 内容は以下のとおり。

『文選』の研究
 【論考】
 狩野充德/『文選音決』の「三」字音考
 畑村 学/『文選』史伝作家の研究―司馬遷と 班固の評価の変遷を中心に―
【資料集】
 富永一登/資料集「『文選』李善注引曹植詩文」
 六朝詩の語彙および表現技巧の研究
 【論考】
 太田 亨/「蒼生」語について―虎関師錬の「詩話」を中心に―
先坊幸子/六朝志怪に於ける狐貍
 橘 英範/六朝詩に見られる「社」について
森野繁夫/顔延之の「庭誥」と褊激の性
 【訳注】
 佐伯雅宣・佐藤利行/劉孝綽詩訳注(2)
 鷹橋明久/阮咸伝(『晋書』巻四十九)訳注
 【報告】
 佐藤大志/楽府文学と声律論の形成
 高西成介/「地域」の視点から見た古小説の研究にむけて
武井満幹/研究状況の報告
 中国古典文学研究資料のデータベース化とその研究
 【論考】
 小川恒男/『人境廬詩草』中の「新名詞」
 【報告】
 佐伯雅宣/漢字情報データベースの製作とその課題―「全梁詩」検索について―
末葭敏久/「蘇洵蘇軾詩検索」について
中国古典研究
 【論考】
 中村光伸/石田梅岩と「三方よし」の思想


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