原子力災害医療・総合支援センターの役割及び指定要件

本内容は,原子力規制庁の原子力災害拠点病院等の役割及び指定要件(平成27年5月15日制定)(令和4年4月6日全部改正(名称変更))から抜粋したものです。注釈の記載を省略している事項もあるため,文書全文については,下記リンクからご確認ください。

〔参考〕原子力規制委員会HP>原子力防災>原子力災害対策>原子力災害対策に関する指針等

原子力災害医療・総合支援センターに求められる役割

原子力災害医療・総合支援センターは,原子力災害時において原子力災害医療派遣チームの派遣調整やその活動の支援を行う機関であり,自ら原子力災害医療派遣チームを編成するほか,原子力災害医療派遣チームの派遣等に関して,立地道府県等の原子力災害医療調整官に専門的助言等の支援を行う。

また,平時から原子力災害医療派遣チーム構成員の養成を行うほか,地域や全国の拠点病院等との連携及び協力体制を強化するため,全国的な規模の関連医療機関とのネットワーク(以下「全国ネットワーク」という。)を構築し,情報交換等を行う。

さらに,拠点病院等が業務継続計画を整備するために必要な支援を行う。

なお,原子力災害医療・総合支援センターとして複数の機関が指定される場合には,効果的な派遣調整を行うため,担当地域を設けるものとする。

【参考:広島大学の担当地域(12府県)】
富山県,石川県,福井県,岐阜県,滋賀県,京都府,大阪府,鳥取県,島根県,岡山県,山口県,愛媛県
 

原子力災害医療・総合支援センターの指定要件

(1)医療体制等

① 診療機能等

【救急医療の提供体制】
A) 汚染の有無にかかわらず,多発外傷,挫滅症候群,広範囲熱傷等の災害時に多発する重篤な傷病者に対し高度な診療を提供できる体制を有すること。
【被ばく医療の提供体制】
B) 被ばく傷病者等に対して,線量測定,除染処置を行うとともに,集中治療等の診療を提供できる体制を有すること。 
【救急医療と被ばく医療の連携体制】
C) 救急医療と被ばく医療の両方の医療が必要な被ばく傷病者等に対して,救急医療を提供する者と被ばく医療を提供する者とが連携して対応できる体制を有すること。

② 原子力災害拠点病院等との医療連携

A) 拠点病院等へ原子力災害医療派遣チーム等を派遣できる体制を有すること。
B) 拠点病院等での診療に専門的助言を提供できる体制を有すること。 

③ 医療従事者等の配置

【施設管理者】
A) 施設管理者は,原子力災害医療に関する研修等を受講していること。
【原子力災害医療に関する中核人材の配置】
B) 高度被ばく医療支援センターが開催する原子力災害医療に関する専門的な研修を受講した者を配置すること。
【専門的な知識及び技能を有する医師の配置】
C) 次の要件を満たすこと。
 ・当該施設で実施する救急医療又は災害医療について,専門的な知識及び技能を有する医師を1名以上配置すること。
 ・被ばく医療に対し,専門的な知識及び技能を有する医師を1名以上配置すること。
【専門的な知識及び技能を有する医師以外の者の配置】
D) 次の要件を満たすこと。
 ・当該施設で実施する救急医療又は災害医療の看護について,専門的な知識及び技能を有する看護師を1名以上配置すること。
 ・放射線防護を行った上で,必要な看護ができる看護師を1名以上配置すること。
 ・線量評価について基礎的な知識を有し,線量評価の専門家の指示を受けて,必要な検査やサンプル収集を行う技能を有する者を 1 名以上配置すること。
 ・除染処置について,専門的な知識及び技能を有する者を1名以上配置すること。

上記要件に加え,次の要件を満たすこと。
【派遣調整業務従事者】
A) 原子力災害医療派遣チームの派遣調整,活動支援等に必要な人員が確保されていること。
B) 平時から,拠点病院,原子力災害医療派遣チームの情報等を収集し,関係者と情報共有するために必要な人員が確保されていること。

(2)施設,設備等

① 施設

A) 原則として,除染を行うために必要な除染室を有すること。
B) 被ばく傷病者等に対して救急処置等を行う処置室を有すること。
C) 被ばく傷病者等に対して入院治療を行うことができる病室を有すること。

上記要件に加え,教育研修及び訓練の実施に必要な施設を有すること。

② 設備,備品等

救急医療及び災害医療に必要な設備,備品等が整備されていることに加え,次の要件を満たすこと。
A) 医療従事者等が放射線防護を行うために必要な資機材を有すること。
B) 処置等を行っている場所の線量評価のために必要な放射線測定器を有すること。
C) 体表面汚染の線量評価を行うために必要な放射線測定器を有すること。
D) 内部被ばくの線量評価を行うために必要な放射線測定器を有すること。
E) 被ばくの診療に必要な設備及び医薬品を有すること。
F) 除染するために必要な資機材を有すること。
G) 汚染した衣服や資機材、洗浄水等を一時的に保管できる設備を有すること。
H) 災害時に利用できる衛星電話、衛星回線インターネットが利用できる環境及び複数の通信手段を有すること。

上記要件に加え,次の要件を満たすこと。
A) 被災地域以外からの原子力災害医療派遣チームの派遣調整に必要な設備を有すること。
B) 拠点病院等との通信ネットワーク設備を有すること。
C) 原則として,確実な派遣実施のため,被災地域からの通信が可能な衛星回線等の通信機器を装備した車両を有すること。

(3)教育研修,訓練の実施,関係機関への支援体制等

以下の業務等を実施又は対応できる体制を有した上で,指定後速やかに各項目を満たすこと。

① 教育研修

A) 原則として,自施設の全職員(医師,看護師,診療放射線技師等の技術系職員,事務系職員等)に対する教育研修を定期的に実施すること。
B) 高度被ばく医療支援センター等が実施する高度専門的な教育研修を自施設の職員に定期的に受講させること。

② 訓練

A) 自施設の原子力災害に関係する職員に対し,定期的に訓練を行うこと。
B) 自施設において,定期的に派遣調整訓練を行うこと。
C) 拠点病院等からの要請により,拠点病院等が実施する派遣訓練や業務継続計画に基づく訓練に対して,助言又は指導を行うこと。
D) 国又は立地道府県等からの要請により,国又は立地道府県等が開催する訓練に参加すること。

③ 全国ネットワークの構築

A) 関連医療機関との全国的な連携及び協力体制が平時から構築され,全国規模の原子力災害医療に関係する者による情報交換等のための会合を定期的に開催又は協力すること。
B) 拠点病院等の原子力災害医療派遣チームの派遣調整のため,平時から,全国的な規模の関連医療機関との連携及び協力体制を強化するための全国ネットワークを構築すること。
C) 高度被ばく医療支援センターが開催する放射線防護対策,線量評価等に関する専門家による情報交換のための会合に協力すること。

④ 原子力災害拠点病院等に対する支援

A) 原子力災害医療派遣チームが派遣先で活動するために必要な指導及び原子力災害医療派遣チームの構成員を養成するための研修を行うこと。
B) 地域の拠点病院に対し,地域のネットワークを構築するための助言等の支援を行うこと。
C) 拠点病院等に対し,業務継続計画を整備するための助言等を行うこと。

(4)原子力災害医療派遣チームの配置等

① 配置,資質等

A) 医師,看護師,診療放射線技師等の放射線管理を行う放射線防護要員が各1名以上かつチームとして4名以上で構成される原子力災害医療派遣チームを編成すること。
B) 災害医療の知識及び技能に加えて,原子力災害医療に特有で最低限必要な原子力災害及び放射線防護の知識を有すること。また,放射線防護要員は,放射線測定に関する技術を有すること。

② 装備等

A) 救急医療及び災害医療に必要な資機材を有すること。
B) 放射性物質の放出開始後の被ばく傷病者等に対する医療活動を想定した放射線防護に必要な資機材等を有すること。
C) 原則として,原子力災害医療派遣チームの派遣に必要な車両を有すること。

上記要件に加え,放射線防護対策,作業環境の放射線測定,被ばくを伴う傷病者の線量評価等に関する知識を有する者を配置すること。

(5)原子力災害医療派遣チームの派遣調整

A) 原子力災害時において,原子力災害が発生した立地道府県等からの要請に基づき,原子力災害が発生した立地道府県等以外から派遣される原子力災害医療派遣チームの派遣調整を行う体制を有すること。
B) 原子力災害時において,原子力災害医療派遣チームに対し,現地情報の提供等の活動支援を行う体制を有すること。
C) 平時においては,拠点病院,原子力災害医療派遣チームの情報等を収集し,関係者と情報共有を行う体制を有すること。

(6)その他

A) 原子力災害時に,国又は立地道府県等からの要請により専門家を派遣する体制を有すること。
B) 原子力災害に対応できる業務継続計画を整備すること。
C) 整備された業務継続計画に基づき,被災した状況を想定した研修及び訓練を実施すること。
D) 原子力災害医療・総合支援センターとしての役割を担うための業務方針を策定すること。


 


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