【研究成果】肺がん患者の予後を振り分ける遺伝子型の発見-検診や治療法開発への応用に期待-

広島大学原爆放射線医科学研究所の谷本圭司助教らの研究グループは、埼玉医科大学の江口英孝准教授らとともに、遺伝子データベースの解析から、肺がんにおいて発現量が高いと予後不良となるEPAS1遺伝子の働きに影響を及ぼす遺伝子塩基配列の相違を見出し、実験的にその機構を確認しました。

<研究成果のポイント>

*肺がんの予後に影響を及ぼすEPAS1という遺伝子の配列一塩基の相違により、同遺伝子の発現量が増加することを確認した。

*EPAS1遺伝子部位の塩基配列にA(アデニン)を含んでいる肺がん患者は、G(グアニン)だけを持つ患者より全生存期間が明らかに短く、予後が悪くなるリスクが2倍以上である。

*肺がん患者の予後を血液検査により事前に予測すること、さらにEPAS1遺伝子の働きを抑制する治療法開発に役立つことが期待される。

実際に肺がん患者のEPAS1遺伝子塩基配列を解析した結果、同遺伝子の塩基配列にA(アデニン)を含む患者の平均生存期間は28.0ヶ月でしたが、G(グアニン)配列だけを持つ患者は52.5ヶ月でした。年齢、性別、がんの進行度などで補正した相対的な予後不良リスクは2.31でした。

今回の研究成果は、肺がん患者の予後を血液検査により事前に予測し、検診や治療法の選択基準を確立すること、さらに予後不良に導くEPAS1遺伝子の働きを抑制する治療法開発に役立つことが期待されます。

本研究成果は、8月11日(米国東部時間)、米国のオンライン科学誌「PLOS ONE」に掲載されました。

<発表論文>

著 者
Andika C. Putra,Hidetaka Eguchi,Kian Leong Lee,Yuko Yamane,
Ewita Gustine,Takeshi Isobe,Masahiko Nishiyama,Keiko Hiyama,
Lorenz Poellinger,Keiji Tanimoto *
* Corresponding author(責任著者)

論文題目
The A Allele at rs13419896 of EPAS1 Is Associated with Enhanced Expression and Poor Prognosis for Non-Small Cell Lung Cancer

掲載雑誌
PLOS ONE
DOI:10.1371/journal.pone.0134496

【お問い合わせ先】

広島大学原爆放射線医科学研究所 助教 谷本 圭司

Tel:082-257-5841
E-mail:ktanimo*hiroshima-u.ac.jp(注:*は半角@に置き換えてください)


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