メールマガジン No.60(2014年3月号)

リテラ友の会 メールマガジン No.60(2014年3月号)
2014/3/17 広島大学大学院文学研究科・文学部
    
□□目次□□
1.リテラメールマガジン発行10周年を迎えて
2.平成25年度優秀卒業論文発表会
3.文学部はつぶしがきく!
4. 文学研究科(文学部)ニュース
5.広報・社会連携委員会より
    
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【1.リテラメールマガジン発行10周年を迎えて 広報・社会連携委員長 友澤和夫 】
                                       
 リテラメールマガジンは、この度、60号を発行する運びとなりました。隔月発行ですので、足かけ10年間継続してきた次第です。
 1号が発行されたのは2005年1月です。当時は、研究科をあげて新企画を立ち上げようという気運があり、メルマガの他にも、サテライト展示(2004年7月)、リテラ「21世紀の人文学講座」(2004年11〜12月)、リテラコンサート(2005年1月)、楓文庫展示(2005年6月)、語学カフェ(2006年11月)が始められ、いずれも今日まで継承されています。なお、メルマガにリテラが冠されるのは、2004年6月にB204大講義室の愛称がリテラに定められたことによります。メルマガ以外の研究科行事や広報活動にも、この愛称が用いられています。

 本メルマガは、文学研究科の構成員のほか、リテラ友の会会員に送信されています。会員は研究科の心強いサポーターですので、数が増えることを期待しています。10年目ということで、本メルマガが、どのような方々に読まれているのかを整理してみました。会員総数は221名であり、男性123名、女性98名と、やや男性が多いと言えます。生年では1940年代が54名と最も多く、1950年代41名、1970年代31名と続きます。1930年代以前のお生まれの方も22名おられ、メールを使われていることに敬意を抱きます。年齢分布は中高年に偏りがあるので、若い年齢層に積極的な登録の呼びかけが必要であることが分かります。

 都道府県別には、広島県にお住まいの方が173名と突出しています。内訳は、東広島市78名、広島市55名、廿日市市10名、呉市9名となります。さすがにお膝元の東広島市と広島市が多数を占めますが、おもしろいことに登録方法において差があります。すなわち東広島市では「リテラコンサート」が、広島市では「公開講座」が、それぞれ登録方法の最上位となっており、研究科が開催する行事と密接な関係があります。県外は、福岡県8名、鳥取県6名、東京都5名、大阪府・岡山県・山口県各3名の順です。登録方法は遠方なので「メール」が中心ですが、鳥取県は全員が「文藝学校」であり、研究科が同県で開催した行事を契機としています。国内最遠方の会員は宮城県にお住まいで、卒業生と聞いております。中国の会員も3名おられ、海外でも読まれています。

 結論的には、研究科の各種行事盛んならずして、リテラ友の会=メルマガの発展はなしということでしょうか。我々も一層努力しますので、読者の皆さん、引き続きご愛顧をよろしくお願い申し上げます。

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【2.平成25年度優秀卒業論文発表会】 

 2月17日(月)文学部大講義室(リテラ)におきまして、「平成25年度優秀卒業論文発表会」が開催されました。今回のメールマガジンでは、その中から2人の卒業論文の要旨を紹介いたします。また、指導教員からも一言添えていただきました

○精武体育会と中央国術館-武術から見た近代中国・歴史学コース(東洋史学専攻) 清瀬 峻

 本卒業論文では、近代中国の歴史的過程のなかで武術が国民国家形成にどのような影響を与えたかについて考察した。19世紀後半から、武術は中国人の民族精神を昂揚させるものと見なされ、政府もまた軍隊の錬成、さらに国民の健康水準向上の手段として重視するようになった。

 そこで本稿では、そのような時代性のなかで登場した精武体育会と中央国術館という二つの武術団体に着目して研究をおこなった。これら二つの団体は近代中国において武術や体育教育を牽引した代表的な組織である。
 精武体育会は1911年に民間の商人によって組織され、中央国術館は1928年に南京国民政府によって設立された団体である。

 研究成果として特に新しい点は、①精武体育会のマレー半島における事例の発見、②中央国術館の国術試験の再検討の2つが挙げられる。そして最後に両組織を比較検討することで、近代中国の国民国家建設の過程のなかに両者をどのように位置づけるべきかについて分析した。
 精武体育会の場合、その発展過程から見れば、1910~20年代における中間知識人層の活躍が国民形成に貢献したといえる。一方、中央国術館はその杜撰な管理体制から、後に失敗する南京国民政府の訓政政治を体現するものであると結論づけられる。
 ただし本稿では、実証する史料や論拠が不足しているうえ、武術という視点から国民国家形成の特徴を十分に照射できなかった。こうした点については大学院進学後の課題としたい。

[指導教員のコメント:太田 出准教授]

 清瀬君の卒業論文は「国術」とも称された武術から近代中国を俯瞰しようとする極めて興味深いものでした。武術をこれほどまでに正面から捉えようとした論文は過去にも例が少ないでしょう。
 彼は研究室や飲み会でおしゃべりすると「中国武術を題材とした○○○という映画が面白いですよ」などと生き生きと話し、武術それ自体にとても関心を抱いているようでした。それが本当に卒業論文のテーマとなり、さらに優秀卒業論文にも選ばれたのですから、まさに「好きこそものの上手なれ」を地で行くような感じですね。
 卒業論文では、民間武術団体の精武体育会と、国民党政府の肝いりで組織された中央国術館というほぼ同時期に成立した2つの武術団体・組織を比較し、それぞれの類似点と相違点を抽出しながら、両者が何をめざそうとしていたかを浮き彫りにしました。その結果、民国期の近代中国には「2つの国術」が並立することになり、それは日中戦争によって団体・組織自体が活動を停止するまで続いていたことを明らかにしました。論文は、中国本土はもちろん、ベトナム、マレー半島、インドネシアまでをも視野に入れた(各地に分会が存在する)マクロな観点から実証が進められており、一般の卒業論文の水準をはるかに超えるものであったと思います。
 彼は今後大学院に進学するのですが、これを足がかりとして、さらに幅広く史料を閲覧・分析し、実証性を高めていって欲しいと願っています。彼の今後の一層の努力に期待です。

○古代瓦陶兼業窯の考古学的研究 地理学・考古学・文化財学コース(考古学専攻) 三輪剛史
                 
 古代の窯には供膳具である須恵器と瓦をひとつの窯で焼く瓦陶兼業窯(がとうけんぎょうよう)と呼ばれるものがあります。須恵器のみ、瓦のみを焼く窯に比べれば数は少ないですが、一定数普遍的に存在したもので、我が国での瓦生産の開始に深く関わる操業形態です。この瓦陶兼業窯について、その実態はこれまではほとんど明らかにされてきませんでしたが、私は「瓦の厚さ」に注目することで操業の一端に迫れるのではと考えました。そして、実際に瓦の厚さを計り、瓦専業の窯と瓦陶兼業窯を比較してみると、瓦陶兼業窯で焼かれた瓦は、瓦専業窯と比較して薄くなる傾向があることがわかりました。その理由は、瓦の器壁がはるかに厚いことにあると考えられます。須恵器の器壁は1cm未満のものがほとんどですが、瓦では数cmにもなるのです。こうした厚さの異なるものを同時に焼く際に、火の通りを考慮して瓦の厚さを薄くしたと考えられます。

  複数の瓦陶兼業窯について、同様の分析をしていくと、どうやら瓦陶兼業窯の中でも須恵器と瓦を一度の操業で焼かないものは、薄い瓦を指向しない傾向があることがわかってきました。これは「火の通りを考慮する」という仮説の裏返しでもあるのですが、当時の瓦の生産量とも関わってきます。つまり、需要量が多くひっきりなしに瓦を焼くためには、須恵器と瓦を同時に焼き上げて対応する必要があり、需要量が少ない場合には必要に応じて須恵器専業窯を瓦の焼成に転用していたと考えられるのです。

[指導教員のコメント:野島 永 准教授]

 三輪剛史君は歴史考古学に興味をもち、勉強に励んできました。なかでも古代寺院の屋根を飾る瓦の生産に関心をもっていました。夏に行われる発掘調査や春の測量調査でも率先して中心的な立場になり(ならされ)、連絡・調整なども行ってくれました。また、あまり研究会に参加しなかった4年次生のなかにあって、専門の学会にも積極的に参加し、自ら考え、実際に行動する経験を養ってくれました。いわゆるイケメン・リア充で、高身長の彼が素敵なジャケットやコートを着こなしているのもよく見かけました。

 卒論では、飛鳥・奈良時代の瓦陶兼業窯(がとうけんぎょうよう)を選びました。瓦と陶器(須恵器)を一緒に焼成する登り窯です。瓦専業窯に比べれば、注目度が低く、研究もあまり多くはないのですが、薄い須恵器と一緒に焼成するための工夫があることを見つけ出し、新たな研究視座を作り出してくれました。

 指導教員としては大学院に進んで瓦生産の研究をもっと深化させてもらいたいと思っていたところでしたが、今春から国家公務員として新たなステージに進みます。新天地でも活躍してくれることを信じております。

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【3.文学部はつぶしがきく! 文学研究科就学相談室長 井内太郎】 
                                                                                                          
 就学相談室の就職支援活動について紹介してくれというご依頼が編集部からありましたので、わたしたちの活動についてお話しいたします。
 就学相談室は、4名(相談員1名、教員3名)のスタッフからなり、文学部・文学研究科の学生の「就活」のみならず、「就学」、「生活」など全般的なサポートを行っていることが特色の一つです。

1.文学部の就職状況
 平成12年度文学部卒業生(151名)の就職率(85%)   
内訳は企業(50%)、公務員(12%)、教員(4%)、進学(19%)、その他(15%)。
 他学部と比べても遜色はなく、民間企業への就職がもっとも多く、文学部らしいマスコミ、出版から、銀行、小売業、メーカーまで多岐にわたっています。また大学院進学が多いのも本学部の特徴です。

2.就職支援活動について
 学生の個人面談に加えて、「就職そして社会人への道」という文学部独自の講座を開催しており、2013年度には11回ほど行い、多数の学生さんに参加していただきました。
 近年、いずれの職種においても、筆記試験よりも人格やコミュニケーション能力が重視される傾向が強まっています。そこで、講座では面接・ディスカッション・マナーの実践練習を積極的に行っています。

3.今後の活動
 まず就職協定の変更により、就活の開始時期が12月から翌年の3月に引き下げられる予定ですから、これに対応した新たな就活スケジュールを作成する必要があります。

 広島大学は、「研究大学トップ20」の大学の一つに選ばれました。これに対応して、文学研究科では、アジア諸地域の主要大学から多数の留学院生を受け入れることになっています。それは同時に、修了生の国内外における就職支援体制を整えていくことが求められることを意味しています。本学の就職支援体制も今後、グロ-バル化していくことになるわけです。
 以上、就学相談室の活動の現状と将来的展望について、お話させていただきました。なお、就学相談室の具体的な活動については、就学相談室HPをご覧ください。

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【4. 文学研究科(文学部)ニュース】

○広島交響楽団による『リテラスプリングコンサート2014』を開催します

【日時】2014年5月24日(土)14:00開演(13:30開場)
【場所】広島大学サタケメモリアルホール
【ステージ構成】 広島交響楽団弦楽八重奏
 ☆入場無料

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【5.広報・社会連携委員会より 友澤和夫】

 4セメスター制への移行、新学部設立、教員組織の再編・・・。広島大学内では、現在こうした言葉が随所で飛び交っています。1つでも大きな制度変更ですが、これらを同時並行的に進めようとしていること、構成員自らの意志というよりは設置省庁主導であること、そして変更するメリットが見え難いことに疑問を覚えるのは当方だけでしょうか。否応なく変わらざるを得ない大学において、従前以上に教育と研究の質を担保することは、教員個人にとっても、あるいは文学部・文学研究科という組織にとっても、難題となりそうです。そもそも大学の本来使命は・・・、これ以上調子に乗って書きますと、メルマガが体制批判誌になってしまいますので、現在の広報・社会連携委員会による編集は本号を最後とし、新しいメンバーにバトンタッチします。引き続き、よろしくお願い致します。

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リテラ友の会・メールマガジン

オーナー:広島大学大学院文学研究科長  勝部眞人
編集長:広報・社会連携委員長  友澤和夫
発行:広報・社会連携委員会

広島大学大学院文学研究科・文学部に関するご意見・ご要望、
メールマガジンへのご意見、配信中止・配信先変更についてのご連絡は
下記にお願いいたします。
広島大学大学院文学研究科 情報企画室
電話 (082)424−4395
FAX(082)424−0315
電子メール bunkoho@hiroshima-u.ac.jp

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