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本研究成果のポイント
- 軟部組織で最もよく発生するがんである脂肪肉腫において、その病症の進退に大きく関係するYAP/TAZの活性化メカニズムは解明されていませんでした。
- 高分化型脂肪肉腫(予後良好)においてTIMP−4はがん促進因子であるYAP/TAZを不活性化し、脱分化型脂肪肉腫(予後不良)においてTIMP−1はYAP/TAZを活性化することで、細胞の増殖・遊走を亢進させ、予後不良に導くことを明らかにしました。
- 本研究により、TIMP-4/TIMP-1が制御するYAP/TAZシグナル経路を標的とした新しい脂肪肉腫の診断・治療法開発の可能性を見出しました。
概要
脂肪肉腫は軟部組織で最もよく生じるがんです。予後の良好な高分化型と、予後が不良な脱分化型があります。特に脱分化型の脂肪肉腫において、がん促進因子であるYAP/TAZ(注1)は異常に活性化し、細胞の増殖に大きく寄与しています。
これまでの研究において、TIMP−1(注2)がYAP/TAZをさまざまながんで活性化させる機構を解明されていますが、脂肪肉腫におけるTIMP-1の詳細な役割は明らかになっていませんでした。
広島大学大学院医歯薬保健学研究科 口腔顎顔面病理病態学研究室(髙田隆教授)の安藤俊範特任助教を中心とした研究チーム(論文投稿時)は、高分化型脂肪肉腫はTIMP-4(注3)を高発現してYAP/TAZを抑制し、一方、脱分化型脂肪肉腫(予後不良)はTIMP-1を高発現してYAP/TAZを活性化していることを明らかにしました。
本研究の成果により、今後、TIMP-1およびTIMP−4が制御するYAP/TAZ経路を指標とした新しい脂肪肉腫の診断・治療法開発の可能性を見出しました。
本研究成果は、「Carcinogenesis」オンライン版に掲載されました。
用語解説
(※1) YAP/TAZ (Yes-associated proteinおよびtranscriptional co-activator with PDZ binding motif)
がん抑制シグナル伝達経路であるHippo-pathwayのエフェクター因子であり、転写共役因子として働く。TAZはYAPのparalogueである。増殖関連遺伝子の転写を行い、細胞増殖において中心的役割を担っている。
(※2) TIMP-1 (Tissue inhibitor of metalloproteinase-1)
TIMP family(TIMP-1~-4)の一つであり、分泌タンパク質である。以前の研究で、YAP/TAZを活性化させることが明らかになっている。
(※3) TIMP-4 (Tissue inhibitor of metalloproteinase-4)
TIMP family(TIMP-1~-4)の一つであり、分泌タンパク質である。正常脂肪組織にて高発現を示す。
脂肪肉腫におけるTIMP-1/TIMP-4によるYAP/TAZ活性化機構
論文情報
- 掲載雑誌: Carcinogenesis
- 論文題目: The transition of tissue inhibitor of metalloproteinases from -4 to -1 induces aggressive behavior and poor patient survival in dedifferentiated liposarcoma via YAP/TAZ activation
- 著者: Madhu Shrestha, Toshinori Ando, Chea Chanbora, Shinnichi Sakamoto, Takashi Nishisaka, Ikuko Ogawa, Mutsumi Miyauchi, Takashi Takata*
*Corresponding author (責任著者) - DOI: 10.1093/carcin/bgz023
- 報道発表資料(277.57 KB)
- 論文掲載ページ (Carcinogenesisに移動します)
- 広島大学研究者総覧 (安藤 俊範 特任助教)
- 広島大学大学院医歯薬保健学研究科口腔顎顔面病理病態学ホームページ
広島大学大学院医系科学研究科
特任助教 安藤 俊範