広島大学大学院理学研究科・深沢泰司教授、宇宙科学研究所/JAXAのLukasz Stawarz研究員、アメリカNaval Research LaboratoryのTeddy Cheung研究員、フランスToulouse宇宙放射線研究所のJurgen Knodlseder研究スタッフを中心とする日米欧の研究チームが、フェルミ宇宙望遠鏡を用いた観測により、近傍銀河に付随した「巨大な雲」から強いガ ンマ線放射を発見しました。この観測結果は4月1日(木)付けの米国サイエンス誌オンライン版に掲載されました。(日本時間4月2日午前3時) ※フェルミ衛星は、広島大学が開発に大きく貢献し、平成20年6月にNASAにより打ち上げられました。 4月1日(木)、広島大学東京オフィス(キャンパス・イノベーションセンター)で、深沢教授が、早稲田大学理工学研究所・片岡淳准教授とともに記者会見を行い、観測成果を発表しました。 |
![]() 記者会見の様子(左から:深沢教授、片岡准教授) |
今回観測した構造は、私たちの銀河から約1200万光年の距離にあるケンタウルス座A(Centaurus A)という活動銀河に付随するものです。地球から見た「雲」の長手方向のサイズは満月の約20倍にも及び、実際の大きさは約200万光年で銀河本体の50倍以上にもなります。ケンタウルス座Aの中心には太陽の約1億倍の質量をもつ巨大なブラックホールが潜んでいると考えられ、ここから放出された高速な粒子ビーム(ジェット)が、この巨大な雲を形成したと考えられます。この雲は電波で明るく輝いているため電波ローブと呼ばれています。今回新たにガンマ線放射が確認されたことにより、粒子の加速エネルギーや磁場の強さを正確に決めるだけでなく、宇宙における「新たな加速器」の存在が明らかになりました。 宇宙空間には、宇宙線と呼ばれる高エネルギーの粒子が走り回っており、地球にも絶えず降り注いでいます。こうした高エネルギー粒子を作り出す効率の良い加速器として、星の最期における超新星爆発やガンマ線バースト、ジェットの噴出しなど激しい爆発現象が考えられてきました。一方で、今回発見した「巨大な雲」は宇宙空間をゆっくり膨張するものの、激しい爆発や衝突を伴わないもので、銀河の外の「何もない」空間で宇宙線が作られるという、新しい可能性を強く示唆します。 【お問い合わせ先】 |