メールマガジン No.12(2006年10月号)

リテラ友の会 メールマガジン No.12(2006年10月号)
2006/10/4 広島大学大学院文学研究科・文学部

□□目次□□
1.文学研究科・文学部主催の公開講座を開催します
2.今月のコラム(文学研究科教授 山内廣隆)
3.広報・社会連携委員会より

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【1.文学研究科・文学部主催の公開講座を開催します】

 「21世紀の人文学」講座もお陰様で3年目を迎えました。
今年も下記の要領で開催しますので、ぜひご出席をお願いします。今年は定員の関係で申し込み方法がこれまでと異なりますので、ご注意下さい。

 今年は現場に立って、実際に物を見て観察し、そして考えるフィールドワーク型の文化学の世界を、考古学、文化財学、地理学の研究者が紹介します。毎回、講演の後に、研究者が直接説明する現地見学をセットしているのが特徴です。この機会に広島の文化への理解を深めて下さい。

「21世紀の人文学」講座2006

 「フィールド文化学への招待—遺跡・文化財・景観」

広島市中央公民館と共催

日時:11月11日(土)・18日(土)・23日(木・勤労感謝の日)

講演:13:00〜15:30 
   講演会終了後、各回とも徒歩による現地見学30分〜1時間程度

会場:第1回と第2回は広島市中央公民館、
   第3回は広島大学東千田校舎

資料代:1000円

定員:50名(申し込み多数の場合は抽選)

申し込み締め切り:10月25日(水)

申し込み方法:往復はがきに、住所、氏名、電話番号を記入して下記までお送り下さい(1人1枚)。リテラ友の会会員の方はその旨も併記して下さい。
   10月25日当日消印有効。

送り先:〒739-8522 東広島市鏡山1-2-3 広島大学大学院文学研究科
 「21世紀の人文学」講座2006 担当 宛

【プログラム】
第1回 11月11日(土) 「考古の世界-遺跡と文化」
 野島 永(文学研究科助教授)
「広島湾岸における弥生社会のはじまりとその展開」
 古瀬清秀(文学研究科教授)
「毛利氏の兄弟、吉川元春と小早川隆景の鉄作り」 
 ★現地見学 広島城周辺の遺構発掘現場を見る

第2回 11月18日(土) 「文化財の世界-仏教絵画と古建築」
 安嶋紀昭(文学研究科教授)
「平安仏画の世界-釈迦の涅槃」
 三浦正幸(文学研究科教授)
「近世城郭の見方-広島県内の城を中心に」
 ★現地見学 広島城跡をめぐる

第3回 11月23日(木) 「文化景観の世界-地域と文化」
 岡橋秀典(文学研究科教授)
「文化景観と地域づくりー日本とヨーロッパ」
 熊原康博(総合博物館助手)
「景観の基礎としての地表のなりたちー太田川がつくる地形を探る−」
 ★現地見学 太田川デルタの地形と景観を探る(広島市中心部)

会場:第1回・第2回 広島市中央公民館 広島市中区西白島町24番36号
          アストラムライン 城北駅下車 徒歩3分 
          市内バス 広島バス23号線及び23−1号線 
               西白島下車 徒歩3分
   第3回 広島大学東千田キャンパス 講義室広島市中区東千田町1-1-89
       市内電車 宇品行き(1番)日赤病院前下車

   *会場には駐車場はありませんので、公共交通機関をご利用ください。

【問い合わせ先】
    広島大学大学院文学研究科 
    〒739-8522 東広島市鏡山1-2-3 TEL:082-424-6604

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【2.今月のコラム】

「みんな最初は詩人だった」
応用倫理・哲学講座 教授 山内廣隆

 いまではそれほどでもないが、かつて僕は吉本隆明がすきだった。でも、吉本よりは埴谷雄高がすきだった。いまではすっかり忘れかけている『死霊』を必死に読んだ。でも、埴谷よりはずっと高橋和巳がすきだった。昔はなにからなにまで彼を真似てみたが、いまではすっかり憎んでさえいる。かつて撞着したことが恥ずかしい。そういうわけで、いまでも忘れられないのは吉本だけである。

 でも、吉本のどこに惹かれたのだろうか。『共同幻想論』なども読んだけれども、僕がすきだったのはなんといっても最初期の『エリアンの手記と詩』だった。主人公エリアンとイザベル・オト先生と(美)少女ミリカの三角関係が織りなす悲劇。エリアンは自殺をこころみるが失敗し、やがて都を去っていく。これはけっして作り話などではなく吉本の実体験である、と僕は確信していた。

このような古い記憶を呼び覚ましてくれたのは、鮎川信夫のある文章であった。彼は吉本の原点をこの作品に見ていた。そういえば三十七年前、僕はこの作品を原稿用紙に書き写し、つねに持ち歩いていたのだ。この頃は、『転向論』も『共同幻想論』もこの作品の脚注であると考えていた。そしていまでも、最近の『最後の親鸞』だってそうではないかと夢想する。

詩人はエリアンから思想家となり、膨大な著作を残した。僕もエリアンから哲学研究者となった。だれもエリアンのままではいられないのだ。しかし、幾重もの経験という襞に隠されたエ(イ)リアンを、だれもが心の奥深くしまい込んでいるらしい。それは思いもよらぬとき、ゴソゴソ現われ出てきたりする。それがおもしろくもあり、おそろしくもある。(2006年夏)

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【3.広報・社会連携委員会より 中村 裕英】

 今年から所属が総合科学部から文学研究科に変更になり、広報・社会連携の委員をして います。専門はシェイクスピアの演劇と彼の映画作品の研究です。
 最近の文学理論を利用したり、あるいは逆に、当時の文書と比較したりして、何とか現代的な解釈を探求していますが、社会との関わりは失わないように、某文化センターでシェイクスピア劇を人生経験豊かな紳士、淑女たちと読んでいます。学生と読む時とはまた違った観点 から台詞が読めてくるので、やはり文学はさまざまな経験を積んだ後で読む方がおもしろいな、と感じています。そういうときに出会った台詞を一つご紹介します。これは受講生もかなり気に入った台詞でした。
"Sirrah, young gamester, your father were a fool / To give thee all,
 and in his waning age / Set foot under thy table.”です。
昔の言葉なので you がthee(目的格)、thy(所有格)となっていますが、意味は、「おい、遊び人。お前の親父さんは、お前に財産全部やって、老いゆく我が身をお前に養ってもらうほど、バカじゃないぞ。」(『じゃじゃ馬馴らし』、二幕一場)ぐらいの意味です。遊び人と言われているのは、金持ちの娘と結婚するために、自分の提供できる財産を水増ししている求婚者(実は、主人に変装している従者) なのですが、金の出所が父親の懐なのです。詳しくは紹介できませんが、ここで言いたいのは、400年前も、「老人はお金を自分の身から離してはならない」ということが、一つの真理としてその時代にも共有されているということです。出席している受講者の皆さんがまさに実感していることが書かれていたので、皆、大笑いでした。

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リテラ友の会・メールマガジン
オーナー:広島大学大学院文学研究科長 岸田裕之
編集長:広報・社会連携委員長 岡橋秀典
発行:広報・社会連携委員会
 
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