スペクトルを考慮したレンダリング

コンピュータグラフィックスによるスペクトルを考慮したレンダリング

情報工学専攻 知的システムモデリング研究室

金 田 和 文

光は約380~780ナノメートルの波長をもつ電磁波であり、人間は波長の違いを色として知覚します。色を感じる眼のセンサーは3種類あり、その刺激のバランスに応じていろいろな色に見えます。このことを利用して、テレビやコンピュータのディスプレイは、光の三原色である赤(R)、緑(G)、青(B)を混ぜ合わせてカラー表示を行っています。

コンピュータにより画像生成を行う場合にも、通常、RGB三原色の光の強さを計算します。しかし、光の干渉や回折などの波長依存性が高い光学現象では、三原色の光の強さの計算だけでは正しい色や明るさを表示することができません。

このような現象をコンピュータグラフィックスにより表示するためには、可視光の波長範囲を密にサンプルし、各波長の光の強さ(スペクトル強度)を計算する必要があります。そして、ディスプレイへの表示の際には、スペクトル強度を人間の視覚特性を考慮してRGB三原色に変換します。

第1段と第2段は、メガネのレンズに2層の薄膜をコーティングしたもの(第1段)と、そうでないもの(第2段)を比較した例です。薄膜での光の干渉や吸収により透過率が下がり、そして反射による映り込みが表示されています。

第3段は主虹、副虹、そして過剰虹を表示した例です。雨粒内部で光が1回反射した場合は主虹となり、2回反射すると副虹が主虹の外側にできます。条件がよければ主虹の内側や副虹の外側にも過剰虹とよばれる虹ができます。そして、虹は雨滴の大きさによって色付きなどの見え方も変化します。このような現象は、虹が色付いて見えるのは光の波長により屈折率がわずかに違うからであるという理論だけでは説明できません。雨滴に入射してから出射するまでの光路差により干渉が生じ、特定の波長の光が強め合ったり弱め合ったりすることにより色付くという理論に基づいて計算すると、過剰虹や雨滴の大きさによる虹の見え方の違いも表示することができるようになります。6種類の表示例は、右上に行くほど雨滴の大きさが小さくなったときの虹の見え方を表しています。


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