ごあいさつ 令和2年4月1日

 

 

 

広島大学防災・減災研究センター
  センター長  海堀 正博

 本日、広島大学防災・減災研究センター長を拝命いたしました。責任の重さに身の引き締まる思いでおります。大学に置かれたセンターとしての役割がしっかりと果たせるように、また、センターに関係する教職員の力を結集して実力以上のものが発揮できるように、センター長として微力を尽くして参る所存です。

 広島県は、土砂災害の危険箇所数・警戒区域数が全国一多いところとして知られています。しかし、この意味は、崖崩れや土石流等の実際の発生数や発生しやすさが日本一ということではなく、それらが起きたときに、その移動土砂によって生活場が脅かされ、家屋や人命に被害が及ぶ可能性のある地域が日本一多いということです。そのような危険性のあるところに人家や居住エリアを設けてしまっているところが多いことから、結果として、全国一土砂災害の危険箇所数や警戒区域数が多いところとなってしまっているのです。だから、2018年の西日本一帯の豪雨災害においても、全国での犠牲者数270人余りに対して、広島県内での犠牲者数は過半数の140人強となってしまったように、より深刻な災害になりやすい傾向が見られます。

 自然災害の規模は自然現象の規模と必ずしも比例するものではありません。同じ自然現象が起きたとしても人間の対応の仕方によって、災害の規模は大きく深刻なものになることもあれば、ほとんど被害を出さずに済ませる可能性もあるのです。本来の防災の意味合いは、自然現象の発生そのものをなくすことではなく、それが起きたとしても人々の生活空間にそれが及んで甚大な被害を出すことのないように対処・対応することなのです。

 まずは自然を知り、自然現象がどのように起きるかを自然科学的に解明するための研究が求められます。同時に、災害になってしまいやすい原因や被害を受けにくくするための方策、被害が出たときの対応などを考えるために、砂防学、土木工学、地理学、行動心理学、社会学、交通工学、医学・看護学の観点も総動員して、被害やその拡大を極力抑えられるような研究が求められましょう。

 本センターは、まさにそのような総合的な防災・減災への取り組みができる体制を保持していると思います。私自身の専門である砂防学も、近年は「総合科学としての砂防学」をめざしていますが、本センターの目標もまさにその方向で、地域社会への貢献から国際的な貢献にもつながるように力を尽くして参りたく思っています。

 皆様からのご支援・ご協力をお願い申し上げます。

海堀センター長は長年にわたり、砂防技術者の育成、土砂災害発生のメカニズムの研究などに取り組み、総合的な土砂災害対策の進展に貢献した功績が認められ、2020年2月に「赤木賞」を受賞しました。

赤木賞は、昭和48年から年1回、砂防技術及び事業の発展に功績のあった方を顕彰している、歴史ある賞です。


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