メールマガジンNo.46(2011年11月号)

リテラ友の会 メールマガジン No.46(2011年11月号)
2011/11/25 広島大学大学院文学研究科・文学部
      
□□目次□□
1.東京イブニングセミナー
2.第9回「文藝学校」講演会報告
3. 第5回広島大学ホームカミングデー「世界とふれあう語学カフェ」リポート
4. 文学研究科外国人留学生懇親会リポート
5. 文学研究科(文学部)ニュース
6.広報・社会連携委員会より
  
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【1.東京イブニングセミナー 文学研究科長・山内廣隆 】
                           
 第39回東京イブニングセミナーに、講師として越智先生と二人で行ってきました。日時は11月18日夕方6時から9時。場所は広島大学東京オフィスが入っている、JR田町駅芝浦口キャンパス・イノベーションセンター。越智先生の演目が「信ずること」、私のは「哲学散歩―中国問題、テロリズム、核廃絶、地球環境問題を哲学的に考える―」でした。聴講予約者は定員を4名上回る64名。極めてめずらしいことらしいですが、1回目の募集で定員に達したそうです。
  
 私は10月に北大での講演予定があったので、そちらに力を注いでいました。その分、イブニングセミナーを少し軽く見ていたのですが、送られてきた聴講者名簿を見てびっくり。日本の第一線でリーダーとして活躍されている方が多数予約されていました。もちろん、その中には卒業生もおられましたが、そうでない方もかなりいらっしゃいました。私はセミナーの講演のためにネジを巻き直しました。
  
 私の講演は広島大学大学院文学研究科の紹介から始まりました。そのキーワードは「21世紀の人文学」です。基礎学である人文学には、本来20世紀も21世紀もないはずです。なのに、このキーワードを掲げるのは何故か。そういう話から始めました。とうとう文学部も「役に立つ」、「使える」人文学をめざし始めたかと言われかねません。文学部の「役に立つ」は世間と少々違うということを明確にするために、カントの『永遠平和のために』を使いました。そこでは哲学の働きは「明かり(理想)を掲げて貴婦人(国家・社会)を導く」ところにあります。これが人文学の「役に立つ」ということです。
  
 セミナーには、西洋哲学卒業生の永嶋(旧姓、紀中)恵美さんと、藤代裕之君も参加。二人とも作家とブログの帝王として現在大活躍中です。在学時にはすれ違った二人でしたが、二人でミニミニ同窓会を開いていました。なお、越智先生の講演が大好評であったことを申し添えておきます。
  
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【2.第9回「文藝学校」講演会報告 】
「文藝学校」講演会 世話人 妹尾好信 (日本・中国文学語学教授)
   
 10月29日(土)、広島大学大学院文学研究科・「本の学校」郁文塾主催の第9回「文藝学校」講演会が開催されました。前日までの天気予報は雨になっていましたが、見事にはずれて、朝から気持ちよく晴れ上がりました。名湯皆生温泉にほど近く、霊峰大山を望む今井ブックセンター「本の学校」2階の会場には、今年もほぼ満席の40数名の方々が集まってくださいました。今年で9回目となり、すっかり年中行事として定着してきた感があります。常連の方も少なくなく、一年ぶりの再会を喜び合う姿も見られました。
  
 第1回から共催していただき、会場を提供してくださっている今井書店グループからは、今年も、永井会長、今井社長はじめ今井書店、「本の学校」郁文塾関係者の方が多数参加してくださり、ゆきとどいたお世話していただきました。会長のご母堂や前塾長がお元気な姿を見せてくださったのもうれしいことでした。
  今年の講演題目と講師は以下の通りでした。
1.「フランス文学の名作を読む」松本陽正(広島大学大学院文学研究科教授)
2.「〈文学の街〉以前―今川了俊『道ゆきぶり』の「尾道」」藤川功和(市立尾道大学芸術文化学部准教授)
3.「日本文学に育てられて」位藤邦生(広島大学名誉教授・福山大学教授)
  
 松本先生は「文藝学校」の現校長のようなお立場で、ほぼ毎年ご講演になられるので、楽しみにしておられる受講者がたくさんいらっしゃいます。今年は、ヴェルコールの名作『海の沈黙』を採り上げて、フランス文学の魅力をたっぷり話してくださいました。日本語訳が十分に伝えきれないフランス語の微妙なニュアンスについてのお話などは、とても興味深いものでした。
  
 藤川先生は広島大学文学研究科のOBで、位藤先生の愛弟子にあたります。日本の中世文学がご専門なので、今回は、今川了俊が鎮西探題として九州に下向する旅を記した紀行文『道ゆきぶり』を採り上げて、南北朝時代の尾道周辺の様子を伝える文章を紹介してくださいました。それに加えて、今年没後60年になる林芙美子の名作『放浪記』の有名なくだり「海が見えた。海が見える」を、山陽本線の車中から撮影した尾道の映像を示して再現してくださった時には、会場にどよめきが上がりました。
  
 最後にご登場の位藤先生は、「文藝学校」の創設者で、初代校長先生です。豊富な経験に裏打ちされた蘊蓄と軽妙な話術で毎回聴衆を魅了され、位藤先生のご講演が目当てで毎年会場に来られる方も多いと聞きます。今回は、『源氏物語』に現れる手紙を紹介されながら、文学の面白さ、行間を読む楽しさ、その一方で離れられないある種の違和感などにお話が及び、満場の拍手の中で講演会は終了しました。
  
 来年は記念すべき第10回になります。これまでの伝統を大切にしつつ、何か新しい味付けができるといいなと思っています。たくさんのリピーターがいらっしゃって、来年もまた楽しみにしていますとおっしゃってくださるのはとてもありがたく、心強いのですが、ここ数年は受講者に若い人が少ないような気がします。願わくは現役の高校生にも聴いてほしい。来年は、ぜひ高校生にも足を運んでいただけるような講演会にしたいと考えています。       
              
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【3. 第5回広島大学ホームカミングデー「世界とふれあう語学カフェ」リポート】
  
 第5回広島大学祭ホームカミングデー文学研究科企画では、今年で6回目となる「世界とふれあい / 語学カフェ」を開催しました。今回は、韓国、中国(遼寧省)、トルコの留学生が協力してくださいました。
  
 韓国・李容哲さん、中国・沈衣さんお二人とも、初めてとは思えない慣れた様子で、ご自分の国の文化や習慣などの話しをして下さいました。今回、当初予定していたポルトガルの留学生が研究のため、急に担当できなくなってしまい、ポルトガルの話をを楽しみにしていただいていた皆さんには、大変申し訳ないことになってしまいました。しかし、急きょ代役で発表していただいたトルコの留学生・レベントさんは過去2回発表した経験があり、楽しい語り口調で会場をアットホームな雰囲気にしてくださいました。
 あいにくの雨模様にもかかわらず、会場は満員御礼の状態。お茶やお菓子を食べながら、終始和やかな雰囲気につつまれ、いつもの教室が小さな国際交流の場となった楽しい語学カフェでした。
 ここで発表をしていただいた留学生3人の感想を紹介します。
○李容哲(イ・ヨンチョル/韓国)
 【愛すれば見える】「(何かを)愛すれば分かって、分かったら見えるから、その時に見えるものは前とは同じではない」。 朝鮮時代のある文人のこの言葉を広島に留学してからずっと心の中で繰り返して感じっている。
  
 無関心だった韓国の文化や精神のことを日本に来て、ようやく向き合うことになった。また、本とか映像だけで触れた日本の言語と文化と社会を親切で温かい日本の人たちに出会って新しく学ぶことが多い。
  
 最初に『語学カフェ』で韓国を紹介するという話をもらった時、短い時間の中でどうやって、どのぐらい説明できるか不安になった。しかし、色々不十分な紹介だったけれど、わざわざ来ていただき、楽しんで聞いてくださった人々からたくさんの勇気を受けた。(特に韓服を着た私と一緒に写真を撮った岡山、福岡、山口からの方々に感謝します。) 今回参加したことは私にも大きな光栄で、よい経験だった。
  
 韓国の文化をひとつの単語で表現すると「人情」ともいえる。韓流ブームで日本の多くの人々が旅行やマスコミを通じて韓国に会っているが、広島大学の学友たちも近い国=韓国について多くの関心と交流があることを期待している。
  
○沈 依(シン イ/中国・遼寧省)
 今回大学祭をきっかけで、文学部の『語学カフェ』に参加できるチャンスをくださり、心から感謝を表します。もうそろそろ卒業する自分にとっては、これが留学生活の最高の記念だと思っているからです。
  
 わくわくしながら準備をし始めると、ふるさとのことが正直あまり分かりませんでした。資料を探しながら、国やふるさとへの誇りや育ててくれた感謝の気持ちが溢れてきました。
  
 そして、本番に発表した時、参加された人々が話しを聞いてくださったり、関心深く質問をしてくださったり、ささやかであっても日中の架け橋になる自分の夢が叶えられたのではないかと感心しました。
  
 これからは、2年間日本でお世話になったご恩とふるさとが育ててくれるご恩のお返しとして、日中友好のために力を尽くすことしかありません。
                          
○トクソズ・レヴェントさん(トルコ)
 日本に来てからあっという間にもう6年も経ちましたが、この6年でしばしば感じていたのは、トルコが日本ではいかに知られていないかということでした。それもそのはずです。地理的には1万キロも離れている両国ではお互いの情報が中々入りづらいです。それで、今回の語学カフェは僕にとってトルコのことを紹介できる貴重な機会になり、非常に有り難く感じました。
  
 黒海、エーゲ海、地中海に囲まれた私の国トルコはヨーロッパとアジアの交わるところに位置し、その地理的状況と同様に、文化的にもアジアとヨーロッパが交じり合う場所でもあります。またこの地は文明発生以来、さまざまな民族が訪れ、去っていったところでもあります。
  
 今回の語学カフェでは、できる範囲でトルコのさまざまな顔を紹介しようと心掛けました。チャンスがあればトルコにぜひ一度行ってみて下さい。

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【4.文学研究科外国人留学生懇親会リポート】 
  
 11月7日(月)18時より毎年恒例の文学研究科外国人留学生懇親会を学士会館レセプションホールで開催しました。今回は、外国人留学生が45人、チューター3人、教職員23人、合計71人の参加がありました。新入生の自己紹介や教職員との歓談、ビンゴゲームで会場は盛り上がり、留学生も教職員も和気あいあいと楽しい時間を過ごすことができました。
懇親会に参加した陳亜雪さん(日本文学語学専攻)の感想を紹介します。
  
 今日は文学研究科で懇親会を開いていただきました。初め懇親会と聞いた時は、食べたり飲んだりしながら親睦を深める普通の懇親会のようなものだろうと思いましたが、実際に出席してみると、雰囲気が思っていたものと全然違うことが分かりました。
  
 広い会場のテーブルの上には様々な料理が綺麗に並んでいて、先生方と今年新しく入学した留学生達が一堂に会して、楽しく時を過ごしました。皆美味しい料理を味わいながら、お喋りをしたり、ゲームをしたりして、会場は始終和やかな雰囲気でした。
  
 一番印象深かったのは、留学生たちが一人一人自己紹介をして、日本に来た感想を出し合い、話し合ったことです。日本の物価が高いとか、民度が高いとか、日本の女子学生がよくミニスカートをはくとか、留学生達がそれぞれ自分の感想を述べました。留学生の一員として、私も日本人がちゃんと交通ルールを守ることなど、自分なりの感想を述べました。ちょっと緊張していたため、私の日本語はあまり流暢ではなかったのですが、先生方は我慢強く聴いてくださったり、拍手して励ましてくださったりしました。
  
 各国から集まってきた留学生達の感想はそれぞれ違いましたが、日本人と付き合うことによって、日本という国がもっと好きになったという気持ちは同じです。今回の懇親会をきっかけにして、私もたくさんの新しい友達ができて、先生方と交流し親しみも深めることが出来ました。研究科の和やかな雰囲気に心を打たれた私は、日本に来て、広島大学に来て、文学研究科に来て、本当に良かったなあと思います。これからの日本での留学生活をより一層楽しみにしています。
※民度=国民や住民の生活程度、また、経済力や文明の進歩の程度のこと。
  
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【5. 文学研究科(文学部)ニュース】
○2012 リテラ ウィンターコンサート」
広島大学大学院文学研究科主催リテラ ウィンターコンサート 2012 WINTER
CONCERT
【日時】平成24年2月18日(土)14:00開演(13:30開場)
【会場】広島大学サタケメモリアルホール(広島大学東広島キャンパス内)
【ステージ構成】
  1部=邦楽KAMO
  2・3部=広島交響楽団弦楽四重奏
☆入場無料
      
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【6.広報・社会連携委員会より 竹広文明】
  
 今夏も8月には、帝釈峡の発掘調査に出かけてきました。今年は、1962年に帝釈馬渡岩陰遺跡で第1次の発掘調査を開始してから、ちょうど50年目の節目の年となりました。この記念すべき年に、折しも浅原利正学長に帝釈峡遺跡群発掘調査室および調査遺跡を視察していただく機会に恵まれ、大変ありがたく思います。また、先日には調査室のホームペイジも文学研究科HP内に開設されました。浅原学長視察のニュースも紹介されておりますので、開設間もない調査室HPと併せて、ぜひご覧下さい。
  
 また、9月には、島根県隠岐の島町の黒曜石産出地の発掘調査に出かけてきました。隠岐産黒曜石は、山陰日本海沿岸を中心に中国地方で広く石器石材として利用されています。石器時代の人たちにとって隠岐は、直接にしろ間接にしろ黒曜石を求めて人々が往来する、いわば扇の要ともいうべき場所となっていました。したがって隠岐の黒曜石産出地には、石器時代の人々が黒曜石を採取したり石器製作を行った跡である原産地遺跡が残されていると考えられますが、2005年に私たちが産出地の一つ隠岐の島町加茂で行った調査により、隠岐では初めて原産地遺跡を確認することができました。隠岐では現在、ユネスコの支援する世界ジオパーク認定を目指した活動が推進されており、地元からは、私たちの黒曜石産出地の考古学的調査に熱い期待が寄せられています。今年の調査は、広島大学と地元の隠岐ジオパーク戦略会議との共同研究として行うことができ、隠岐でも代表的な黒曜石産出地である隠岐の島町久見で調査を実施しました。
  
 ここで帝釈峡に再び目を向けると、隠岐産黒曜石は、縄文時代には帝釈峡遺跡群にも持ち込まれています。両者のつながりについても、今後研究を深めていきたいと思います。
  
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リテラ友の会・メールマガジン

オーナー:広島大学大学院文学研究科長  山内廣隆
編集長:広報・社会連携委員長  井内太郎
発行:広報・社会連携委員会

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