リテラ友の会 メールマガジン No.23(2008年3月号)
2008/3/21 広島大学大学院文学研究科・文学部
□□目次□□
1.平成19年度卒業論文発表会
2.文学研究科(文学部)退職教員あいさつ(文学研究科教授 植木 研介、教授 近藤 良樹)
3. 文学研究科(文学部)ニュース
4.広報・社会連携委員会より
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【1.平成19年度卒業論文発表会】
2008年2月26日(火)、広島大学文学部大講義室(リテラ)におきまして、「平成19年度優秀卒業論文発表会」が開催されました。
今回のメールマガジンでは、その中から歴史学コースの 白井康太さんと地理学・考古学・文化財学コースの吉武幹雄さんのお二人の卒業論文の要旨を紹介させていただきます。また、指導教員からも一言添えていただきました。
○「明清時代における海港都市厦門の形成とそのネットワーク」
歴史学コース東洋史学専攻4年 白井康太
中国史における明清時代、とくに16世紀後半から18世紀前半にかけて、中国福建の海港都市厦門(現福建省厦門市)がどのように形成され、また他地域とどのようなネットワークを有していたか、この二点が私の卒論で扱った内容である。その際、歴史学の一般的なアプローチである一国中心的な視点ではなく、世界史的、つまり中国だけにとらわれない広範な視点を持つことを心がけた。まず第一章では、海港都市厦門が海賊など様々な要因に大きく影響を受けながら、清代において貿易港として飛躍的な発展を遂げたことを明らかにした。つぎに第二章では、厦門が台湾・日本・東南アジアとグローバルな多元ネットワークを形成していたことを考察した。厦門は海のネットワークによって発展した都市であり、こうした海港都市では、人々は強く海洋に依存していたのである。
〔指導教員のコメント〕(岡 元司准教授)
白井君は、たいへん読書好きな学生さんで、専門の中国史だけでなく、日本史・西洋史など幅広く歴史の本を読み、そうした中で、近年の歴史学でホットなテーマとなっている「海域史」に関心を抱いたようです。3年生の時には、私自身が中国浙江省でおこなっている墓群現地調査に自費で参加したり、また4年生の時には卒論で対象とした厦門に実際に足を運ぶなどして、学部生でありながら中国沿海地域の現地感覚も踏まえた卒論を仕上げました。優秀卒論発表会で多くのかたからご意見いただけましたことは、たいへんありがたいことで、今後の2年間で、さらに深めてくれるものと期待しています。
○「古墳出土の轡(くつわ)から見た古代馬の研究」
地理学・考古学・文化財学コース考古学専攻4年 吉武幹雄
本論文は古墳から出土した轡の銜(はみ)の考古学的検討から、古墳時代における馬の体高を復元しようとするものである。
まず、銜幅と体高との相関関係を明らかにするため、現在飼養されている在来馬のうち、もっとも小型である野間馬(体高1045mm・銜幅100mm)から軽種馬の代表であるサラブレッド(体高1600mm・銜幅140mm)の13種類28頭の体高と銜幅を計測した。その結果、馬の大型化に伴い、銜幅も比例することを確認した。
次に、中国・四国・九州の各地方の古墳から出土している轡64例を集成し、その銜幅を計測した。その結果、銜幅は93mm〜140mmに分布し、そのうち116〜130mmが全体の62%を占めたので、この数値が古墳時代における銜の普通サイズであると判断した。この銜幅を、現在飼養されている在来馬の使用する銜に対比させたところ、御崎馬、対州馬、木曽馬、北海道和種といった、体高1310〜1450mmの大きさの小型在来馬に相当することが明らかとなった。この体高は遺跡出土の馬骨から動物学的に復元した古代馬の大きさにもほぼ一致するものである。
したがって、考古学的な検証から、古墳時代馬は現在われわれが目にする馬とはずいぶん大きさの異なる小型馬であったと結論することができる。
〔指導教員のコメント〕(古瀬清秀教授)
吉武君はフェニックス入試で入学した学生であるが、体力勝負の考古学の発掘現場でも若い学生とともに汗を流し、「モノ」の観察が最重要の考古学において、卒論作成時には資料収集のために日本全国を飛び回った。その精進のおかげで、古墳時代より後の話ではあるが、なぜ義経が鵯越できたかを考古学的に明らかにしたことにもなる。つまり、小型馬だったがゆえに義経をして急坂を下ることも可能ならしめたのである。
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【2.文学研究科(文学部)退職教員あいさつ】
○退職者の言葉
表象文化学講座教授 植木研介
京都から戻って広島大学院に入学し,博士課程後期を単位取得退学の後,助手として3年間過ごしました。このときに広島大学に8年お世話になり,その後愛媛大学に8年半いたあとに,再び昭和58年10月から24年半の文学部,大学院文学研究科での勤務となりました。従って広島大学には院生として,教員として32年半を過ごしました。
研究のほうは筆の遅いたちで,やっと59歳で博士の学位を授与されました。その代わりというわけではないのですが,学生指導には熱を入れて向かい課程博士の学生16人を指導して学位を15名が取りました。論文博士も6名に達しています。優れた学生が集まってくれたお蔭と感謝しています。
広島大学の西条移転によって私は往復に3時間10分から30分かかるようになりました。これが私の体力を奪い,それまで続けていた読書会がもてなくなりました。学生諸君にはすまないことをしてしまったと思っています。西条と西広島の間の電車通勤でしたが,列車内でのうたた寝で乗り越した記録は,東は白市まで,西は柳井港まで行きました。
皆様にいろいろとご迷惑をかけたかと思います。心より御礼申し上げます。
○「人間万事塞翁が馬」でした
応用倫理・哲学講座教授 近藤良樹
文学部には16年いました。63年も生きていると、いろんなことを体験するものですが、どうも、「人間万事塞翁が馬」式で、よいことだと思っていたのに悪いことになり、悪いことが良いことになるといった非喜劇に出くわすことの多い人生でした。この西条キャンパスにしても、東千田のにぎやかな街から山奥に引っ越すのは文学部にはさみしいことと思っていたら、来てみると酒と水はまずいが静かないい自然のなか勉学には最適で、いいながめや大学のいい雰囲気に喜んでいたら、やっぱり広島市内でないと大学院に人が集まりにくいということになったりと、思いに現実が逆らい、チグハグな体験を繰り返した63年でした。この調子だと、長く生きても仕方がないと思っているので、現実はこれに逆らって、多くの名誉教授とともに無駄に長生きするのかもと案じることです。思いの反対になることの多い人生でした。お別れにあたり、こころより文学部の発展をお祈りいたします。
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【3. 文学研究科(文学部)ニュース】
○文学部玄関ロビー展示【楓文庫】のご案内
新入生へのお薦め図書として、文学部教員20人が推薦する図書を展示します。教員からの推薦文もあわせて紹介しています。お近くの会員の方は、是非足をお運びになってご覧ください。文学部のホームページでも、図書の詳細は掲載する予定です。こちらの方もご覧下さい。なお、展示は5月末までの予定です。
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【4.広報・社会連携委員会より 岡橋 秀典】
この3月で、広報・社会連携委員会委員長を退くことになりました。広島大学の独立行政法人化後の4年間、その前の広報・図書委員会時代を含めると7,8年にもなるでしょうか、ずいぶん長い間委員長として広報業務に携わらせていただいたものです。我ながら驚きですが、この間支えていただいた多くの皆様には、感謝の一語あるのみです。本委員会で特筆すべきは、通常の大学の委員会とは異なり、常に活発な議論がなされてきたことです。見方を変えれば、委員長がしゃべりすぎていただけのことですが(反省!)、結構楽しい議論ができたように思います。そして、委員会での発案の多くが実現されたことも委員の皆さんとともに大いに誇ってよいでしょう。
実は本メルマガもそうした委員会活動の成果です。正直、このメルマガがどれくらい読まれているかは不安ですが、たとえわずかな方でも喜んで読んでいただいていれば大変ありがたいことです。さらに本研究科の皆さんにも読んでいただき、学内コミュニケーションに役立っているとすれば、これもまたすばらしいことです。大学の広報・社会連携活動にはどうも王道はなさそうです。最近、委員長をやめることになって、やるべきことが次々思い浮かんできます。「リテラ友の会」の活性化もそのひとつです。メルマガ以外にたいした活動を展開できなかったことを深くお詫び申し上げます。次期委員長の下で新たな試みがなされることを期待しています。そして、「リテラ友の会」会員の皆さんにも文学部・文学研究科へのご支援を切にお願い申し上げます。
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オーナー:広島大学大学院文学研究科長 富永一登
編集長:広報・社会連携委員長 岡橋秀典
発行:広報・社会連携委員会
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