徹底した大学のモニタリング

目標達成型重要業績指標(AKPI®)

広島大学は、10年後に世界top100の大学となること、および、研究と教育の両面において大学として最大の結果を出すため教員を適切に配置できるようになることを目指しています。
この目標を達成する道筋を明確にするために、本学独自の目標達成型重要業績指標AKPI®(Achievement-motivated Key Performance Indicators)を設定しました。

KPIは、企業等において、目標達成の度合いを数値化する業績評価指標として用いられます。
大学におけるKPIとしてどのようなものを設定すべきなのか、大学経営企画室で検討してきました。その結果、世界top100の大学として備えているべき数値を10年後の目標値に設定し、それをポイント化する、という概念を考案するに至りました。

AKPI®グッドプラクティス  NEW!!

AKPI®を300点台から1300点までアップさせた、ある先生の取組みを下記のとおりご紹介します。
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 「2013年のAKPI®は 315点。自分としてはさぼっていたわけではありません。一生懸命、教員として職務に努めていたにもかかわらず、落第点に陥ったのは『努力の方向性、すなわち組織が教員に求める活動内容と、教員が行う活動内容がずれていた』からだと思います。まずはAKPI®を600点程度(成績でいうと可)まで引き上げようと思い、行動に移しました。
  AKPI®は活動内容ごとに細かく点数化されているので、何をどれだけ行えば何点になるのかが見えます。教員の職務は研究、教育、運営に大別されています。AKPI®は研究、教育、運営のすべての活動が考慮されていますので、苦手な職務をこなすより、得意な職務で伸ばしたほうが楽しく、効率も良いだろうと考えました。
  私の場合は、SCI論文の発表、博士人材の育成、留学生の確保が該当しました。専門分野の研究課題に、留学生が集まりやすかったのは幸いでした。博士課程の留学生がSCI論文を出せば、AKPI®としては一石三鳥。論文発表は博士課程の留学生にとっても望ましいので、“必然的”ともいえます。
  1年後、AKPI®は548点にアップし、『努力の方向性が間違っていない』ことを確認。成果の認識が続ける意欲になり、次の年は650点と当初目標を達成しました。この段階になると、『研究室の雰囲気が変わり始めた』と感じました。研究室に博士課程の留学生が増えたことで日本人学生も影響を受け、海外留学、国際学会発表、論文発表などを修士課程から意識するようになり、そのための努力を自発的に行うようになりました。
  それらも全て私のAKPI®に反映されますので、今後はさらに伸びるだろうという期待感も生まれました。AKPI®は全教員が1000点に到達すれば、広島大学が世界ランキングトップ100に入ると聞いています。当初は不可能だと感じていましたが、少なくとも 『私がAKPI®をあと350点伸ばすことは不可能ではない』との思いに至りました。
  その結果、翌年にはAKPI®は1100点を超えました。私だけでなく、学生も意識が変わり、それが研究室として軌道に乗った結果だと認識しています。『私と学生とが共に成し得た成果』なのです。以後の3年間も平均で1000点以上のAKPI®を維持しています。最新(2019年度)の値は1300点以上あり、鈍化しつつも更新しています。
  私は教授になることを目的としてAKPI®を上げる努力を行った訳ではありませんが、結果的に評価いただけたことは大変光栄に存じております。また、そのことが学生の成長につながっていると実感できた点もよかったと思います。学生たちが卒業・修了後に国際社会で活躍することによって、10年後、20年後、将来の国際社会が広島大学を高く評価してくれるようになると信じているからです。その先には『100年後にも世界で光り輝く大学の姿』もあるのだと思います。」

 

AKPI®の概念

本学のAKPI®には二重の仕掛けを込めています。
一つは、本学が世界top100になるまでの達成度のモニタリングとしての仕掛けです。
もう一つは、各教員の教育や研究の担当分を数値化することにで、総合研究大学である本学で、さまざまな分野の教員を適切に配置するための尺度としての仕掛けです。
具体的には、次のように教員の担当をポイント化しています。

 

(a) 授業担当分

取組目標を教員一人当たり300ポイントとします。
その内訳は、次のとおりです。

  • 授業担当:ある科目の単位数にその受講人数を掛けた数をcreditとよびます。
    ある科目のcredit = (その科目の単位数)×(その科目の受講人数)
    総credits = Σ{(科目の単位数)×(その科目の受講人数)}
    各学生の卒業要件単位の総数(入学者数)が、年度総creditsの理論値となります。
    本学の場合、年度総creditsは約44万creditsです。これは、本学が教育機関として学生に学位を授与するために必要な単位数です。学生の定員数が大きく変化しない限り、この数字は今後大きく変動することはありません。
    本学の本務教員数は約1800人です。すなわち、本務教員一人当たり約244creditsを担当して、本学が教育機関たりえているのです。この244creditsを244ポイントとします。
    また、これに加え、短期交換留学生などの非正規生のcreditsを約1万8千creditsとし、教員一人当たり10ポイント(10 credits)とします。
  • 学部入試問題作成等:毎年度、問題作成委員及びチェック委員等により入試問題の作成を担当しています。これをそれぞれの役割に応じ点数化すると、大学全体で約3500点となります。
    これは本務教員一人当たり約2点で、6ポイント(1点当たり3ポイント)となります。
  • 外国語による授業科目数は現状では一人当たり0.2科目です。
    これを教員一人当たり2科目とすることを目標とし、これを40ポイント(外国語による授業科目を1科目20ポイント)とします。

(b) 博士人材の養成

取組目標を教員一人当たり150ポイントとします。
その内訳は、次のとおりです。

  • 新M1:毎年度、新M1として2300人受入れることを目標とします。
    主指導教員として担当する新M1生一人当たり5ポイントとします。
    すなわち、10年後の目標値としては、教員一人当たり1.2人で、目標ポイントは6ポイントです。
  • 新D1及びD学位授与件数:毎年度、新D1として1100人受入れ、学位取得者1100人輩出を目標とします。
    主指導教員として担当する新D1生一人当たり120ポイントとし、主指導教員として指導し学位を取得した学生一人当たりを120ポイントとします。
    すなわち、10年後の目標値としては、それぞれ、教員一人当たり0.6人ずつで、合計目標ポイントは144ポイントです。

(c) SCI論文数

SCI論文1報当たり100ポイントとします。
本学が世界top100に入るためには、少なくとも、年間5400報程度の論文数となることが必要です。
教員一人当たり3報平均、ということになり、それを300ポイントとします。

(d) 外部資金受入

10年後には外部資金の総額を270億円程度とすることを目指します。
教員一人当たり約1500万円で、これを150ポイントとカウントします。

(e) 国際性

国際化のための取組目標を教員一人当たり100ポイントとします。
その内訳は、次のとおりです。

  • 留学生の受入は現状では教員一人当たり0.6人です。
    これを教員一人あたり2人とすることを目標とし、これを40ポイントとします。
    (受入教員=チューター:留学生一人当たり20ポイント)
  • 国際共著論文数は現状では、教員一人当たり0.2報です。
    これを教員一人当たり1.5報とすることを目標とし、これを30ポイントとします。
    国際共著論文数1報が20ポイントに相当します。
  • 海外からの研究者の招聘と教員の海外への派遣について、あわせて年間5400人を目標とします。
    すなわち、年間教員一人当たり合わせて3回で、これを30ポイントとします。
    海外からの研究者受入れ1回、あるいは、海外の機関への派遣1回が10ポイントに相当します。

これらの総計をXとします。
全教員が一人当たりX=1000ポイントの担当をしているようになれば、広島大学は世界top100の大学となっています。これは、その過程を数値化することに相当します。

教員一人当たりの平均AKPI® :X=a+b+c+d+e=1,000(H35年度目標)

この合計値Xおよび各項(a~e)の値を用いることで、異なる分野を専門とする教員の活動の比較が可能となり、また、共通の目標値とすることができます。さらに、これらの数値に基づいて、全学の教員配置が可能となります。
すなわち、必ずしも全員がこの平均値の担当をする必要はありません。ある教員は、授業担当分は非常に多いけれどもSCI論文はそれほど多くはない、あるいは、ある教員は、外部資金受入れは少ないけれども多くの留学生のチューターとなっている、ということがあり得ます。それらが平均して目標値になっていれば、広島大学が教育機関として学生に学位を授与し、かつ、世界的な研究を遂行し、世界から研究者や学生が集まる活発な大学となっている、ということが保証できるのです。


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