2016年11月28日(月)14:00~16:00 IDEC大会議室 参加者23名
本セミナーは「JICAアフリカ理数科教育支援プロジェクトの成果と課題」と題して、JICA国際協力専門員の又地淳氏に講演いただきました。今回はJICA課題別研修「英語圏アフリカINSET運営管理」の研修員10名(ケニア、マラウイ、ウガンダ、エチオピア、タンザニア、ガーナからの地方教育行政機関の長及び校長)も参加し、IDEC学生を交えた議論をすることを企図して実施しました。
講義では、JICAのこれまでのアフリカ理数科支援の成果と課題が説明され、今後の支援に向けた知見として、1.伝達講習研修(Cascading INSET)は授業研究のような学校現場で継続的に実施できる校内研修と補完して実施される必要がある、2.生徒中心の授業法を実践するには、三層カリキュラム(意図されたカリキュラム、実施されたカリキュラム、獲得されたカリキュラム)の一貫性が不可欠、3.効果的な授業を行うには、教授のための教科知識(Pedagogical Content Knowledge)が教師に必要、4.生徒中心の授業を進めていくには、教員養成課程と現職との連携が重要、5.計算力のような基礎的な数の概念操作に関する理解と技能が理数科の学習を深める基礎となる、があげられました。
質疑応答では、ほぼ全員の研修員から積極的な質問、コメントがあり、またIDEC学生かからの問いかけをきっかけに活発した議論が展開されました。具体的には、以下のようなコメントが出ました。「アフリカでも昔は教師がきちんと授業をし、自己研鑽を積んでいたのに、今はそうなっていない」、「教員給与が低いことが教師の動機づけが低い原因」、「誰かに監督されないときちんとしたパフォーマンスを果たせないのはアフリカの文化に起因するもの」、「多くの教育改革がなぜ教師がこれをやるのかという十分な説明もなしにトップダウンで落ちてきている。そのことが教師に新しい取り組みを本業ではない追加的な取り組みと感じさせ、経済的な動機付けを求めさせているのでは」、「こうした政策の実施にはドナーの影響も強く出ている」、「最終的には教師自身の自己の動機付け(self-motivation)が重要」等。
このような形で、JICA研修員とIDEC学生が意見交換できたことは、大学が短期、長期の研修員事業に包括的に関わることで実現できたものだと思います。今後も、開発途上国の課題と対応策を学ぶ実践的な場としてIDECが機能するために取り組みを進めていきたいと思います。
教育文化講座 澁谷 和朗