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【研究成果】高齢者を対象に成年後見人制度・民事信託制度の知識を調査 ~金融リテラシーとの関連性~

本研究成果のポイント

  • 全国の高齢者に対するアンケート調査から、金融リテラシーの高さが、成年後見人制度・民事信託制度の認知に共通して影響することが分かりました。
  • 一方で、年齢、性別、家族構成、教育、収入、資産、持ち家の有無といった属性からは、一貫した関連は認められませんでした。

概要

広島大学大学院社会科学研究科 角谷快彦教授、京都府立医科大学大学院医学研究科 成本迅教授らの研究グループは、認知機能が低下した人の経済活動を支える手段である成年後見人制度および民事信託制度の普及のカギが、高齢者の金融リテラシー(注1)を高めることにあると、全国の高齢者を対象にしたアンケート調査から明らかにしました。

<発表論文>

  • 論文タイトル: Factors affecting knowledge about the adult guardianship and civil trust systems: evidence from Japan
  • 著 者: 角谷 快彦1、カン ムスタファ1、大庭 輝2,3、成本 迅2
    1. 広島大学大学院社会科学研究科社会経済システム専攻
    2. 京都府立医科大学大学院医学研究科精神機能病態学
    3. 大阪大学大学院人間科学研究科
  • 掲載雑誌: Journal of Women & Aging (2020年2月11日オンライン掲載)
  • DOI 番号: 10.1080/08952841.2020.1727711

背景

人は認知機能が低下すると、銀行口座の暗証番号や資産の保管場所を失念するなど、生活の上で必要な経済活動の維持が困難になることがあります。信頼できる家族が同居していればサポートを得られるケースもありますが、そうでなければ成年後見人制度・民事信託制度が唯一の頼れる手段となります。

一方で、成年後見人制度・民事信託制度は未だ十分に普及しているとは言い難く、先行研究でも、認知症の罹患によって罹患者の支出は縮小すると言われています。

研究成果の内容

今回、研究グループは2016年3月から6月にかけて、全国の65歳以上の高齢者を対象とした郵送によるアンケート調査を実施しました。サンプリングは、全国を北海道地区、東北地区、関東甲信越地区、北陸東海地区、近畿地区、中国四国地区、九州地区の7つの地域に分類し、さらに居住地の人口規模を政令指定都市、人口20万人以上市等の5層に基づく層化2段階無作為抽出法によって行いました。アンケートの発送対象は6,000人、そのうち有効回答数は1,903人(回収率31.7%)。そのうち、本研究に必要な質問にすべてご回答いただいている1,411人の結果を分析しました。

分析方法は、成年後見人制度や民事信託制度についての知識の有無を被説明変数とし、年齢、性別、家族構成、教育、収入、資産、持ち家の有無、金融リテラシー等回答者の属性を説明変数として分析しました。その結果、成年後見人制度および民事信託制度に関する知識の有無に、回答者の金融リテラシーの高さが強く影響していることが分かりました。

今後の展開

今回、高齢者の金融リテラシーの向上が、成年後見人制度や民事信託制度に対する知識獲得と関連性があることが明らかになりました。それにより、政府が高齢者の金融リテラシーを高める金融教育を施すことによって、認知症高齢者の経済活動および資産管理に成年後見人制度・民事信託制度の活用といった選択肢が生まれ、高齢者の生活の質の向上とより安全な資産管理が実現。ひいては日本経済全体にも好影響をもたらす可能性があることが分かりました。

しかし、高齢者の金融リテラシーを高める金融教育をどのように施したらよいかについては分かっていません。今後は、必要な金融教育の内容や供給するタイミングにてついても精査することが必要になると考えられます。

用語説明

(注1) 金融リテラシー
国際的に利用されている、金融リテラシーの高さを問う3問の設問の正答率を用いて定量化しています。質問の内容は、複利やインフレ率等に関するものです。

【お問い合わせ先】

広島大学大学院社会科学研究科
教授 角谷 快彦

TEL: 082-424-7274

E-mail: ykadoya*hiroshima-u.ac.jp (注:*は半角@に置き換えてください)


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