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【研究成果】純国産ゲノム編集ツール「Zinc Finger-ND1」の高機能化に成功 ~産業応用可能なゲノム編集法として期待~

本研究成果のポイント

  • ゲノム編集ツール「Zinc Finger-ND1」を効率よく作製する方法を発見し、またその機能の向上に成功しました。
  • ゲノム編集の産業利用への一助となることが期待されます。

概要

 広島大学ゲノム編集イノベーションセンターの片山翔太特任准教授、山本卓教授、医系科学研究科の野村渉教授、産業技術総合研究所の渡邊真宏主任研究員、加藤義雄グループ長らのグループは、構造モデリングに基づく改変により、純国産ゲノム編集ツール「Zinc Finger-ND1」の高機能化に成功しました。
 本研究成果は、「Advanced Science」(IF=15.1)に令和6年4月11日付でオンライン掲載されました。

発表論文

論文タイトル: Engineering of Zinc Finger Nucleases through Structural Modeling Improves Genome Editing Efficiency in Cells

著者: 片山 翔太1,*、渡邊 真宏2、加藤 義雄3、野村 渉4、山本 卓1, 5, *

1.    広島大学ゲノム編集イノベーションセンター
2.    産業技術総合研究所 機能化学研究部門 バイオ変換グループ
3.    産業技術総合研究所 バイオメディカル研究部門 構造創薬研究グループ
4.    広島大学大学院医系科学研究科
5.    広島大学大学院統合生命科学研究科
*    責任著者

掲載雑誌: Advanced Science (IF=15.1)(Q1)

DOI: 10.1002/advs.202310255

 

この研究成果は、COI-NEXT「バイオDX産学共創拠点」の支援を受けて研究を行い、得られたものです。

背景

 標的DNAを改変するゲノム編集ツールは、遺伝子細胞治療のための強力なツールです。主なゲノム編集ツールとして、最も使われているCRISPR-Cas、次に使われているTALEN、最も使われていないZFN等があり、そのうち、CRISPR-CasやTALENは基本特許が2030年以降まで継続しているため、医療分野への使用には高額なライセンスフィーの支払いが必要です。一方、ZFNは基本特許が2020年までに切れており、ライセンスフリーで使用できるゲノム編集ツールです。DNAを認識するZinc FingerとDNAを切断するFirmCutND1 Nuclease(広島大学で独自に開発)を組合わせることにより、純国産ゲノム編集ツール「Zinc Finger-ND1」を作製することができます。しかし、機能的なZFNを構築し、そのゲノム編集効率を向上させることは非常に困難でありました。

研究成果の内容

 ZFNの作製は、従来、無作為に並べ替えたZFから標的DNAに結合するZFを取ってくるスクリーニングによるものが主流でした。しかし、機能的なZFNの作製までに2ヶ月ほどの時間を要し、かなりの時間と労力を要するものでした。また、ZFを遺伝子工学的に連結させるModular Assemblyと呼ばれる方法も考案されましたが、3-finger ZFN(ZFを3つ連結)を作製した場合、機能的なZFNが得られる確率が5%程度であり、作製効率が悪く使い物になりませんでした。我々は、Fingerの数が少ないことで認識する塩基数が少なくなり、機能的なZFNの作製効率の低下をもたらしていると考えました。そこで、本研究では、6-finger ZF-ND1(図1)をModular Assemblyを用いて作製し、認識する塩基数を多くしました。その結果、作製した10個のZF-ND1の中で、2個のZF-ND1でゲノムDNA切断活性を確認、つまり、20%の確率で機能的なZFNを得ることに成功しました。
 ZF-ND1の機能をより高めるべく、我々は、構造モデリングの手法(AlphaFold, Rossetta, Cootによる分子モデリング)を用いて、ZFとDNAの相互作用をモデリングしました(図2)。Zif268(DNAに結合する天然の3-finger ZF)のDNAとの相互作用のモデルと比較して、5個の変異導入候補が同定されました。さらに、Zif268のDNA sugar-phosphate backboneと結合するアミノ酸と比較して、4個の変異導入候補が同定されました。これら9個の変異候補を1つ1つ機能的なZF-ND1に導入したところ、3個の変異(図3)でゲノムDNA切断活性の向上が見られました。V109K変異においては、5%の切断活性の向上が見られ、構造モデリングに基づく、ZF-ND1の高機能化に成功しました。

 

今後の展開

 高機能化したZF-ND1は、ex vivo(がん治療や再生医療用の細胞作り)/in vivo(生体内)ゲノム編集治療に用いることができるものと考えられます。広島大学ではこれまでも、「Platinum TALEN」というゲノム編集ツールを独自に作成し、基礎研究において活用してきましたが、今回の高機能化したZF-ND1を活用することにより、高額なライセンス料を回避することができるため、ゲノム編集の産業利用への一助となることが期待されます。

参考資料

図1. Zinc Finger (ZF)-ND1の模式図

図2. ZFとDNAの相互作用のモデル

図3. 活性向上が見られた変異とDNAの相互作用のモデル

【お問い合わせ先】

ゲノム編集イノベーションセンター 特任准教授 片山 翔太
Tel:082-424-4008
E-mail:shota-katayama@hiroshima-u.ac.jp

ゲノム編集イノベーションセンター センター長 山本 卓
大学院統合生命科学研究科 教授 山本 卓
Tel:082-424-4008
E-mail:tybig@hiroshima-u.ac.jp


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