名古屋市立大学大学院システム自然科学研究科の青柳忍 准教授は、高輝度光科学研究センターの大沢仁志 研究員、広島大学大学院理学研究科の黒岩芳弘 教授らと共同で、世界で初めて水晶振動子の振動中の原子の運動を詳細に追跡することで、水晶振動子の振動機構を解明しました。この研究成果は、米国物理学協会「Applied Physics Letters」(アプライド・フィジックス・レターズ)のオンライン版に、11月19日午前3時(日本時間)に公開されました。
水晶振動子は、電子回路の正確な動作の基準となる電気信号を発振する素子として、時計など身の回りのさまざまな機器に広く利用されていますが、水晶の詳しい振動機構は長い間不明でした。水晶内の極めて高速かつ微小な原子の運動を追跡することが、これまで技術的に困難だったためです。今回、大型放射光施設SPring-8のBL02B1における高輝度短パルスX線を利用した新しい構造計測手法を用いることで、毎秒3千万回(周波数:30 MHz)振動している水晶振動子の原子の運動を、高精度に追跡することに成功しました。その結果、水晶振動子の安定した振動は、酸素原子がケイ素原子との共有結合に垂直な方向に弾性的に微小変位することで引き起こされ、この原子変位に伴う電気分極の発生が、力学的エネルギーを効率的に電気的エネルギーに変換することが分かりました。
本研究で解明された水晶振動子の振動機構は、力学的なエネルギーと電気的なエネルギーとを相互に変換する効率的なエネルギー変換機構の一つとして、今後、新しいエネルギー変換材料やエネルギー変換技術の研究開発に応用できます。
<発表論文>
著 者
青柳忍(名古屋市立大学)、大沢仁志(高輝度光科学研究センター)、杉本邦久(高輝度光科学研究センター)、藤原明比古(高輝度光科学研究センター(現所属:関西学院大学))、竹田翔一(広島大学)、森吉千佳子(広島大学)、黒岩芳弘(広島大学)
論文題目
Atomic motion of resonantly vibrating quartz crystal visualized by time-resolved X-ray diffraction
掲載雑誌
Applied Physics Letters 107 (2015)
【お問い合わせ先】
広島大学大学院理学研究科 教授 黒岩 芳弘
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