メールマガジン No.37(2010年5月号)

リテラ友の会 メールマガジン No.37(2010年5月号)
2010/5/20   広島大学大学院文学研究科・文学部

□□目次□□
1.新任教員挨拶
2.今月のコラム〜オーストラリア帰朝報告
3. 文学研究科(文学部)ニュース
4.広報・社会連携委員会より

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【1.新任教員挨拶 応用哲学・古典学講座教授 後藤弘志】

 このたび、さまざまな紆余曲折を経て、17年ぶりに広島大学に戻ってまいりました。この間、キャンパスも東千田町から東広島市に移り、文学部の組織も大きく変更されましたが、懐かしい母校であることには相違ありません。

 広島大学大学院在籍中より、ドイツ現代哲学の柱をなす現象学の創始者フッサールおける人格概念、とりわけ人格の習性という概念を研究の中心に据え、その後ドイツのトリア大学で学位を取得しました。現在は、フッサールにおける人格概念の一つの源を、当時の価値哲学の中に探る一方で、この概念の現代的意義について、生命倫理、情報倫理といった分野と関わらせつつ考察を進めています。

 ちなみに、モーゼル河畔の小都市トリアは、フッガー家で有名なアウグスブルクと並ぶ古都で、公式には、紀元前16年にローマ人によって拓かれ、紀元後293年から392年には西ローマ帝国の首都の一つでした。ラインガウアーに劣らぬ品質のモーゼルワインも、ローマ人がこの地に持ち込んだものです。また、かのカール・マルクスが生まれた町であることは、あまり知られていないでしょう(まして、マルクスの生家の面する通りがあやしげな歓楽街であることは、、、)。

 こうした数年間におよぶドイツ留学から得た経験と知識を支えに、研究者としても、そして一般社会人としても世界に通用する人材を育成すべく、微力ながら広島大学に貢献できればと考えております。学生諸君と同様に、長い目で見守っていただければ幸いです。

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【2.今月のコラム〜オーストラリア帰朝報告 応用哲学・古典学講座准教授 衛藤吉則】  

オーストラリア帰朝報告 

 ガムツリーが群生する赤茶けた広大な大地。滞在した町マウント・バーカー(南オーストラリア州アデレード市近郊)をはじめて訪れたとき、わたしの目に強烈に焼きつけられた風景です。

 この州は、日本とほぼ同じ子午線上にあるので時差はそれほどありません。しかし、南半球に位置づくため季節は真逆になります。先の帰国の際も、真夏のオーストラリアからもどってくると、なんと西条は雪が舞っていました。ここの気候は、じつは典型的な地中海性気候。夏の乾燥と冬場の長雨、それに日格差のおおきい気温変化は、十分、異国の気候を肌で感じさせてくれます。ただ、オゾンホールからふりそそぐ強烈な紫外線は予想していた以上にきびしく、皮膚ガンの発症率も高いため、帽子、サングラス、日焼け止めは子どもから大人まで必携品となっています。

 また、冒頭に紹介した自生するユーカリ系のガムの樹は、油分をおおく含み、夏場の乾燥で枝々がたがいにこすれ合うことで燃え、森をちからづよく再生していきます。アウトバックを走っていると、黒こげになった木々やそこから萌え出た新芽をよくみかけます。オーストラリアでの山火事がよく報道され、自然の猛威のようにいわれますが、自然からいえば本末転倒な解釈で、もともと、住むべきところでない場所に人間が入植してきたことが原因と思われます。この大地は、本来、わずかなアボリジニたちが自然の摂理にそってゆっくりと生きるにふさわしい土地だと感じます。

 物価は、オーストラリアドルが強いせいか、それほど割安ではありません。ただ、牛肉は質を別とすればたしかに安いです。ここアデレードの特産は、この気候・風土にあわせたワインが有名で、バロッサバレー産のあじわい深いシラツは飛行機の機内サービスで飲むことができます。めずらしいワインは赤のスパークリングで、地元では安価でおいしくいただけます。日用品も日本と同程度の物価なのですが、品質はわたしたち日本人には理解できないほど粗悪なものです。みかけではまったく分からないのですが、おおくの商品が購入してしばらくすると壊れるのです。冷蔵庫、電子レンジ、トースター、水撒き用のホース、インターフォン、シューズなどあげればきりがありません。夏場に買った中古車が雨のシーズンにはいると天井から雨もりしてきたときには驚きました。ただ、どの商品も領収書をもっていけば、丁寧に謝罪されたあと、すぐに新品をわたしてくれます(車も無償で修理してくれました)。あちらのひとに聞くと、壊れて当たり前なので領収書はぜったいにとっておきなさい、と奇妙なアドバイスをくれました。不思議な文化だと思う反面、日本人の丁寧な仕事をあらためて実感できました。

 最後に、この在外研究をおこなってよかったと思うことは、おおくのスピリチャルな出会いと気づきを得ることができた点です。わたしの当地での研究は今年度もつづきますが、このような貴重な研究の機会を認めてくださった先生方や支えてくださった事務局の方々にあらためて感謝申し上げます。
 昨年度のメールマガジン(2010年1月号)では、南オーストラリア大学の客員研究員としてわたしがおこなっている研究内容についてご紹介しましたので、今回は、アデレードでの生活について報告いたしました。

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【3. 文学研究科(文学部)ニュース】

○文学研究科・文学部主催公開講座
リテラ「21世紀の人文学」講座2010

テーマ  「龍馬の生きた時代の歴史と文学」
【日時】平成22年10月23日(土)13:30〜16:30
【場所】広島市まちづくり市民交流プラザ 研修室C
【内容】本研究科は2004年から「21世紀の人文学講座」を毎年開催し、広く市民参加型の公開講座として実績をあげてきた。今年度は、大河ドラマで話題の坂本龍馬が生きた時代を歴史的視点と文学的視点から読み解いていく。
【講師】広島大学文学研究科 教授 勝部 眞人
    広島大学文学研究科 教授 久保田 啓一
【対象】一般市民(高校生以上)
【受講料】無料   
申込等の詳細は、決まり次第お知らせいたします。

○サテライト展示1階ロビー【コレクション企画展示】のご案内

6月から「歴史・文学を彩る花物語」と題して展示いたします。
[展示内容]
・バラ戦争とテューダー・ローズ
・夏目漱石と「虞美人草」
・中世の大ハイデルベルク歌謡写本と野バラ(イヌイ薔薇) 

是非、近くにお越しの際は、ご覧下さい。
準備が出来次第、文学部HPでも展示の模様を掲載いたします。

○平成22年度(2010)広島大学オープンキャンパス
8月8日(日)〜8月10日(火)に 開催します。
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【4.広報・社会連携委員会より 広報・社会連携委員会委員長 井内太郎】

『母の日とカーネーション』
 このたび河西先生の後任として広報・社会連携委員長をつとめることになりましたので一言ご挨拶申し上げます。今後も、リテラマガジンを通じて文学研究科の知的営みの情報発信を行い、様々な企画を通じてリテラ友の会を盛り上げていきたいと思っています。

 さて、私は西洋史学を専門としておりますので、挨拶がてら5月にちなんで「母の日とカーネーション」についてお話ししてみたいと思います。みなさん、「母の日」はいつ頃から祝日になったかご存じですか。またなぜ「母の日」の贈り物はカーネーションなのでしょうか。考えてみたことがありますか。「母の日」は、アメリカ、イギリス、インドネシア、中国、韓国など、世界各地で祝日となっていますが、その由来や期日は一様ではありません。日本では1949年(昭和24年)頃から、アメリカに倣って5月の第二日曜日が「母に日」と定められました。したがって、日本の「母の日」の由来は、アメリカに求めることができます。

 今からほぼ100年前のアメリカにアンナ・ジャービスという女性がいました。1907年に彼女は2年前の5月に亡くなった母アンの命日にメソディスト教会で追悼記念式を開き、そこで生前母が好きだった白いカーネーションを参列者に手渡しました。母を深く愛していたアンナは、その後自分の母だけではなく、すべての母親に対して感謝する記念日を作ることを思いつき、支援者とともに運動を行ったのです。これが、「母の日」の由来ですが、理由はそれだけにとどまりません。母アンが生前、南北戦争時に「母の日仕事クラブ」を創設し、地域の女性とともに南北双方の兵士の看病を行い、双方の兵士や住民の交流を進める運動などの社会貢献を行っていたからこそ、アンナの母を祝う運動が当時多くの人々の共感を生んだといえるでしょう。そして1914年ついにアンナの「母の日」運動が実り、アメリカ議会で国民の祝日(5月の第二日曜日)として定められることになったのです。

  それから100年たった今でも、母親の子供に向ける愛情の深さに感謝し、母親の大切さを認識する日として「母の日」は世界中で祝われているのです。         

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リテラ友の会・メールマガジン

オーナー:広島大学大学院文学研究科長  山内廣隆
編集長:広報・社会連携委員長  井内太郎
発行:広報・社会連携委員会

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