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[研究成果]肝がんにおける肝切除術前のctDNAが陽性であった症例では、 早期の再発や遠隔転移が高確率で起こることを解明~肝がんにおける治療法選択の重要な指標となることに期待~



【本研究成果のポイント】

*肝がんで肝切除術を受けた症例の血中循環腫瘍DNA(ctDNA(*1))の解析を行い、手術前のctDNAが陽性であった症例では、術後早期の再発や遠隔転移が高率に起こることを明らかにしました。

*肝動注化学塞栓術(TACE(*2))後の血中のcell-free DNA(*3)を次世代シークエンサー(*4)で網羅的に解析し、原発巣のがん組織で検出された遺伝子変異の83%を検出する事に成功しました。

*治療前のctDNAの量は、治療方法を選択する上で有用な情報となる可能性を示しました。



【概要】

広島大学病院消化器診療科 大野 敦司 医科診療医と同大学院医歯薬保健学研究院 応用生命科学部門 茶山一彰教授、および国立研究開発法人理化学研究所統合生命医科学研究センター、ゲノムシーケンス解析研究チームの中川英刀チームリーダーらによる共同研究グループは、肝がんで肝切除術を受けた症例のctDNAの解析を行い、手術前のctDNAが陽性であった症例では、がんが微小な血管に浸潤しており、術後早期の再発や遠隔転移が高率に起こることを明らかにしました。またctDNAの量はがんの進展や治療効果に伴って増減することも明らかにしました。

さらに、TACEを行った症例の、治療前後のctDNA量を測定したところ、術後、一過性にctDNAが増加する事が分かりました。この知見を利用して、TACE後の血中のcell-free DNAを次世代シークエンサーで網羅的に解析したところ、原発巣のがん組織で検出された遺伝子変異の83%を検出する事に成功しました。



本研究成果は、オンライン科学雑誌『Cellular and Molecular Gastroenterology and Hepatology』2015年9月号に掲載されました。

また、本雑誌のウェブサイト版の表紙(3パターンのうちの1つ)を飾りました。





【発表論文】

(著者)

Atsushi Ono, Akihiro Fujimoto, Yujiro Yamamoto, Sakura Akamatsu,

Nobuhiko Hiraga, Michio Imamura, Tomokazu Kawaoka, Masataka Tsuge, Hiromi Abe, C. Nelson Hayes, Daiki Miki, Mayuko Furuta, Tatsuhiko Tsunoda, Satoru Miyano, Michiaki Kubo, Hiroshi Aikata, Hidenori Ochi, Yoshi-iku Kawakami, Koji Arihiro, Hideki Ohdan, Hidewaki Nakagawa∗, Kazuaki Chayama∗

*Corresponding Author

(論文タイトル)

Circulating Tumor DNA Analysis for Liver Cancers and Its Usefulness as a

Liquid Biopsy

(掲載誌)

Cellular and Molecular Gastroenterology and Hepatology2015年9月号

(DOI)

http://dx.doi.org/10.1016/j.jcmgh.20615.06.009

【用語の解説】

*1 血中循環腫瘍DNA(ctDNA)

circulating tumor DNA。無細胞状態で血中を循環する腫瘍由来DNA

*2 肝動注化学塞栓術(TACE)

肝細胞がんを栄養している肝動脈内にカテーテルを挿入し、抗がん剤と塞栓物質を投与して血流を遮断し、兵糧攻めにしてがんを死滅させる方法。

*3 cell-free DNA

ヒトの血液や尿等に存在する細胞外遊離DNA断片のこと。細胞死によって細胞外に放出されたものと考えられている。 癌患者では癌細胞由来のDNA断片(circulating tumor DNA; ctDNA、上記)と癌以外の細胞由来のDNA断片がcell-free DNAとして混在していることが知られている。

*4 次世代シークエンサー

遺伝情報を持つDNAは4種類の塩基(アデニン、シトシン、グアニン、チミン)からなる。これらの並び方を順に読み取ることでゲノムを解読する。ヒトゲノムが解読されたことで、DNAをバラバラにしても再構成できるため、同時並行で大量の配列を読み取れる。また、たんぱく質など他の分子を解読できる機能も備えている。





【お問い合わせ先】

広島大学大学院医歯薬保健学研究院応用生命科学部門

医学分野 消化器・代謝内科学

教授 茶山 一彰(ちゃやま かずあき)

TEL:082-257-5190

E-mail:chayama*hiroshima-u.ac.jp(注:*は@に置き換えてください)


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