メールマガジン No.18(2007年7月号)

リテラ友の会 メールマガジン No.18(2007年7月号)
2007/7/25 広島大学大学院文学研究科・文学部

□□目次□□
1.コラム / 新任教員特集 (文学研究科教授 河西 英通 / 准教授 本多 博之)
2.文学研究科(文学部)ニュース
3.広報・社会連携委員会より

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【1.新任教員特集】
 文学研究科では、4月に6人の教員が着任いたしました。
今号から3回にわたって、2人ずつ新任教員のコラムを掲載いたします。

○『なぜ広島に来たのか』
総合人間学講座 教授 河西 英通                      

   見た目ほど若くはない、住み慣れた家もある、ずっと近代東北史をやってきた、いまさら何をめざして、西国へ行くのか。日本の大学はどこも危機的状況にあり、不愉快なことも多い。騙し騙しその日を送ればいいではないか。小市民らしく家族との団欒を大事にすればよいではないか。「研究が行き詰まったからでしょう」とギョッとするようなことを言う同僚もいた。でも自覚症状はない。なぜ私は広島に来たのか?

 元来の専門は日本近代史だが、長年、どうも居心地が悪かった。理由ははっきりしている。近代東北史が日本史のなかで占める位置がきわめて低かったからである。最近でこそ何人か若い研究者が生まれてきたが、首都圏や近畿圏の分厚い近代史研究の層に較べると、なんと薄っぺらなことか。それでも、「近代日本において東北はいかに語られ、描かれてきたか」ということにこだわってきた。残り時間はそう多くない。いまさら、テーマをかえる余裕はない。わき目も振らず、である。

 その残り少なさがある日、私にこうささやいた。「視点を変えてみたら・・・」それもそうだ。東北を語り描いたのはなにも東北だけではない。否、むしろ外から「東北」は形象されつづけてきた。尾道の少女時代、林芙美子も異域東北に奇妙奇天烈な想いを寄せていたではないか。西南からみたら東北はどう見えるか。これはやるに値する。私の東北三部作はおそらくここで完結するだろう(『東北』『続・東北』は既刊)。

 しかし、思い起こせば、北国育ちの私が広島までやってきた理由らしきものがないわけではない。広島にまったく無縁だったというわけではないのだ。私事だが、亡父がひょっとしたら広島高師のお世話になっていたかもしれないのである。1945年春、父は最期まで志願先を広島にするか東京にするか迷ったらしい。結局、東京にしたのだが、生前、受験シーズンや8月になると、必ず、「オレが広島に行っていれば、オマエはこの世にいなかった」と言い聞かされたものである。こうした台詞が飛び交った家庭は全国各地に見られたことだろうが、ともあれ、私はこういう形で子どもの頃から広島と向き合ってきたといえる。偶然にも私は生を受けた。そのことの意味をここ「自由で平和な一つの大学」でしっかり考え抜いてみたい。そして願わくば、比較日本文化学の地平から、全世界を、自由で平和な全世界を獲得したいものである。

○『石見銀山の世界遺産登録の報に接して』
歴史文化学講座 准教授 本多 博之

  広島で生まれ育ちましたが、仕事の関係で一時九州・福岡で生活し、ふるさとを外から眺めたことが良い経験になっています。最初の職場は、国宝金印「漢委奴国王」を所蔵する博物館で、その彫りの見事さと、小さいながらもずっしりとした重さをいまだに覚えております。その後、私立・公立の大学を経て本学に参りました。専門は日本中世史で、室町〜織豊期の社会経済の歴史的展開や大名権力の権力編成・領国支配について研究しています。ここ数年は、貨幣流通の実態を明らかにすることで日本独自の土地制度であり社会制度である「石高制」の成立過程について検討してきました。また、石見銀山を取り巻く諸問題や、安芸厳島の歴史や文化についても、現地調査を交えながら研究を進めているところです。

 さて、昨日(6月28日)、石見銀山の世界遺産登録の情報が飛び込んできました。ここ数年石見銀山をテーマとする科研メンバーの一人として現地を訪ねることが多く、教育・研究者だけでなく、登録申請や情報発信、そして観光案内など銀山に関わる様々な分野で活動する多くの人々を見てきただけに、イコモスの延期勧告を覆しての登録決定の知らせは、自分のことのように嬉しく思い、早速関係する知人にお祝いメールを送りました。石見銀山の情報発信や観光面における一般市民の取り組みには学ぶべき点が多く、世界遺産では先輩格の厳島(正式登録名称は「厳島神社」)を守っていくべき立場の我々広島県民も、大いに参考にする必要があると思います。

 石見銀山が世界的に知られた16世紀後半、実は厳島神社と石見銀山は密接な関係を持っていました。そうした歴史性をふまえつつ、世界遺産である石見銀山と厳島を結ぶ新たな観光ルートの開発など、県域を越えた交流が地域への活性化にもつながると思います。経済的な活性化は専門外ですが、過去の人々の活力ある生き様を明らかにし、それを広く社会に発信することで、人や地域がこれから目指すべき方向性を探っていく上での素材を提供できればと思っております。どうか、よろしくお願いします。

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【2.文学研究科(文学部)ニュース】

○「日本文化と造形芸術」展 開催のお知らせ(2007年10月9日〜10月26日)

○広島大学オープンキャンパス開催のお知らせ
広島大学オープンキャンパス2007が、8月2〜3日の間、東広島キャンパス、霞キャ
ンパス、東千田キャンパスで開催されます。
 個人の参加も自由です。各学部の雰囲気を味わい、大学生活を「実感」してみて
ください!

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【3.広報・社会連携委員会より】

「日本文化と造形芸術」展について

 文学研究科では「日本文化と造形芸術」展を今秋,10月9日(火)〜10月26日(金)正午まで東広島キャンパスの文学研究科,中央図書館,総合博物館一帯で開催いたします。
 広島大学大学院文学研究科には,美術・工芸品や文献史料をはじめ,世界各地から集められた数多くの人文科学関係資料が所蔵されています。しかし一般にはなかなか目に触れる機会のないものが多く,これらの資料をどのように見ていただけるかと考えていましたところか,これらの研究資料・資源に表現された造形表現に惹きつけられました。そこには様々な文様,動植物が生き生きと表現されています。時間,時代を超えた人間の営みの中で古代,中世,近世,現代に亘りこれら資料を俯瞰し,現代美術作品と対照することによる試みを提案しました。

 この展覧会の概要が固まるまでの過程で多くのご意見をいただきました。そして,彫刻,インスタレーション,平面,染織からアニメーションまで様々なジャンルに亘る現代美術作家の協力を得ることができました。展示物を鑑賞していただくだけでなく,スタッフと参加作家によるギャラリー・トーク等を予定していますので準備過程を含め,様々な出会いを楽しんでいただければと思っています。ホーム・ページも開設し,準備状況から見ていただこうと思っています。
 まだまだ準備段階ではありますが,この展覧会を通じ一つでも素晴らしい出会いがありますように,心から願っています。

「日本文化と造形芸術」展実行委員会事務局  近藤 博明

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オーナー:広島大学大学院文学研究科長  富永一登
編集長:広報・社会連携委員長  岡橋秀典
発行:広報・社会連携委員会

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