Annals of Improbable Researchは，10月1日午前９時（ボストン時間で９月３０日午後８時）今年度のイグノーベル賞の交通計画賞（Transpotation Planning Prize）を本学 数理分子生命理学専攻の小林教授，伊藤博士と中垣 俊之教授（公立はこだて未来大）ら７名に授与した。小林教授のイグノーベル賞受賞は2008年に続いて2度目の受賞。



同研究グループは，関東地方の主要都市に餌を配置した容器の中でアメーバのような「真性粘菌」を飼育すると，体を変形させながら現在の鉄道網よりも，より効率的なネットワークを形成することを突き止め，本年１月22日付のアメリカ科学雑誌「サイエンス」【1】に発表していた。

実験は，関東地方をかたどった容器【図１】の主要都市36箇所に餌であるオートミールを配置。東京駅の位置に粘菌を置いて約1日観察すると，餌を結ぶネットワークが形成される。この粘菌が作ったネットワークを数理科学的に解析すると，移動時間やコスト的に現在の鉄道網よりも，より効率的なルートをたどっていることが示された。



このことは，人間が新しい都市交通を設計する際に，費用対効果を考えるならば，粘菌の成長戦略を利用すべきであることを意味している。この粘菌のユニークでユーモラスな実験結果と理論的考察が，選考委員たちの心を捉えての受賞。



受賞を受けて，小林教授は

「２度目の受賞に驚いています。我々の研究を楽しんでもらえるのはうれしいこと。粘菌の賢さも世の中にアピールできましたし・・・。それにしても、イグノーベル賞はフンと粘菌の研究が好きですねぇ」と語る。



無駄が多いと言われる日本の道路や鉄道交通網。一度，粘菌に「事業仕分け」をしてもらったらいかがだろうか。

【1】A. Tero, S. Takagi, T. Saigusa, K. Ito, D. P. Bebber, M. D. Fricker, K. Yumiki, R. Kobayashi and T. Nakagaki : “Rules for biologically-inspired adaptive network design”, Science, 327 : 439-442 (2010)