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【研究成果】薬剤耐性遺伝子の広範な拡散を制御する宿主染色体性因子の発見~広宿主域型IncP1 プラスミドの接合伝達を抑制する宿主染色体性因子の発見~

本研究成果のポイント

  • 薬剤耐性菌が出現・拡散する大きな要因として、薬剤耐性プラスミド(※1)の接合伝達が知られています。プラスミド側の関連遺伝子の解析は古くから行われて来ましたが、宿主となるバクテリア側の遺伝子の解析は進んでいませんでした。本研究では広宿主域型に分類されるIncP1型薬剤耐性プラスミドの一種、RP4プラスミドの接合伝達を抑制する3つの遺伝子を大腸菌から発見しました。
  • これら3つの遺伝子(frmR、iscA、sufA)のノックアウト変異株では、他大腸菌への(バクテリア間)接合伝達だけでなく、大腸菌から真核生物である出芽酵母への生物界間接合伝達の頻度も上昇していました。
  • 本研究が薬剤耐性遺伝子の拡散抑制への応用だけでなく、真核生物への遺伝子導入ツールへの応用の潜在性も秘めていることを示しています。

概要

広島大学大学院統合生命科学研究科の守口和基講師、大学院生Fatin Iffah Rasyiqah Mohamad Zoolkefli、鈴木克周教授らの研究グループは、IncP1型プラスミドが様々な宿主バクテリアから様々な生物へ、接合伝達により遺伝子を水平伝播させる能力に着目しました(図1)。そのメカニズムを探るために、大腸菌を用いて接合効率上昇変異株の単離をゲノム網羅的に行いました。その結果、3つの遺伝子(frmR、iscA、sufA)のノックアウト変異株を単離することに成功しました(図2)。FrmRタンパク質は、CsoR/RcnRファミリー転写抑制因子の一つ、IscA及びSufAタンパク質は鉄-硫黄クラスター輸送タンパク質であることが知られており、双方ともプロテオバクテリア間で広く存在しています。これら3つのタンパク質は、異なる宿主菌でもIncP1型プラスミドの接合伝達に特異的に働いており、薬剤耐性遺伝子の拡散抑制への応用だけでなく、真核生物への遺伝子導入ツールとしての応用の潜在性も秘めていることを示しています。

本研究の成果は、学術雑誌「Frontiers in Microbiology」に掲載されました。

図1 IncP1型プラスミドの接合伝達による遺伝子の水平伝播

図1 IncP1型プラスミドの接合伝達による遺伝子の水平伝播

用語解説

(※1)プラスミド
プラスミドとは、細菌などにおいて染色体とは独立して複製し、娘細胞へ分配されるDNA分子の総称で、バイオテクノロジーの分野では遺伝子を導入するための運び屋(ベクター)として改変・利用されています。大型のプラスミドの中には自らのDNAを他個体へ移行させる能力(接合伝達)に関わる遺伝情報を持つものもあります。

論文情報

  • 掲載誌: Frontiers in Microbiology
  • 論文タイトル: Isolation and Analysis of Donor Chromosomal Genes Whose Deficiency Is Responsible for Accelerating Bacterial and Trans-Kingdom Conjugations by IncP1 T4SS Machinery
  • 著者名: Fatin Iffah Rasyiqah Mohamad Zoolkefli1、守口和基1,2*、Yunjae Cho3、清川一矢2、 山本真司1、 鈴木克周1,2
    1: 広島大学大学院理学研究科
    2: 広島大学大学院統合生命科学研究科
    3: 広島大学理学部生物科学科
  • DOI: https://doi.org/10.3389/fmicb.2021.620535
【お問い合わせ先】

大学院統合生命科学研究科 
講師 守口 和基
TEL: 082-424-7391 FAX:082-424-0734
E-mail:kmoriguc*hiroshima-u.ac.jp (注: *は半角@に置き換えてください)


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