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【研究成果】キラル超分子カプセルの表面を利用したエナンチオ選択的アシル化反応を実現~柔軟な設計を可能とする新しい超分子触媒実現への第一歩を確立~

本研究成果のポイント

  • キラル超分子カプセルの表面を利用したエナンチオ選択的触媒反応の実現

概要

 広島大学大学院先進理工系科学研究科の構造有機化学研究室(原田健太郎(博士後期課程3年・日本学術振興会博士特別研究員DC1)・関谷亮(准教授)・灰野岳晴(教授))は、レゾルシンアレン*1が金属イオンとの自己組織化*2により二量化することで形成されるキラル超分子カプセルを用い、その外周部のキラル空間を反応場として活用することで第二級アルコールのエナンチオ選択的アシル化反応*3の実現に成功した。本研究成果は、キラル超分子カプセルの活用法として新しい概念をホスト・ゲスト化学*4の分野に提供するものであり、今後の発展が期待される。

 研究成果はWiley-VCHより出版されている「Chemistry-A European Journal」(I.F.=4.3)に2024年1月19日にオンライン版が掲載された。

背景

 超分子カプセルは、ナノメートルサイズの空間をもつカプセル分子である。ナノ空間は溶液中とは異なる環境を提供するため、様々な分野で応用されてきた。例えば、ナノ空間を反応場として利用することで、溶媒中では達成が困難な反応の実現が報告されている。ところが、このようなナノ空間を利用できる基質は、ナノ空間に適合したサイズもつ必要があるなど、大きな制約が課される。これは、ナノ空間内に基質が包接されることが、その空間の利用に不可欠であるからである。この制約を軽減することができれば、超分子カプセルの活用は格段に広げることができる。

研究成果の内容

 構造有機化学研究室のグループは、レゾルシンアレンが金属イオンとの自己組織化により形成されるキラル超分子カプセルの表面に着目し、同カプセルの表面部分をキラル源として用いることができないかを検討した(図1a)。内部のキラルナノ空間ではなく、表面近傍の空間を用いることができれば、基質を包接させる必要はなくなるため、上述の制約を解消することができる。そこで、直線状の分子に触媒を担う部位を導入したゲストを設計した。このゲストをキラル超分子カプセルに包接させることでホスト・ゲスト錯体を得た。触媒を担う部位は、キラル超分子カプセルの表面の近傍に位置するため、触媒部位に接近した基質(第二級アルコール)はカプセルのキラリティーの影響下を反応が進行することが期待される(図1b)。

 図1.(a)ビスレゾルシンアレンと金属イオンの自己組織化により形成されるキラル超分子カプセル (b)キラル超分子カプセルの表面で進行する第二級アルコールのエナンチオ選択的アシル化反応の模式図。

 種々の測定の結果、用いた基質はエナンチオ選択的にアシル化反応が進行することが確認された。この結果は、キラル超分子カプセルの表面近傍で反応が進行していることを示す重要な成果である。

今後の展開

 今回の研究成果は、これまでの超分子カプセルの活用に新たな概念を提供するものである。触媒部位に様々なものを用いることができる高い汎用性をもつため、本研究成果の概念を応用することで、基質の制約を大きく低減させた様々な超分子カプセルを基盤とする触媒群の実現が期待できる。

論文情報

  • 論文題目
    Kinetic Resolution of Secondary Alcohols Catalyzed at the Exterior of Chiral Coordinated Capsules
  • 著者名
    Kentaro Harada1,2,†, Ryo Sekiya1,†, and Takeharu Haino1,3,*
    1.広島大学大学院先進理工系科学研究科(化学プログラム)
    2.日本学術振興会博士特別研究員(DC1)
    3.広島大学 WPI SKCM2
    †.    These authors contributed equally to this work.
    *責任著者
  • 掲載誌
    Chemistry a European Journal
  • 掲載日
    論文の掲載日:2024年2月6日(公開は2024年1月19日)
  • DOI
    DOI: 10.1002/chem.202304244

用語解説

*1 レゾルシンアレン:ベンゼン環が四枚環状に配列したお椀型の形状をもつ分子
*2 自己組織化:分子間に働く相互作用により、分子同士が集合すること
*3 アシル化反応:アシル基(CH3CO-)が結合する反応
*4 ホスト・ゲスト化学:大きな分子もしくは分子集合体が提供する空間に他の基質が、主として分子間相互作用により取り込まれる(包接)現象を取り扱う学問領域

【お問い合わせ先】

 大学院先進理工系科学研究科化学プログラム
 教授 灰野岳晴(はいのたけはる)
 Tel:082-424-7426
 E-mail:haino*hiroshima-u.ac.jp

 大学院先進理工系科学研究科化学プログラム
 准教授 関谷亮(せきやりょう)
 Tel:082-424-7403
 E-mail:csekiya*hiroshima-u.ac.jp
 (注: *は半角@に置き換えてください)


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