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【研究成果】Ia型超新星の爆発直後の閃光を捉えることに成功!~特異な爆発に至る恒星進化の謎に迫る~

本研究成果のポイント

  • Ia型超新星の爆発直後の閃光を捉えることに初めて成功した。
  • 観測と理論計算を組み合わせた研究により、通常のIa 型超新星とは異なる進化過程を経て爆発したことを明らかにした。
  • 標準光源である Ia 型超新星の起源の理解が進展すると期待される

概要

東京大学国際高等研究所カブリ数物連携宇宙研究機構(Kavli IPMU)姜継安(ジャン ジアン)特任研究員をはじめとする東京大学や京都大学、広島大学などの研究者からなる研究チームは、特異なIa型超新星の爆発直後からの観測と理論計算を組み合わせた研究により、これが通常のIa型超新星とは異なる進化過程を経て爆発したものであることを明らかにしました。研究チームは東京大学木曽観測所の1.05m木曽シュミット望遠鏡に搭載されたTomo-e Gozen(トモエゴゼン)カメラ(注1)を用いた観測により、Ia型超新星の爆発から5時間以内にパルス状の閃光が現れる様子を捉えることに初めて成功しました。さらに、京都大学岡山天文台のせいめい望遠鏡を用いた観測により、今回観測されたIa型超新星が通常のものより明るい特異なIa型超新星であることを突き止めました。これらのデータをもとにシミュレーションによる解析を行い、爆発した白色矮星の周囲に存在した大量の物質と超新星爆風が衝突したことで初期閃光が生じたことを明らかにしました。
Ia型超新星がどのような機構によって爆発するかは未だ多くの疑問が残されています。今回の発見は、Ia型超新星の爆発機構の謎を明らかにする手がかりとなると共に、通常とは異なる特異なIa型超新星の起源に迫る成果になると期待されます。
本研究成果は、米国天文学会の発行する天体物理学専門誌アストロフィジカル・ジャーナル・レターズ(The Astrophysical Journal Letters)に12月8日付で掲載されました。

発表内容

【背景】

大質量の星は超新星という大爆発を起こしてその生涯を終えます。一方、白色矮星は、太陽のような中間質量の星の残骸であり、進化の後に中心のコアだけが残ったものです。そのため、太陽程度の質量しか持ちません。単独で存在する場合には大きな活動性を示さない静かな天体ですが、別の星と近距離で回りあっている近接連星系の一部であった場合には、もう一方の恒星からのガスを取り込むことで様々な活動性を示します。特に、ガスの取り込みにより白色矮星の質量がチャンドラセカール限界質量(太陽の約1.4倍の質量)と呼ばれる質量に十分近づいた場合、最終的に核反応の暴走により爆発すると考えられています。このタイプの超新星爆発は、Ia型超新星と分類されます。
Ia型超新星は、太陽の約50億倍という非常に明るい現象であり、さらにその明るさのばらつきがほとんどないことが知られています。このことから、遠方宇宙まで見渡せる強力な標準光源として、天文学における距離指標の一つとして広く用いられてきました。例えば、1998年に発表された宇宙の加速膨張の発見は、Ia型超新星を用いた研究成果です。しかし、このようなIa型超新星を用いた宇宙論における大きな成果にも関わらず、Ia型超新星はどのような機構で引き起こされるか、またどのようにして爆発の引き金となる発火が起きるのかといった基本的な部分については未だ多くの疑問が残されています。

【研究手法・成果】

これら長年の謎を明らかにするため、東京大学国際高等研究所カブリ数物連携宇宙研究機構(Kavli IPMU)の姜継安(ジャン ジアン)特任研究員らが中心となり、東京大学木曽観測所の1.05m木曽シュミット望遠鏡に搭載されたTomo-e Gozen(トモエゴゼン)カメラを用いて、爆発から1日以内の爆発初期段階にあるIa型超新星を捉える試みを行っています。2019年9月に本格稼働を開始したTomo-e Gozenカメラは、計84枚のCMOSイメージセンサー組み合わせることで1億9,000万画素を持ち、1秒あたり2回という高頻度で一度に20平方度の視野の動画撮影が可能です。その広視野と集光力を生かした広い領域のサーベイ観測を行うことで、超新星爆発をはじめとしたいつどこで起きるか分からない突発的な天体現象を捉え、その時間変化を詳細に調べることができます。
研究グループは、Tomo-e Gozenの観測で発見された爆発初期の超新星を定期的にチェックする中で、Tomo-e202004aaelb(SN 2020hvf)というIa型超新星に着目しました。Tomo-e202004aaelbは、2020年の4月21日にしし座近くNGC3643という銀河の近傍で発見されました。この超新星は爆発後約5時間しか経過していない段階で発見されたと考えられます。爆発直後にパルス状の閃光を示した後一旦暗くなり、また明るくなるという、短時間での大きな光度変動を示しました(図1)。近年、Ia型超新星の爆発直後における発見が可能になりつつあり初期閃光を示す例もいくつか見つかっていますが(例えば、同研究グループの成果2017年10月5日発表「表面での爆発から星の死への旅立ち」の東京大学大学院理学系研究科プレスリリース記事を参照:https://www.s.u-tokyo.ac.jp/ja/press/2017/5574/)、今回のように一日以内での大きな光度変動を示したIa型超新星はこれまで知られていませんでした。
研究グループは、Tomo-e Gozenでの爆発初期の観測に加えて、京都大学岡山天文台のせいめい望遠鏡(注2)や広島大学東広島天文台のかなた望遠鏡(注3)を含む国内外の複数の望遠鏡で追加観測を行いました。2018年度に科学観測を開始したせいめい望遠鏡は東アジアで最大の3.8mという口径と非常に迅速な駆動系、観測スケジュールを即座に入れ替えるToO(Target-of-Opportunity)観測に力を入れた柔軟な運用形態を併せ持つ望遠鏡であり、超新星のような突発天体の観測に力を発揮します。特に今回の超新星に関しては、京都大学大学院理学研究科の川端美穂研究員を中心として発見直後からの分光観測を行いました。爆発直後のスペクトルはこれまで知られているどのタイプの超新星とも異なる特徴を示しましたが、研究チームは最も明るいタイプのIa型超新星とのいくつかの類似点を見出しました。実際、時間とともにそのスペクトルは以前に発見された明るいIa型超新星の特徴との一致を示すようになり、Tomo-e202004aaelb(SN 2020hvf)が特異なIa型超新星に分類できることが明らかになりました。
以上から、最も明るいタイプの特異なIa型超新星に激しい初期閃光が伴うことが明らかになりました。この短く明るい閃光はどのように生じたのかを理解することが、どのような星が爆発したのかを突き止める鍵となります。京都大学大学院理学研究科の前田啓一准教授は閃光が生じ得る様々な状況・過程をシミュレーションし、実際の観測データと比較しました。その結果、爆発した白色矮星の周囲に大量の物質が存在し、これが超新星によって生じた爆風と衝突したことでエネルギーが放出され、それが閃光を引き起こしたと理解できることを示しました(図2)。
今回の成果から、特異なIa型超新星Tomo-e202004aaelb(SN 2020hvf)においては、爆発に至る進化過程で白色矮星を含む連星が大量の物質を周囲にまき散らしていたことが明らかになりました。これは、通常のIa型超新星とは明らかに異なる進化過程を必要とします。今後、特異なIa型超新星の爆発機構として提案されている様々な理論予想を調べる手がかりになると期待されます。同時に、特異な現象の起源を理解することで、標準光源として用いられる典型的なIa型超新星がどのような進化経路を経てどのように爆発するか、という問題に対しても大きな示唆が得られると期待されます。

【波及効果、今後の予定】

Tomo-e202004aaelb(SN2020hvf)のようなとびぬけて明るいタイプのIa型超新星は、チャンドラセカール限界程度の質量の白色矮星の爆発では説明できないことが問題とされています。爆発への進化過程や爆発機構に様々な疑問が残るIa型超新星のなかでも、最も謎の天体であると言えます。特異な明るいIa型超新星を説明するために、白色矮星が非常に高速で自転しているためにチャンドラセカール限界質量を超えた質量を持つ白色矮星が形成され、それが爆発した可能性が議論されています。今回発見された大量の星周物質は、このようなシナリオを検証するうえで鍵になる情報であると期待されます。
今回研究グループが成功したIa型超新星の爆発初期段階の観測成果は、爆発メカニズムを理解する上で最も有力な情報の一つといえます。研究グループは今後も爆発初期の超新星の発見および即時追観測を遂行することを計画しており、特異なタイプに加えて、いたって「普通」のタイプのIa型超新星に対してもその起源の理解が進展すると期待されます。Ia型超新星の起源を理解することは、宇宙膨張をより正確に測定する上でも大きな貢献を果たすと期待されます。

図1 上半分の三枚の画像は、Tomo-e202004aaelb (SN 2020hvf)の最初期のTomo-e Gozenによる観測画像(2020年4月20日から約一日おきの画像)。下は、同じ時刻における光度の進化の様子(時間に対して光度を示した、光度曲線)。緑の点は、上の超新星観測時と対応する光度の段階を示す。(Credit:Kavli IPMU/東京大学)

図2 Ia型超新星 Tomo-e202004aaelb(SN 2020hvf)を取り囲む星周物質と超新星放出物質の衝突の想像図 (Credit:東京大学木曽観測所)

用語解説

(注1)Tomo-e Gozen(トモエゴゼン)カメラ
東京大学大学院理学系研究科附属天文学教育研究センターが運用する東京大学木曽観測所の1.05m木曽シュミット望遠鏡に搭載されたカメラ。名称は、平家物語に登場する木曽地域出身の女性武将である巴御前にちなむ。東京大学大学院理学系研究科附属天文学教育研究センターの酒向重行准教授と土居守教授が中心となり開発、2019年9月に本格稼働を開始した。計84枚のCMOSイメージセンサー組み合わせることで1億9,000万画素を持ち、1秒あたり2回という高頻度で一度に20平方度の視野の動画撮影が可能。高速、高頻度かつ広視野の観測により、爆発初期の超新星爆発のような突発現象のみならず、高速移動天体の微光流星、ミリ秒イベントのブラックホール連星やガンマ線バーストのようなフラッシュ現象等、短時間で起きる様々な種類の変動現象の観測を行うことができる。なお、国立天文台の冨永望教授、東北大学の田中雅臣准教授、東京大学大学院理学系研究科の諸隈智貴助教、Kavli IPMUの姜継安特任研究員らが中心となり、爆発直後の超新星発見のためのソフトウェア開発・整備を進めている。

(注2)せいめい望遠鏡
京都大学大学院理学研究科が運用する京都大学岡山天文台の3.8m口径の望遠鏡。名称は、平安時代の陰陽師で天文観測も行ったとされる安倍晴明(あべの せいめい)にちなむ。東アジアで最大の3.8mという口径と非常に迅速な駆動系、観測スケジュールを即座に入れ替えるToO(Target-of-Opportunity)観測に力を入れた柔軟な運用形態を併せ持つ望遠鏡であり、超新星のような突発天体の観測に力を発揮する。京都大学大学院理学研究科前田啓一准教授や川端美穂研究員らは、せいめい望遠鏡を用いた超新星観測を推進し精力的に観測を行っている。

(注3)かなた望遠鏡
広島大学宇宙科学センターが運用する東広島天文台の1.5m口径の望遠鏡。かつては、ハワイのすばる望遠鏡を製作するにあたって各種試験を行うための「赤外シミュレータ」として、国立天文台三鷹キャンパスに設置され、活用されていた。すばる望遠鏡完成後の2004年、新たな活用先として広島大学に移管され、大規模な改造を経た上で、2006年に東広島天文台にて運用が再開された。「かなた」の愛称はその後の公募により採用されたものである。かなた望遠鏡は、高速で駆動できる性能を持つほか、可視光と近赤外線で同時に観測できる装置が常時利用可能であり、そのような特徴を活かしてガンマ線バーストのような短時間フラッシュ現象のほか、超新星爆発などの突発天体の観測に威力を発揮する。今回も、追加観測の望遠鏡の一つとして活用された。

論文情報

  • 掲載誌: The Astrophysical Journal Letters
  • 論文タイトル: Discovery of the Fastest Early Optical Emission from Overluminous SN Ia 2020hvf: A Thermonuclear Explosion within a Dense Circumstellar Environment
  • 著者名: Ji-an Jiang (1), Keiichi Maeda (2), Miho Kawabata (2), Mamoru Doi (3, 4, 1), Toshikazu Shigeyama (4), Masaomi Tanaka (5, 1), Nozomu Tominaga (6, 7, 1), Ken’ichi Nomoto (1), Yuu Niino (3, 4), Shigeyuki Sako (3), Ryou Ohsawa (3, 8), Malte Schramm (9), Masayuki Yamanaka (10), Naoto Kobayashi (8, 3, 11), Hidenori Takahashi (8, 3), Tatsuya Nakaoka (12, 13), Koji S. Kawabata (12, 13), Keisuke Isogai (14, 15), Tsutomu Aoki (8, 3), Sohei Kondo (8, 3), Yuki Mori (8, 3), Ko Arimatsu (16), Toshihiro Kasuga (6), Shin-ichiro Okumura (17), Seitaro Urakawa (17), Daniel E. Reichart (18), Kenta Taguchi (2), Noriaki Arima (3, 19), Jin Beniyama (3, 19), Kohki Uno (2), and Taisei Hamada (12, 20)

    1. Kavli Institute for the Physics and Mathematics of the Universe (WPI), The University of Tokyo Institutes for Advanced Study, The University of Tokyo, 5-1-5 Kashiwanoha, Kashiwa, Chiba 277-8583, Japan
    2. Department of Astronomy, Kyoto University, Kitashirakawa-Oiwake-cho, Sakyo-ku, Kyoto 606-8502, Japan
    3. Institute of Astronomy, Graduate School of Science, The University of Tokyo, 2-21-1 Osawa, Mitaka, Tokyo 181-0015, Japan
    4. Research Center for the Early Universe, Graduate School of Science, The University of Tokyo, 7-3-1 Hongo, Bunkyo-ku, Tokyo 113-0033, Japan
    5. Astronomical Institute, Tohoku University, Aoba, Sendai 980-8578, Japan
    6. National Astronomical Observatory of Japan, National Institutes of Natural Sciences, 2-21-1 Osawa, Mitaka, Tokyo 181-8588, Japan
    7. Department of Physics, Faculty of Science and Engineering, Konan University, 8-9-1 Okamoto, Kobe, Hyogo 658-8501, Japan
    8. Kiso Observatory, Institute of Astronomy, Graduate School of Science, The University of Tokyo, 10762-30 Mitake, Kiso-machi, Kiso-gun, Nagano 397-0101, Japan
    9. Graduate School of Science and Engineering, Saitama University, Shimo-Okubo 255, Sakura-ku, Saitama-shi, Saitama 338-8570, Japan
    10. Okayama Observatory, Kyoto University, 3037-5 Honjo, Kamogata-cho, Asakuchi, Okayama 719-0232, Japan
    11. Laboratory of Infrared High-resolution spectroscopy (LiH), Koyama Astronomical Observatory, Kyoto Sangyo University, Motoyama, Kamigamo, Kita-ku, Kyoto 603-8555, Japan
    12. Hiroshima Astrophysical Science Center, Hiroshima University, Higashi-Hiroshima, Hiroshima 739-8526, Japan
    13. Department of Physical Science, Hiroshima University, Kagamiyama 1-3-1, Higashi-Hiroshima 739-8526, Japan
    14. Okayama Observatory, Kyoto University, 3037-5 Honjo, Kamogatacho, Asakuchi, Okayama 719-0232, Japan
    15. Department of Multi-Disciplinary Sciences, Graduate School of Arts and Sciences, The University of Tokyo, 3-8-1 Komaba, Meguro,
    Tokyo 153-8902, Japan
    16. The Hakubi Center/Astronomical Observatory, Graduate School of Science, Kyoto University, Kitashirakawa-oiwake-cho, Sakyo-ku, Kyoto 606-8502, Japan
    17. Japan Spaceguard Association, Bisei Spaceguard Center, 1716-3 Okura, Bisei-cho, Ibara, Okayama 714-1411, Japan
    18. Department of Physics and Astronomy, University of North Carolina at Chapel Hill, Campus Box 3255, Chapel Hill, NC 27599-3255, USA
    19. Department of Astronomy, Graduate School of Science, The University of Tokyo, 7-3-1 Hongo, Bunkyo-ku, Tokyo 113-0033, Japan
    20. Graduate School of Advanced Science and Engineering, Hiroshima University, 1-3-1 Kagamiyama, Higashi-Hiroshima, Hiroshima 739-8526, Japan

  • DOI: https://doi.org/10.3847/2041-8213/ac375f (2021年12月8日掲載)
【お問い合わせ先】

<研究内容について>

姜 継安 (ジャン ジアン) [英語での対応]
東京大学国際高等研究所カブリ数物連携宇宙研究機構 特任研究員
E-mail: jian.jiang*ipmu.jp

前田 啓一 (まえだ けいいち)
京都大学大学院理学研究科宇宙物理学教室 准教授
E-mail: keiichi.maeda*kusastro.kyoto-u.ac.jp
TEL:075-753-3894 / 080-2014-7824

土居 守 (どい まもる)
東京大学大学院理学系研究科附属天文学教育研究センター センター長/教授
E-mail: doi*ioa.s.u-tokyo.ac.jp
TEL:070-1261-7820

川端 弘治 (かわばた こうじ)
広島大学 宇宙科学センター 教授
E-mail: kawabtkj*hiroshima-u.ac.jp
TEL:082-424-7371 / 070-5075-3634

<報道に関する連絡先>

東京大学国際高等研究所カブリ数物連携宇宙研究機構 広報担当 小森 真里奈
E-mail:press*ipmu.jp
TEL: 04-7136-5977 / 080-4056-2930

京都大学 総務部広報課国際広報室
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TEL:075-753-5729  Fax:075-753-2094

東京大学 大学院理学系研究科・理学部 広報室
E-mail:kouhou*adm.s.u-tokyo.ac.jp
TEL:03-5841-0654

広島大学 財務・総務室広報部広報グループ 西本 勝彦
E-mail:koho*office.hiroshima-u.ac.jp
TEL:082-424-3701

(注: *は半角@に置き換えてください)


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