メールマガジン No.99(2020年9月号)

メールマガジン No.99(2020年9月号)
リテラ友の会 メールマガジン No.99(2020年9月号) 2020/9/29

□□目次□□
1.角筆研究第一人者 小林芳規名誉教授 講義レポート
2.  オープンキャンパス2020 オンライン説明会を終えて
3.  人文学プログラム・文学部のオリジナル組織“就学相談室”レポート
4.文学部ニュース
5.広報委員会より

1.角筆研究第一人者 小林芳規名誉教授 講義レポート【地表圏システム学(文化財学分野)准教授 伊藤奈保子】

 

  2020年7月27日(月)、角筆研究の第一人者、小林芳規名誉教授をお招きして講義と角筆スコープの実習を文学部B104室で開催し、文化財学の学生に直接ご指導していただきました。この日、小林名誉教授所蔵の角筆資料約100点300冊余が広島大学図書館に寄贈されたのに併せ、授業の一環として文献文化財学の見地から角筆について学びました。新型コロナウイルスの感染を防ぐため、扉や窓を開放し、大型扇風機で十分な換気を行うなど、本学の行動指針を踏まえた万全の対策を行ったうえで実施しました。

 小林名誉教授から角筆研究の契機、30年にわたる文書収集、角筆スコープ開発の苦労などについてお話をいただいた後、広島大学図書館に寄贈された文献資料の実物を手に、スコープを用いて角筆を探す作業を行いました。この角筆スコープは理学部の吉沢康和名誉教授が改良を重ねて製作したオリジナル機材で、資料にスコープのライトをあてると、肉眼では見えにくい角筆がみるみると浮かび上がり、その瞬間を学生達が驚きと喜びの目でとらえているのが印象的でした。  

  中央図書館地下1階には角筆資料室が今年6月に設置されました。小林名誉教授が道を開かれた角筆研究は国境を越えた広がりもみせています。今後、広島大学全体の財産として、世界の研究者により多面的かつ重層的な視点から研究が継承・発展されていくことを願っています。

  講義を受けた学生さんの感想を紹介します。

○地理学・考古学・文化財学コース(文化財学分野) 3年 杉﨑 未唯

  角筆研究の分野を切り開かれた小林芳規名誉教授の貴重なご講義、実習の機会を得て、大変嬉しく思いました。小林先生は研究活動の中で偶然角筆を発見されたと知り、新たな研究に繋がるヒントに気付くことの大切さや難しさを感じました。また、スコープという「道具」が調査において重要な役割を果たすことも痛感しました。今後、古文書を手にする機会には必ず角筆の有無を調べてみたいと思います。今回、学び、体験した内容をしっかり心の中に留めて、参加できなかった学生にも伝えていきたいと思います。

講義をされる小林名誉教授

熱心に解説される小林名誉教授

スコープを用いて角筆を探す学生たち

2.  オープンキャンパス2020 オンライン説明会を終えて【教務委員長 前野弘志】

 去る8月23日日曜日の10時から14時にかけて、2020年度オープンキャンパス・HU Premium Dayと銘打って、オンラインによる相談会を開催いたしました。今年はコロナ禍の影響により、オンラインによる史上初の試みでした。8月17日月曜日からオンデマンドによるオープンキャンパスが始まり、日曜日はその最終日に当たります。その時の手順と様子をお知らせいたします。

順番 コース名 担当時間 担当者 BU要員
1 哲学・思想文化学コース 10:00〜10:30 各コースの教務委員 学部教務委員長
教育本部教務委員
事務方2人
2 歴史学コース 10:40〜11:10 各コースの教務委員
3 地理学・考古学・文化財学コース 11:20〜11:50 各コースの教務委員
4 日本・中国文学語学コース 12:50〜13:20 各コースの教務委員
5 欧米文学語学・言語学コース 13:30〜14:00 各コースの教務委員

 

 上の表の通り、文学部では相談窓口を1つとし、5つの時間帯を作り、各時間帯を各コースに振り分けました。質疑応答は個別ではなく、各コースの時間帯に参加した人全員が同時に見聞きできるようにしました。このやり方だと同じ質問の繰り返しがなく、効率的だと考えたからです。1コース当たりの対応時間は30分で休憩10分をはさみました。対応用パソコン1台とバックアップ兼モニター用パソコン2台を用意し、対応用パソコンの画面はスクリーンに投影して、スタッフ全員で相談の様子を共有できるようにしました。また担当者が使用したテーブル、キーボード、マウス、ヘッドセットなどは、担当者が交代するたびに消毒しました。

 相談を希望する学生さんや親御さんは、特設サイトから事前申し込みしていただき、定刻が近づくと機能するボタンをスワイプすることによって、ビデオ通話アプリ(Teams)が起動し、相談窓口に入れるように設定しました。その結果、学生さん16名と保護者1名が参加されました。質問内容としては、大学での研究について、高校の勉強と大学の勉強の接合について、大学の定期試験について、文学部で取得できる資格・免許について、平和学習について、教養教育・専門教育について、研修旅行について、卒業論文のテーマについて、文学部で学んだことが就職に生かせるかについて、コロナの影響について、留学について、オンライン授業について、図書館について,総合型選抜II型の課題図書に対する準備方法について(これについては返答しませんでした)、教員の研究内容について、などでした。おかげさまで通信トラブルもなく、無事に終了することができました。ご協力いただきました皆様にお礼申し上げます。最後に感想として、例年の対面による相談会より参加者数も多く、まちがいなく活発に質問が出たと思います。

  受験生は今年の受験に対して強い不安を持っているのかもしれません。またオンラインの方が対面より質問しやすいのかもしれません。コロナ収束後にも、オンラインによる相談会は継続しても良いのではないかと感じました。

  今回のオープンキャンパスのために所属コースの動画作成を担当した伊藤扶桑さんから感想をいただきましたので、紹介します。

○哲学・思想文化学コース(インド哲学・仏教学分野)学部4年 伊藤 扶桑

   私は本年度の広島大学オープンキャンパスでコース紹介の動画を作成しました。動画を作成するにあたって、閲覧者はコースごとにどのような研究をしているのかが不明瞭だろうと考えました。そのため、どのような研究をしているのかの具体例を挙げ、それに関する画像を挙げることで、コースでは何を学ぶのかをよりイメージしやすくなってもらえるように工夫しました。

  今年のオープンキャンパスはCOVID-19の影響でオンラインでの開催でした。特設ページを拝見すると、とても工夫された作りになっていました。他コースの紹介動画も充実した内容になっており、どれも力作ばかりでした。オンラインでは、あとで見返すこともでき、かつ要点がまとめられている動画が容易に手に入れることができるようになっており、今年ならではの特色が活かせていたのではないかと感じました。

  現在私が受講している講義は全てオンラインで行なわれています。講義をオンラインで受講することに不安を感じていましたが、先生方が柔軟に対応して丁寧に教えてくださるおかげで不自由なく受講することができています。先生方も新しい講義形式は慣れなかったと思いますが、苦戦しながらもオンラインならではの工夫された講義展開をされていました。これからの大学生活がどのようになるかはわかりませんが、先生方を見習って柔軟に対応していきたいと思います。

日本・中国文学語学コースの紹介動画の一場面

歴史学コースの紹介動画の一場面

3.人文学プログラム・文学部のオリジナル組織“就学相談室”【相談員 熊井博美】

  文学部長室の向かい側にある一室。そこが広島大学内でも“人文学プログラム・文学部にしかない就学相談室”です。歴代の室長、室員でいらっしゃった先生方のご尽力のおかげで、その機能や活動の幅を広げながら、様々な学生さんが目的に合わせて利用する組織に成長してきました。
  令和2年度からは、室長 川島優子教授(中国文学語学)、室員 大野英志教授(英米文学語学)、熊井博美相談員(専任)の3人がチームを組み、人文学プログラム・文学部生にメリットのある組織を目指し活動しています。

二本柱 [個別面談]と[進路・就職支援のためのリテラアワー講座]

  就学相談室の大きな取り組みは以下の「個別面談」と「リテラアワー講座」です。特に、進路選択や就職活動に関しては、この二つの柱は相互に補い合っています。講座の疑問点やもっと深めたいことなど個別面談で一緒に考えていきます。一方、面談で学生さんの意見等を吸い上げて講座に反映させていきます。二本柱を効果的に機能させていけるのも“就学相談室ならでは”と言えるでしょう。

■個別面談  

  学生生活の悩み、進路・就職(公務員・教員・企業など)についての相談やアドバイスなど多岐にわたって対応しています。

熊井相談員

モットーその1:一人ひとりに寄り添って
 一度に就活、学業、心身の不調など、複数の悩みを抱えて来談するケースもあります。また、相談内容が学生生活から進路選択、就活へと移行していくケースも多くあります。個々の気持ちを受けとめ、個性や特徴、また学部の特性も踏まえながら、時々に合わせて支援の在り方を変化させていけることも就学相談室の強みです。 
        
モットーその2:連携を大切に
  学生さんの心身の状態を一番に考え、状況によっては本人の了解を得た上で保健管理センターなど学内の専門部門に繋げる役割も担います。また就活では、情報収集先として卒業生と繋ぐこともあります。様々な部門等との連携を大切にしながら、相談室として今何がベストな支援なのかを常に考えることを心がけています。

モットーその3:教職員の皆さんと共に…
  教職員の方から心配な学生さんについて相談をいただくことがあります。メインの相談に見通しがつくと、お仕事でお困りのことなども話され、その後すっきりした面持ちで部屋を後にされることもあります。教職員の皆さんの利用があるのも“就学相談室らしさ”なのかもしれません。

■リテラアワー講座

リテラアワー講座 動画配信の一場面

  進路選択や就職活動に関する情報や実践の機会を提供する文学部独自の講座を、年間15回程度開催しています。例えば、自己分析や応募書類作成の仕方、面接対策といった実践的なものから、アルバイトにも関係する労働法を学ぶ講座やコミュニケーションにも活かせるマナー講座といった学生生活に役立つものもあります。
  各講座は外部機関の協力を得て実施します。打合せを念入りに行い、個別面談で得られた学生さんの傾向や学部の特性を踏まえながら、内容を詰めていきます。また、就活を始める3年生や修士1年生のみならず、将来のことを早めに考えたい、準備したい1・2年生も自由に参加できます。

コロナ禍での就学相談室

  これまでの対面形式に代わって、この春からは、WEB面談と動画配信で対応しています。WEB面談は、県外滞在中でも利用でき、インターネット予約も可能といった利便性の高さがあるようです。一方リテラアワー講座は、視聴数の伸び悩みという状態に苦慮しています。また、動画配信の特性上、今年度はやむなく実施を見合わせる講座もあります。しかし、「必要な時期に必要な講座の提供」を重視して配信していますので、メルマガをご覧になっている皆さん、周りにいる3年生や修士1年生に積極的な視聴を勧めていただければ幸いです。
  不安材料の多い昨今ですが、卒業するときに、「いろんなことがあったけれど、広大で学んでよかった」と感じてもらえるよう、就学相談室として学生の皆さんが安心して社会への一歩を踏み出していける支援をこれからも行っていきます。

4.文学部ニュース

○大学院人間社会科学研究科 安嶋紀昭教授(文化財学分野)が「西明寺国宝本堂内陣柱絵」を新発見しました。

※ 詳細は文学部HPをご覧ください。

○リテラ「21世紀の人文学」講座2020を開催します。
【テーマ】敗戦後75年:広島から「日本とアジア」を振り返る
【 日 時 】2020年12月5日(土)13:30~16:40
【 会 場 】合人社ウェンディひと・まちプラザ(まちづくり市民交流プラザ)
               北棟5階 研修室A・B(広島市中区袋町6番36号)

※ 詳細は文学部HPをご覧ください。

5.広報委員会より【広報委員会委員 劉 金鵬】

  昨年文化功労者の顕彰を受けられた小林芳規先生のご講義は、残念ならが拝聴できませんでした。角筆は専用のスコープを使わないとなかなかその存在が気づかれないようですが、いったんそれが発見されると、漢字文化圏のみならず、バイブルやコーランにも通じる世界が広がっていくと自分なりに勉強しました。本当にワクワクさせられるお話です。

  長い間続いた安倍政権が終わり、新内閣は「デジタル化」に力を入れると宣言しました。目に見えない新型コロナウイルスは「一助」になったといえるかもしれません。オープンキャンパスはHU Premium Dayへアップグレードできたことには、皆様の努力は欠かせないと感じています。最近、「これからの大学の形」というフレーズをよく提起されるような気がしますが、今大学にいる人と、これから大学に入る人、みんな慣れていくと作っていく道のりそのものこそ、未来の形ではないでしょうか。

  告白しますと、“就学相談室”は文学部のオリジナル組織とは、本号の記事を読んで初めて知りました。廊下で会うとき、いつも優しくあいさつしてくださる熊井相談員は、きっと多くの学生に頼りにされていると思います。

  また、西明寺国宝本堂内陣柱絵の新発見と「21世紀の人文学」講座など、文学部ニュースは少しずつ賑やかさを取り戻しています。11月のホームカミングデーもどのように進化を成し遂げるか、どうぞお楽しみください。

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リテラ友の会・メールマガジン

オーナー:広島大学文学部長  友澤和夫
編集長:広報委員長  末永高康
発行:広報委員会

広島大学文学部に関するご意見・ご要望、
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下記にお願いいたします。
広島大学人文社会科学系支援室(文学)/情報企画室
電話 (082)424-4395
FAX (082)424-0315
電子メール bun-koho@office.hiroshima-u.ac.jp

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