メールマガジン No.59(2014年1月号)

リテラ友の会 メールマガジン No.59(2014年1月号)
2014/1/27 広島大学大学院文学研究科・文学部

□□目次□□
1.芥川賞受賞を祝して
2.第11回「文藝学校」講演会のご報告
3.AIMSに向けてータイ・バンコク体験記ー
4.文学研究科(文学部)ニュース
5.広報・社会連携委員会より
    
------------------------------------------------------------------
    
【1.芥川賞受賞を祝して 日本・中国文学語学講座教授 久保田啓一 】

 1月16日の発表以来、私に「おめでとう」といって下さる方が何人もいらっしゃいましたが、私は、近世文学の授業や研究会の席で、あるいは滑稽本「花暦八笑人」を題材とする卒論の執筆過程で、小山田さんに然るべき研究指導をしただけですので、何とも面映く、しかし、作中人物に乗り移ったかのように次々と解釈と意味づけを繰り出す卒論の文章の圧倒的な筆力をあらためて目の当たりにすると、今回の栄誉の源泉の一つに文学部在籍中の学問があったのかもしれないという手応えが、喜びとともに心深くに刻み付けられたのも事実です。本当にうれしく思います。

 お子さんのために広島を離れず、電話で受賞会見に臨み、決して浮かれたりしないのも、私には何より好ましく思われました。文壇最高の賞を貰いながら、芥川賞作家というプレッシャーに潰されて作品が書けなくなり、忘れ去られていく作家が如何に多いか。小山田さんらしい抑制の利かせ方が、恐らくは息の長い執筆活動を支えてくれるに違いありません。

 やはり芥川賞を貰った松本清張には、旅先で原稿用紙がなく、ありあわせの紙に縦横の罫を引き、寸暇を惜しんで文章を書きながら、同行の人に「どんな状況でも書き続けるのが作家の能力だ」という趣旨のことを語ったという逸話があります。研究者が論文を書かなくなったら終わりのように、ひたすら書き続けてこその作家なのかもしれません。選ばれた者としての誇りを持ち、しかも自然体で、少しずつ題材を広げながら、納得のいく小説をコンスタントに、楽しんで書き続けて下さい。研究室の書架に置いたあなたの卒論の横に御著書が1冊1冊と並んでいくのを、何よりの楽しみとしてお待ちしています。
         
-----------------------------------------------------------------

【2.第11回「文藝学校」講演会のご報告 日本・中国文学語学講座教授 妹尾好信】

 平成25年11月23日、勤労感謝の日の土曜日、秋深き山陰米子で、広島大学大学院文学研究科とNPO人「本の学校」の共催による第11回「文藝学校」講演会が開催されました。天候に恵まれ、霊峰大山が半身を白く雪化粧した麗姿で歓迎してくれる中、この日を待ちかねたようにたくさんの聴衆が集まって下さって、会場の本の学校今井ブックセンター2階の多目的室はたちまち満席になりました。

 今回の講演は3つ。最初は、大地真介准教授(欧米文学語学・言語学)の「アメリカ文学とは何か」。アメリカの文化や社会の根幹にある民主主義思想とキリスト教のピューリタニズムが、そこで生み出される文学にどのように影響しているかを明快に論じて、メルヴィルの『白鯨』やヘンリー・ジェイムズの『鳩翼』を映画の予告
編画像を映写しながら視覚的に解説し、聴衆の目を輝かせました。
 
 次は高永茂教授(総合人間学)の「話すということ」。日常なにげなく行っている「話す」という行為は、実は言語だけでなく、アクセントや声の強弱、間の取り方や表情・身振りまでが総合的に関連して行われているのだということを、まさに実技を示しながら話すと、会場は大いに盛り上がりました。

 最後は、妹尾(日本・中国文学語学)の「簾を上げた清少納言」。高校古文教科書の定番『枕草子』の「香炉峰の雪」の段を取り上げて、清少納言は中宮の問いかけに答えてどのように簾を上げたのかという疑問を提起しました。通常は巻き上げたとされているけれども、白楽天の詩の原義に従ってはね上げたのではないかとの解釈を示すと、聴衆は賛成・反対両様の意見に分かれました。はたして真実やいかに。

 質疑応答の時間にはたくさんの質問や意見が出て、聴衆参加型の活発な講演会になりました。地元の進学校、米子東高校からも、中間考査中にもかかわらず5名の生徒さんがいらして下さいました。うれしいことに、広島大学文学部への進学を希望しているとのことでした。

 「文藝学校」講演会は、すっかり年間行事として定着しました。NPO法人「本の学校」と今井書店グループの皆さんのご理解とご支援のもと、11年も続いています。また来年も楽しみにしていますと笑顔でエールを送って下さったご参会の皆さんのお気持ちにお応えしなければとの思いを強くしました。

-----------------------------------------------------------------

【3.AIMSに向けてータイ・バンコク体験記ー 学生支援グループ景山淳史 】 

 文学部学生支援室 景山です。私は10年程前、広島大学文学部の学生として在籍していました。専攻は西洋史学でした。現在、職員として勤務することに不思議なご縁を感じています。
 西洋史ともなれば洋書文献を手に日々研究していたものですが、私自身はというと、英語をはじめ外国語が全くの苦手。大学のグローバル化なるものが叫ばれて久しい昨今、正直なところはおとなしく過ごしたいと思っていました。しかしそんなことが許されるはずもなく、パスポートすら持っていなかった私が、研究科長・室長からの出張命令に逆らえず、ついに外国へ赴くことになったのです…。

【AIMSとは】
 文部科学省の「大学の世界展開力強化事業」で,ASEAN諸国で進められている学生交流事業として、AIMSプログラム(ASEAN International Mobility forStudents Programme)の枠組みで関係強化を図る目的で募集が行われました。広島大学は、「食品科学・農学」「工学」「経済学」「言語・文化」の4コースで構成されるプログラムを申請し、採択を受けています。このうち、文学部は言語・文化コースを教育学部とともに担当します。
 その打ち合わせのため,昨年12月17日(火)~20日(金)の日程で、勝部研究科長・太田淳准教授をはじめ国際センター・教育学部・経済学部の教員に景山を加えた計6名で、タイのチュラロンコン大学・タマサート大学を訪問してきました。チュラロンコン大学とは、4月から早速10名の受入れが始まり、8月には8名の広大生を派遣する計画のため、その具体的な準備が始まっています。
 さて、肝心の内容ですが、最初に述べたとおり私の英語力は本当に惨憺たるもので、恥を覚悟で言えば何もかも緊張しっぱなしで全く役に立てませんでした。先生方にフォローしてもらう職員って…。でもきっとそんな私をおもしろがってこの執筆依頼がきたのでしょうから、ここは開き直って、素直に記すことにします。「君、何しに行ったの?」という感想はどうかご勘弁を。

【バンコクの印象】
 成田空港を夕方に出発し、7時間のフライトを経てタイ・スワンナプーム国際空港へ到着したのは現地時間で23時過ぎ。日本の駅なら終電も出て真っ暗になる頃ですが、このスワンナプームは東南アジアのハブ空港で「24時間眠らない空港」。まるで昼間のような賑わいで、さらに広さにも圧倒されたのです。
 それからタクシーで1時間近く、バンコク市内のホテルへ向かったのですが、この間も、街灯やネオンでとても明るい印象を受けました。ATMも随所にあって、24時間営業のようです。ただ、広告しかり、タクシーしかり、街中に「ピンク」が溢れているのが夜でもはっきりと分かり、ちょっと驚きました。後で調べたら、国王のカラーなんですね。バンコクの街並みは、上を見れば近代的な高層ビルが多く建ち並ぶ都会なのですが、目線を同じくすると、歩道はほとんど露店で埋め尽くされています。貧富の差とか社会状況とか、そういうものが混在している印象を受けました。ちなみに、翌日の朝ホテルを出ると街は食べ物の匂い、しかも肉を焼いているようです。お祭りの夜店の焼き鳥を彷彿とさせ、「朝から!?」と思ったのでした。タイの人たちは元気ですね。

【豪華なホテル】
 私たちが宿泊したホテルは5つ星で、一緒に行った先生方から「初の出張でこんな良いところ泊まったらダメでしょ!」と揶揄されるほどでした。個室はたしかシングルだったはずですがダブルベッドで、しかも枕が4種類×2セット置いてあり…照明からデスクからオシャレな部屋で、お風呂がガラス張りなのを除けば大変心地よかったです。朝食も各国の料理が楽しめるので満足。かっぱ巻きや蕎麦、味噌汁もありました。タイ米の寿司が少々不思議な感じではありましたが、日本食は落ち着きます。あと、ここのグァバジュースは甘くすっきりしていて絶品でした。

【意外と?おいしかったタイ料理】
 海外経験がほぼないため、エキゾチックな料理には少々二の足を踏んでしまうのですが、滞在中はおいしいお店にたくさん連れて行ってもらいました。18日の夕食は、チュラロンコン大学の横にある海鮮レストランへ。川や海が近く魚介系の料理が多いようで、魚のフライ・エビ蒸し・カニの卵とじ等の料理を満喫しました。特にエビは最高でした,大きくて!
 19日の昼は、タマサート大学の川向こうにあるレストランでチキンカレーを。タイカレーといえばグリーンカレーのような辛いものをイメージするのですが、ここのカレーは辛くない。みな一様に辛いわけではないのですね。さらに夕食は、ホテル近くのお店で「タイすき」を堪能。出汁の味付けは完全に「うどんすき」です。和風な味付けなので日本人にはありがたいのではないでしょうか。ソースには酸味がきいていましたが、頼めば別にポン酢も出してもらえ、あっさりといくらでも食べることができます。
 また、タイのシンハービールはさわやかな喉越しで、暖かい気候も手伝って非常においしい!酒飲みの私には大満足でした。18日のレストランでは、グラスが空になるとすぐに店の人が注いでくれる(というか飲み干すのを待ち構えている)ので、気がついたらメンバー全員でビール瓶10本+ワインボトル1本…さすがに飲みすぎました。
 逆に、私の口にはトムヤムクンがどうも…。パクチーのクセが強烈でした。でも先生方はみなさんおいしそうに召し上がっていました。あくまで一個人の感想です。

【バンコクの現在】
 最近、ニュースでよく見かける反政府デモ。実は私たちが渡航する直前からデモが頻発しており、一時は、本当に行けるのか?という危惧もあったほどでしたが、滞在中は大きな混乱もなく無事に過ごせました。
 ただ、デモ行進には一度遭遇したのです。19日、タマサート大学の訪問を終え、タクシーでホテルに戻る途中、広場の近くに待機している救急車を発見。そこには人がいなかったので、「何か起こるのか?」と車内で話していると、対向車線を塞ぐように広場へ向かう市民たちの大行列が視界に入った。よく見ると、子どもからお年寄りまで旗を持って歩いていました。ただ、表情にそれほど鬼気迫るものがない。笑顔でピースしている人もいたほどです。デモ行進なのに不思議だな?と思ったのですが、よく考えたら平日の昼間、本当なら仕事しているはずの時間にこんなにもたくさんの人々がいるという事実。それだけで随分と非日常な光景であったというべきでしょう。その日の夜、ホテルのテレビで集会の様子を見たのですが、どうしても近くで起こっていることとしてイメージできませんでした。
 ところが、帰国後に状況がどんどん悪化したようで、このメルマガが出る直前にはついに非常事態宣言が発令されるほどに。今更ながら怖くなり、つくづく良いタイミングで行ったことを感じ入ると同時に、少しでも早い収束を願ってやみません。

…結局、振り返ってみれば、良いところに泊まり、おいしいものを食べて、両大学の広さを肌で感じ、非常に充実の経験をさせていただいたという一言に尽きます。ただ、AIMS-HUはこれからがスタートですので、さらに身を引き締めて準備を進めていきたいと思います。

 最後に一つだけ、タマサート大学で見学させていただいた宿舎はまるでホテルのようで、どうかすると私のアパートよりも立派でした。広大の宿舎とは比べ物になりませんが…。いろんな大学を見ることはとても刺激になりますね。長文失礼いたしました。

-----------------------------------------------------------------

【4. 文学研究科(文学部)ニュース】

○「古文書を見る会」(猪熊文書を見る会)を開催します
  【日 時】2014年2月13日(木)13:30〜16:30
  【場 所】大学院文学研究科1階 大会議室[東広島キャンパス]
  
○広島大学応用倫理学プロジェクト研究センター第16回例会を開催します
  【日 時】2013年2月21日(金) 12:30 〜 18:30
  【場 所】大学院文学研究科1階 大会議室[東広島キャンパス]
  
 ○広島交響楽団による『リテラコンサート2014』を開催します
  【日時】2014年5月24日(土)14:00〜
  【場所】広島大学サタケメモリアルホール
    【ステージ構成】広島交響楽団弦楽八重奏
  ☆入場無料
     詳細は決まり次第、文学研究科HPでお知らせします
  
------------------------------------------------------------------

【5.広報・社会連携委員会より 有馬 卓也】

 昔、「もしもピアノが弾けたなら」というヒット曲がありましたが、私的には「もしも小説が書けたなら」です。中高の頃は小説のようなものを書いていましたが、挫折しました。小説が書ける、これは羨望の対象以外の何ものでもありません。小山田さん、芥川賞受賞おめでとうございます。
 『工場』『穴』を読ませていただいて、その独特な世界観・雰囲気に引き込まれました。今後がとても楽しみな作家の登場です。まだ興奮冷めやらぬ状態です。
 ……編集後記になっていない。メルマガ59号をお届けします。
 
////////////////////////////
  
リテラ友の会・メールマガジン
  
オーナー:広島大学大学院文学研究科長 勝部眞人
編集長:広報・社会連携委員長 友澤和夫
発行:広報・社会連携委員会
  
広島大学大学院文学研究科・文学部に関するご意見・ご要望、
メールマガジンへのご意見、配信中止・配信先変更についてのご連絡は
下記にお願いいたします。
 広島大学大学院文学研究科 情報企画室
 電話 (082)424−4395
 FAX (082)424−0315
 電子メール bunkoho@hiroshima-u.ac.jp
  
 バック・ナンバーはこちらでご覧いただくことができます。

////////////////////////////

 

◇下記のMail環境で確認◇
 Microsoft Outlook14.0
 Mozilla Thunderbird(Win,Mac)最新
 Mac Mail6.0


up