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【研究成果】新たな分子デザインにより炭素―炭素結合生成速度を約750倍遅くすることに成功

   解説

有機化合物を形づくる炭素炭素の結合形成と開裂には,不均一開裂(ヘテロリシス)と均一開裂(ホモリシス)過程がある。ヘテロリシス過程では,イオン対(カチオンとアニオン)が介在することがこれまで明らかにされ,その構造と反応性に関する基礎研究が行われ,それらの活性種を用いる合成反応の開発研究が活発に行われている。一方,ホモリシス過程で生じるラジカル対(一重項ジラジカル)は,非常に反応性が高く,直ちに炭素炭素σ結合を形成するため極短寿命であり,実験的に一重項ジラジカルを捕らえる研究が困難と考えられてきた。一重項ジラジカルの構造と反応性を解明できれば,ホモリシス過程の機構をより深く理解でき,ラジカルを用いる新たな合成反応の開発に展開できる

本研究では,一重項ジラジカルを安定化させるため,マクロ環構造による分子歪みを利用した「ストレッチ効果」を導入した。つまり,マクロ環骨格は,ジラジカルの結合形成方向とは反対方向にジラジカル炭素を引っ張ることができるため,結合形成反応の遷移状態と生成物を不安定化させ,一重項ジラジカルの速度論的安定化ができた。室温下でのベンゼン溶液中に,マクロ環をもつ一重項ジラジカルの寿命はマクロ環がないものの寿命より約750倍(156 μs)長くなることを見出した。さらに,粘性が高いトリアセチン溶液中にその寿命が400 μsと求まった。マクロ環効果と溶媒効果をさらに検証,展開することで,一重項ジラジカルの化学をより明らかにし,これまでに知られていなかったπ単結合からなる新規結合様式を創出することが可能になる。この研究成果は,イギリス王立化学会誌 Chemical Scienceに掲載が決定し,2020 Chemical Science HOT Article Collectionに選出された。https://doi.org/10.1039/D0SC05311B

【論文情報】
掲載雑誌: Chemical Science, as an Edge Article, in press
タイトル: Impact of the macrocyclic structure and dynamic solvent effect on the reactivity of a localised singlet diradicaloid with π-single bonding character                                                                                                                                                      著者: Zhe Wang,Rikuo Akisaka, Sohshi Yabumoto, atsuo Nakagawa, Sayaka Hatano and Manabu abe
DOI: 10.1039/D0SC05311B

【お問い合わせ先】
広島大学大学院先進理工系科学研究科
教授 安倍 学

TEL: 082-424-7432
E-mail: mabe*hiroshima-u.ac.jp(*は半角@に置き換えてください)


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