メールマガジン No.14(2007年2月号)

リテラ友の会 メールマガジン No.14(2007年2月号)
2007/2/8 広島大学大学院文学研究科・文学部

□□目次□□
1.文学研究科主催「リテラ バレンタインコンサート」
2.今月のコラム(文学研究科教授 井内太郎)
3.文学研究科(文学部)ニュース
4.広報・社会連携委員会より

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【1.文学研究科主催「リテラ バレンタインコンサート」】

 2月2日(金)午後6時30分から、広島大学西条キャンパス内サタケメモリアルホールで文学研究科主催「リテラバレンタインコンサート」が開催されました。一昨年の「ニューイヤー・コンサート」、昨年の「クリスマス・コンサート」に続き第3弾。広島交響楽団の演奏で今回は前回2回とは趣きをかえ「フルート四重奏」(フルート・ヴァイオリン・ビオラ・チェロ)で「愛」をテーマに演奏していただきました。

 「まわりにマングースやみねくんが見えた。」というのは、8歳の女の子の感想。テレビ番組をご存知ではない方は、「??????」と思われることでしょう。しかし、番組をご覧になった方なら、この女の子が広響の皆さんが奏でる『ラプソディ・イン・ブルー』を聴いて「のだめ扮するマングース」が舞台で踊り、峰君がヴァイオリンを弾いているように感じたのだとお分かりでしょう。実に子供さんの感受性は素直ですね。と、言う私も『亡き王女のためのパバーヌ』では印象派の絵画を鑑賞している気分になり、『フルート四重奏曲第1番ニ長調K.285』では、フルート奏者の中村めぐみさんが奏でるフルートの美しい音色に魅了され、『リベルタンゴ』ではチェロを弾くヨー・ヨー・マの姿を思い浮かべながら聴き、『ジュ・トゥ・ヴ』ではフランスのカフェで読書をしている自分を想像し、『情熱大陸』ではヴァイオリン奏者・石井郁子さんに「カッコいい〜!」と感嘆し…なんと、贅沢な気分を味わったことでしょう。

 アンケートを読んでみるとこのような気分を味わったのは、会場にお越し頂いた皆様も同様だったようで、企画に携わった者としては、大変うれしく思っております。このすばらしい演奏とハーモニーを奏でてくださった広響の皆様には、厚くお礼を申し上げたいと思います。 次回の「リテラコンサート」をどうぞお楽しみに!
                (広報・社会連携委員会 山本 庸子)

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【2.今月のコラム】

「イギリス料理はおいしい」
歴史文化学講座 教授 井内太郎(イギリス史)

 西洋史を専門とし、イギリスに滞在した経験のある少しご年配の先生方と談笑する際にイギリス生活の苦労話になると、必ずといってよいほど日々の食事に苦労したことや、いかにイギリス料理がまずいかということに話がおよぶ。確かに第二次大戦後の食生活事情についてみると、イギリスでは1950年代半ばまで戦時中からの食糧配給制度が継続ていたことはあまり知られていない。それ以降も、食料品の自由な選択の幅が広がったものの、「質」の問題は置いてきぼりになっていた。特に野菜事情はひどく、緑ものといえばキャベツか芽キャベツ、ニンジン、グリーンピースくらいしかなかったことからも、料理の質が知れようというものである。今でもイギリスの家庭に食事のお呼ばれがあったときに、その家庭に伝わる伝統料理として、煮つぶしたキャベツが出てくることがあるが、私などは談笑の合間にそれをワインといっしょに胃に流し込むのである。

 しかしながら、1980年代後半頃からイギリスを訪ねるようになった私にとって、イギリス料理は違和感がないどころか、結構そのおいしさを楽しんでいるのである。ただ、ここでいうイギリス料理とはEnglish or British cuisineだけでなくイギリス国内の様々なエスニック料理を含めたものを意味している。私が初めてイギリスに渡った時に不思議に思ったのは、English cuisineは国内のどこでもほぼ同じものが出てきて地域差が無く単調なことである。つまり「京料理」「琉球料理」「広島風お好み焼き」のような、それぞれの土地自慢の郷土料理のようなものが全くといってよいほど無いのである。したがって、旅行の土産に名物食品を買って帰るという日本人の習慣もここでは成立しないことになる。それだけ見ればイギリス料理はまずくて単調ということになるのかもしれないが、現在イギリスは複合民族国家であり、それぞれの民族がエスニック料理をもち、イギリスの食生活をつくっているのである。

 いつ頃からイギリス料理がエスニック料理の集合体になったのか考えることは、おもしろそうである。最も早くイギリスの食生活に影響を与えたのが、中華料理とインド料理であることはよく知られている。しかしながら、より注目されるのは以下の2つの出来事であろう。1960年は「アフリカの年」と呼ばれるが、独立後の旧英領植民地から経済的困窮を逃れる人々がアフリカから本国に移住し、70年代に入ると中国人やインド・パキスタン系の人々が目立つようになり、それぞれのエスニック・コミュニティを形成していった。さらに重要なのは1973年にイギリスがEC(欧州共同体)に加盟したことである。これによって南ヨーロッパの野菜や地中海産の果物の流入が容易となり、街角の屋台に並ぶ野菜や果物が一変したのである。またこの頃から中華料理やカレーの「持ち帰り」の店が急増し始める。女性の社会進出が本格化していく中で、この手軽で安価でおいしい調理済み食品は、彼女たちの主婦業の軽減に大いに貢献するものであったといえよう。ロンドンのギリシア料理店といえば、日本人の間でも人気の高い料理店だが、これらの店の多くは、厳密にいえばキプロス出身者により経営されている。というのも1974年に旧英領植民地であったキプロス島内でトルコ系とギリシア系住民による民族紛争が激化したため、両派のキプロス人がそれを逃れてロンドンに移住したのである。

 このように考えてみると、美味しいイギリス料理への転換点は1970年代初め頃にあったといってよいであろう。私がロンドン市に到着してまず執り行う儀式は、行きつけのインド料理店を訪れチキン・マサラとシシケバブの本場の味を堪能することであるが、同時にかつての大英帝国に思いを馳せないわけにはいかないのである。

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【3.文学研究科(文学部)ニュース】

 文学研究科で学ぶ学生の受賞ニュースが報告されました。今後さらなる活躍を期待いたします。

* 文学部3年・重松恵梨さんがINUヘンリーフォング賞

* とくしま文学賞で大学院生の大西永昭さんが最優秀賞受賞

* 2006年留学生文学賞で大学院生レオン ユット モイさんが奨励作品賞を受賞

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【4.広報・社会連携委員会より 妹尾 好信】

 暦の上ではもう春になっているとは言え、まだ二月中旬、一年中でいちばん寒い季節のはず。しかし、今年は歴史的な暖冬になりそうです。南国育ちで寒さには弱いので、暖かいのは嬉しいのですが、これも地球温暖化の影響かと思うと何やらそら恐ろしい気がします。

 地球環境のことも深刻な問題ですが、昨今の社会情勢を見ると、我々は子供たちや若い人たちに健康で安全に暮らすことのできる未来を残すことができるのか、本当に心配でなりません。

 広島大学文学部・大学院文学研究科も、先人たちが培って下さった歴史と伝統の上に乗っかってレベルの高い研究や教育をすることができています。私たちはこの歴史と伝統を次の世代に引き継ぐ責務があります。しかしながら、実利や経済的効率のみを重んじる社会の趨勢や、少子化の影響などで、文学部・文学研究科の学問の次世代への継承はなかなか厳しくなりつつあるのが現状です。

 文学部・文学研究科の教育・研究活動について、少しでも多くの方々に知っていただいて、人文学という学問が時代を超えて大切であることを理解していただき、次の世代を担う優秀な人材が文学部・文学研究科に目を向けて下さることを願いながら、これからも広報・社会連携委員会の活動を続けていきたいと思っています。

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リテラ友の会・メールマガジン
オーナー:広島大学大学院文学研究科長 岸田裕之
編集長:広報・社会連携委員長 岡橋秀典
発行:広報・社会連携委員会
 
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