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解題:広島大学教職員組合関係文書目録

執筆者

菊池達也

はじめに―広島大学教職員組合について―

 本目録に収録した広島大学教職員組合関係文書は、広島大学教職員組合(以下、組合と略記する)が作成、あるいは収集し、広島大学文書館に移管された資料群である。
組合は、昭和30年4月、教職員620名が教官・職員の別なく、生活水準の向上・職場環境の改善・大学の民主化を進めることを目的として組織されたものである。また、昭和40年代における大学紛争とそれに続く改革、さらには大学の統合移転など、学内における様々な動きにも対応してきた。
 組合は、原則として各学部や学校ごとに支部を置き、それを活動の基盤として位置づけている。また組合の機関は、時期によって若干の変化もあるが、「広島大学教職員組合霞支部」(HK22001100)に挟み込まれている「広島大学教職員組合規約・細則及び規程」によると、昭和53年の段階では下図にあるように、組合の最高決議機関である総会、総会につぐ組合の決議機関である代議員会、組合の執行機関である執行委員会、三役と専門部長で構成される常任委員会、三役会議、さらには諸専門部を設置していた。
 主な活動としては、組合員からの諸要求などを審議し、それにもとづいて学長など大学側と交渉を行ったり、また、学内で解決できない要望については、中国地区大学教職員組合協議会、国家公務員共闘会議および日教組大学部などと提携したり、直接、政府、文部省・人事院などに要求書を提出するなどして解決方法を求めたりしてきた。そのほか、アンケート調査や新聞・速報の発行なども行っている1
 その後、平成16年4月1日になされた、広島大学の法人化にともない、組合も様々な変化を余儀なくされたが、今なお学内の労働条件の改善に向けた活動を行い続けている。

組合組織図

Ⅰ. 移管および整理の経緯

 本資料は、平成17年8月25日に、組合より移管されたものである。
 移管のきっかけは、広島大学の法人化が背景としてある2。国立大学法人法の施行によって、大学の教職員は国立大学法人に身分を引き継がれ、国家公務員としての身分を失った。また、国家公務員法とそれに基づく給与や勤務条件に関する法令(「一般職の公務員の給与に関する法律」や「人事院規則」など)がいずれも適用されなくなり、代わって、労働基準法、労働組合法などの労働関係法規が適用されるようになった。これにより、教職員が働く環境に変化が生じ、組合で保管されていた資料の一部は、参考にできないものも出てきた。こうしたこともあり、当館への資料の移管がなされた。
 さて移管された資料は、当初、紐で括られたり、箱につめられたりしていた。しかし、これらはまとまりとしての性格が希薄であり、また、当館へ送付する際、仮に括られたり、箱に入れられたりしたものと推測されたため、そのまとまりを一旦崩し、内容に応じて分類し、あらためて整理を行った。ただし、後述する「松川宏資料」は性格が異なると判断し、分けて採録することにした。

Ⅱ. 資料の概要

 次に、広島大学教職員組合関係資料の概要を紹介する。本目録に所収されている資料は760点であり、上述した整理の経緯を経て、平成30年2月現在、下記のように分類・整理されている。なお、各分類の中では、特に断らない限り、作成年月日順に並べた。

Ⅰ. 広島大学教職員組合資料―694点

1. 書類(作成資料)―105点

(1)組合登録書・契約書等―3点
(2)会議・経理・通達等綴―37点
(3)執行委員会関係―13点
(4)書記局関係―21点
(5)各支部関係―22点
(6)その他―9点

2. 書類(収集資料)―167点

(1)教職員待遇・勤務条件関係―46点
(2)大学改革関係―51点
(3)広島大学統合移転関係―26点
(4)他大学関係―12点
(5)集会資料―9点
(6)パンフレット・要覧―6点
(7)その他―17点

3. 写真―16点

4. 名簿―27点

(1)広島県労働組合名簿―9点
(2)広島大学職員録―4点
(3)広島県職員録―3点
(4)その他―11点

5. 書籍―206点

6. 雑誌―21点

7. 冊子―93点

(1)広島大学教職員組合―4点
(2)学内―21点
(3)学外―68点

8. 機関紙・広報紙―59点

(1)広島大学教職員組合―6点
(2)書記局―15点
(3)各支部―13点
(4)学内―1点
(5)学外―24点

Ⅱ. 松川宏資料―66点

1. スケジュール帳―5点

2. 書類―48点

3. 写真―4点

4. 書翰―5点

5. 書籍・冊子―2点

6. 機関紙―2点

 

以下、大分類・小分類の項目に沿って説明する。

Ⅰ. 広島大学教職員組合資料

1. 書類(作成資料)

 写真、名簿、機関紙・広報紙に当てはまらない、冊子形態以外の資料を書類とした。なお冊子形態であったとしても、組合が無線綴じ(合成のりなどで綴じたもの)を行ったものについては、ファイル形態の資料と同じ性格を持つと判断し、書類扱いとした。
 そのうち、組合が主体となって作成したと思われる資料105点をここに採録した。なお、本目録に採録されている資料には、内容から見て組合が作成したと思われるが、書記局・執行委員会・各支部などのうち、どこで作ったのかわかりにくいものも多かった。その場合、内容的にどの部局・委員会と関係性が深いかを判断し分類した。

(1)組合登録書・契約書等

 組合登録書、契約書、協定書、組合結成期の広島大学との交換文書など、組合を構成するうえで重要と思われる資料3点を採録した。なお、「大学―組合交換文書等(」HK11100200)には、昭和30年代前半のものと推測される「組合員名簿」や各委員会のメモなどが記載されてある「記録簿」が挟み込まれている。いずれも昭和30年代の資料が含まれており、結成期の組合を知るうえで重要なものと思われる。

(2)会議・経理・通達等綴

 表記に若干の違いもあるが、主に会議や経理、通達などの文書を綴った資料37点を採録した。背表紙に「書記局」と記されているものもあるため、後述する書記局が作成した資料だと推測される。一部欠けているものもあるが、昭和42年から平成8年にいたるまで網羅している。

(3)執行委員会関係

 執行委員会が作成、あるいは関連すると思われる資料13点を採録した。昭和50年1月1日に改正された「規約」(HK22001100に挟込)によると、執行委員会は、組合の執行機関であって、委員長、副委員長、書記長、経理部長ならびに執行委員をもって組織された。執行委員会の審議事項には、総会・代議員会の審議に付議すべきこと、事業の執行に関すること、加入希望者の資格検討及び組合員名簿への登録、寄付金等の受理などがあった。ここでは、執行委員会での会議資料や交渉時の諸資料、また活動方針や報告書などを収集している。

(4)書記局関係

 (2)以外の書記局が作成、あるいは関連すると思われる資料21点を採録した。書記局は、大学職務に服す執行委員にかわって、事務処理などに専念するスタッフ(書記、あるいは専従書記)の機関である。昭和48年4月1日に改正された「細則」(HK22001100に挟込)によると、執行委員会の決定事項を具体化し実践にあたり、組合の日常業務を処理し、組合規約、細則、役員・組合員名簿、会議議事録、発受文書綴など、書類の整備・公開を担当した。ここでは、会議や会計などの資料を中心に収集している。

(5)各支部関係

 組合の組合員は、いずれかの支部に所属し活動を行っている。先掲した図に示したように、昭和53年の段階で、18支部で組合は構成されていた(現在は17支部)。ここでは各支部が作成、あるいは関連すると思われる資料22点を採録した。各支部で問題となっている具体的な内容がわかる資料などを集めている。

(6)その他

 組合が作成したと思われるものの、書記局・執行委員会・各支部以外が作成、またはどの部局で作成したか判断がつかない資料9点を採録した。執行委員会の諮問機関であり、今後の組合活動の展望、執行体制の在り方、財政の確立の在り方などについて審議する組合活動検討委員会に関する資料などもある。

2. 書類(収集資料)

 組合が収集したと思われる書類形態の資料167点を採録した。ただし、他機関で作成された資料や冊子を組合で綴じなおし作成されたと思われるものも、ここに採録した。

(1)教職員待遇・勤務条件関係

 組合の主要な活動の一つで、教職員の待遇・勤務条件の改善を目指すために収集されたと思われる資料46点を採録した。大学の法人化以前、教職員の身分は国家公務員であったため、人事院勧告にかかわる資料が多い。そのほか、給与・勤務手当や、再任用制度、任期制などに関する資料も収集している。

(2)大学改革関係

 広島大学では、昭和44年2月に教養部が無期限ストに突入したのち、紛争が全学的に広がっていった。この背景には、大学における教育・生活水準の改善要求があり、大学側は、同年3月、評議会に大学問題検討委員会準備委員会を設置し、大学改革を行うことで解決をはかった。ここでは、広島大学で大学紛争が広がった昭和44年以降、大学院・教養教育の改革や大学の法人化など、学内で行われた諸改革に関する資料51点を集めた。

(3)広島大学統合移転関係

 広島大学は、多くの学校を包括して発足したため、県内にキャンパスが分散していた。また、大学紛争を契機とした大学改革の進展にともない、あらためてキャンパスの狭さが障害として認識されるようになった。そこで、昭和48年2月8日に、賀茂郡西条町御園宇地区(当時)へ統合移転することを決定した。以後、昭和57年に工学部が移転したのをはじめとして、移転計画が完了するまで24年もの歳月が費やされた。
 大学の統合移転は、組合の主要な活動の一つである職場環境の改善とつながるものでもあり、福利厚生の充実に向けて、キャンパス統合移転の計画や東広島市の視察などに関する資料を集めていた。ここでは、この問題に関連する資料26点を採録した。

(4)他大学関係

 組合は、大学教職員の勤務・待遇に関する問題や、広島大学の諸改革・統合移転などについて、他大学の教職員組合の資料も収集し、検討を行っていたと考えられる。ここでは、それら他大学に関する資料12点を採録した。

(5)集会資料

 組合は、大学の教職員研究集会に出席し、それに関する資料を集めるなどして、活動の参考にしていたと思われる。ここでは、集会資料に関連する資料9点を採録した。

(6)パンフレット・要覧

 広島大学や東広島市に関するパンフレット・要覧6点を掲載した。

(7)その他

 組合が収集したと思われる書類のうち、上記の分類にあてはまらなかった資料17点を採録した。各種規程・規則集、また、同和問題や旧理学部一号館に関する資料がある。

3. 写真

 写真を添付したアルバムや、写真を入れた封筒16点を採録した。主に、広島大学の統合移転時に撮影したものが大半を占め、移転前の東広島市西条町の様子や、大学の建設過程がうかがえる。また、統合移転問題について検討する参考資料として撮影したと思われる、筑波大学の写真集もある。

4. 名簿

 形態にかかわらず、主に人名が羅列されているものを名簿とした。ここでは、名簿27点を種類別に、(1)広島県労働組合名簿、(2)広島大学職員録、(3)広島県職員録、(4)その他の順で採録した。

5. 書籍

 冊子形態の不定期刊行物で、商業用と思われる資料206点を書籍として採録した。組合が活動する際に参考にしたと思われる、大学や大学教職員、労働組合、労働条件などに関するものが多い。なお、ここではタイトル順に掲載した。

6. 雑誌

 冊子形態の定期刊行物で、商業用と思われる資料21点を雑誌として採録した。組合が活動する際に参考にしたと思われる、大学や労働、法律、統計にかかわるものが多い。なお、ここではタイトル順に掲載した。

7. 冊子

 冊子形態の不定期刊行物で、上記の分類に当てはまらない資料93点を冊子として採録した。作成別に、(1)広島大学教職員組合、(2)学内、(3)学外の順で掲載した。

8. 機関紙・広報紙

 形態にかかわらず、定期刊行物で、商業用ではないと思われる資料、あるいは主にそれらを綴じたファイル59点を機関紙・広報紙として採録した。作成別に、(1)広島大学教職員組合、(2)書記局、(3)各支部、(4)学内、(5)学外の順で掲載した。なお、ファイルに綴じられているものについては、機関紙・広報紙以外が混在する資料もあったが、その資料全体の性格を吟味し、ここに分類した。

Ⅱ. 松川宏資料

 広島大学教職員組合の役員で、霞支部に所属し、執行委員長や書記長、霞支部支部長を担当した松川宏氏のものと思われる資料を採録した。氏は、附属図書館医学分館の専門員であるため、ここには教職員組合の資料だけでなく、広島大学をはじめとした大学の附属図書館に関する資料も多く含まれている。

1. スケジュール帳

 松川宏氏のものと思われるノート形態のスケジュール帳5点を採録した。内容は、附属図書館に関するものが多く、主にメモ帳代わりとして使用していたと考えられる。

2. 書類

 スケジュール帳、写真、書翰、機関紙に当てはまらない、冊子形態以外の資料48点を書類とした。基本的には、附属図書館に関するものが多いが、「広島大学教職員組合霞支部」(HK22001100)や「組合員名簿及び新年度組合役員選挙について」(HK22002100)のように、組合に関する資料も混在している。なお、「広島大学教職員組合霞支部」には、昭和52年に作成された「広島大学教職員組合の手引」や、昭和53年発行の「広島大学教職員組合規約・細則及び規程」のほか、書翰、機関紙・会報などが多数挟み込まれている。

3. 写真

 写真集、写真のネガ、袋に入った写真4点を写真として採録した。いずれも図書館に関する写真である。

4. 書翰

 書翰5点を採録した。内容は、いずれも附属図書館に関するものと思われる。

5. 書籍・冊子

 「大学教授心得帳YOUANDYOURSTUDENTS」と「大学図書館職員講習会テキスト」2点を採録した。

6. 機関紙

 「速報広島大学教職員組合」2点を採録した。

おわりに―今後の見通し―

 以上、広島大学教職員組合関係文書の全体像を概観してきた。大学の教職員組合の歴史については、本目録に所収されている「山口大学教職員組合の50年1951年~1997年」(HK12400900)のように、各組合でまとめられつつあるが、広島大学教職員組合に関してはほとんどその作業がなされていない。
 本目録に採録されている資料は、会議・通達・経理等綴のように網羅的に集められているものもあり、大学の法人化以前の組合を知るうえで、貴重なものといえる。本資料が多くの人々に活用されることを望むものである。

 

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1広島大学教職員組合が作成した「加入の手引き」(HK11600800)「広島大学教職員組合の手引」(HK22001100挟込)などを参考にしている。
2下田修二「大学改革としての国立大学法人化」(広島大学文書館編・刊『地方国立大学にとっての国立大学法人化』広島大学文書館研究叢書1、2008年)。


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