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【研究成果】水を含んだマントル岩石が,地震発生の原因となる可能性を発見

本研究成果のポイント

・自然地震と室内実験地震の研究結果とを結びつけ,陸の下に沈み込んだ海洋性プレート(スラブ)内のマントル物質の含水化の地域変化を捉えることに成功しました.

・水との関わりについて議論が続いていた,スラブマントル地震の発生機構に水が関係する可能性を示しました.

概要

国立研究開発法人 建築研究所 国際地震工学センターの北 佐枝子主任研究員(元 大学院理学研究科 地球惑星システム学専攻 助教)と,東京大学 地震研究所 Thomas Ferrand博士は,地震の規模(マグニチュード)別頻度分布に由来するb値について,東北および北海道地方の下に沈み込む海洋性プレート内の地震と室内実験地震を世界で初めて定量的に比較検討しました.その結果,海洋性プレート内のスラブマントルと呼ばれる領域では,1)水が存在すること,2)地震の発生には岩石に含まれる含水鉱物が関係すること,を示しました.スラブマントル地震には不明な点が多く,その発生に水が必要か否かについてこれまで議論が続いてきました.本研究により,スラブマントル地震の発生過程の基本部分が明らかになりました.

この成果は,11 月19日(イギリス時間午前10時),英国 Nature Publishing Group のオンライン科学雑誌「Scientific Reports」に掲載されました.

用語解説

 スラブマントル: 海洋プレートは、陸プレートの下に沈み込むとスラブと呼ばれます.スラブは,スラブ地殻とその下のスラブマントルから構成されており,スラブマントルは主に橄欖(かんらん)岩から構成され,一部が蛇紋岩(*2)化していると考えられています.スラブマントル内地震は,沈み込んだ海洋性プレート(スラブ)内部におけるスラブマントル部分で発生する地震のことを意味します.スラブマントル地震は,プレート境界型地震や内陸地震と比べて発生規模が小さいこと,地震波トモグラフィーと呼ばれる地下構造のCTスキャンが行いにくいことから研究が比較的遅れ,従って発生機構の理解も遅れています.

b値:ある地域で発生した地震の規模別頻度分布図における傾きを示す指標を(パラメータ)をb値と言います.b値が大きいほど比較的小さな地震が多く発生したことを示し,小さいほど大きな地震が多く発生することを示します.発生する地震活動の特徴を表現する指標として,地震学分野の研究では古くから使用されてきていましたが,スラブマントル地震におけるb値の物質科学的意味は,これまで良くわかっていませんでした.

スラブマントルおよび海洋性マントルの含水化モデル

本研究が提案するスラブマントルおよび海洋性マントルの含水化モデル.東北沖のほうが北海道沖よりもアウターライズにて断層が発達している様子を表現している.沈み込んだプレートの一部であるスラブマントルにおいても,東北地方下のほうが北海道下よりも含水化が起きていると考えられる.

今後の展望

プレート境界型地震,内陸地震,スラブ地殻地震とも比べて理解の遅れているスラブマントル地震の発生機構の理解は,本研究によって前進できたといえます.スラブ内地震は,規模の割に被害地震となりやすい性質を持つことが知られています.この前進は,将来起こりうるスラブマントル地震の発生場所や引き起こされる地震動の予測に役立ち,地震防災の観点からも重要な知見となりえます.また,地球内部の水循環を明らかにする上でも重要な知見と言えます.

論文情報

論 文 タ イ ト ル : Physical mechanisms of oceanic mantle earthquakes: Comparison of natural and experimental events

著者名: 北 佐枝子 1,2,Thomas P. Ferrand 3,4

所属:1. 広島大学大学院理学研究科,2. 現・建築研究所,3. Ecole Normale Supérieure(仏国高等師範学校),4. 東京大学地震研究所DOI:10.1038/s41598-017-14309-9

掲載誌:Scientific Reports volume 8, Article number: 17049 (2018)

お問合せ先

広島大学大学院理学研究科
地球惑星システム学専攻
TEL:082-424-7459
E-mail:geoljimu*sci.hiroshima-u.ac.jp(*は半角@に置き換えてください)


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