咸宜園教育の展開

鈴木 理恵 著

A5判 290頁 2021年11月30日発行
3,080円(本体2,800円+税10%)
ISBN:978-4-903068-53-4

*電子版(機関向けのみ販売
e-ISBN:978-4-903068-54-1

内容紹介

咸宜園は,1817年に広瀬淡窓によって天領日田(現在の大分県日田市)に開かれた漢学塾である。さまざまな階層の塾生が,厳しい塾則のもとで寄宿舎生活をしながら,毎月の成績によって昇級する実力主義の教育システムが採用されたことで有名である。最盛期には西日本を中心に全国各地から200名に及ぶ塾生が集い,私塾としては近世でも特筆すべき隆盛を誇った。
本書では,咸宜園独自の教育システムが,同塾門人が開いた塾(系譜塾)を通して各地へと展開し,明治期にも継続した様相を描いている。また,広瀬淡窓に始まる代々の塾主とその地位継承,広瀬淡窓の詩集「遠思楼詩鈔」出版の経緯,教育に必要な蔵書の形成過程や目録管理,地方での書籍流通の様子についても,史料に基づいて論じる。 近世から近代にかけての地方教育の研究に一助となる一冊である。

目次

序章 咸宜園研究の問題点と本書の目的

 第一節 咸宜園教育の概要
 第二節 先行研究の問題点
 第三節 本書の課題と構成

第Ⅰ部 咸宜園教育の確立

第一章 咸宜園塾主の家業化

 第一節 咸宜園教育の形成過程
 第二節 旭荘―青邨―林外への継承
 第三節 後継者への継承物と教育

第二章 蔵書の形成と管理

 第一節 蔵書の形成 ―蔵書銭の徴収と書籍の購入―
 第二節 蔵書の管理
 第三節 明治期再興後の蔵書の保管維持

第三章 『遠思楼詩鈔』初編の出版

 第一節 「遠思楼詩集」の編集
 第二節 『遠思楼詩鈔』の出版準備
 第三節 出版後の修訂

第Ⅱ部 咸宜園教育の西日本への拡大 ―空間的展開―  

第四章 初期系譜塾蔵春園の模索

 第一節 文政期の咸宜園と系譜塾
 第二節 蔵春園の教育
 第三節 明治期の蔵春学校

第五章 三亦舎を介した書籍流通

 第一節 咸宜園教育の導入
 第二節 塾生実家による書籍調達
 第三節 三亦舎を介した書籍貸借

第六章 培養舎の点数評価

 第一節 咸宜園における横井古城
 第二節 培養舎の教育
 第三節 課程録にみる点数評価

第Ⅲ部 咸宜園教育の近代への接続 ―時間的展開―

第七章 明治期再興後の咸宜園

 第一節 淡窓の遺規にもとづく再興
 第二節 普通学科の模索
 第三節 地域密着型の漢学教育

第八章 明治期の系譜塾屏陽義塾

 第一節 柳川竹堂と屏陽義塾
 第二節 屏陽義塾の性格
 第三節 屏陽義塾の役割

終章 本書の成果と残された課題

 第一節 本書のまとめ
 第二節 近世近代移行期の咸宜園の役割
 第三節 残された課題

書籍の購入

ネットストアで購入する
書店で購入する

広島大学生協 TEL: 082-423-8285
または、お近くの書店でご注文ください。


up