メールマガジン No.68(2015年8月号)

リテラ友の会 メールマガジン No.68(2015年8月号)
2015/8/3 広島大学大学院文学研究科・文学部

□□目次□□
1.カープ観戦記
2.内海文化研究施設 第33回 季例会 ・公開講演会
2.第13回「文藝学校」講演会
3.コラムー映画と学生時代、そして『七人の侍』
4.文学研究科(文学部)ニュース
5.広報・社会連携委員会より

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【1.カープ観戦記  歴史学講座教授 西別府 元日】

  梅雨の合間の爽快な一日、巨人戦連勝をうけた7月3日(金曜日)、教職員の親睦団体である文学研究科互助会のナイター観戦が催されました。対戦相手は、勝率5割で首位に躍り出たヤクルト・スワローズ、今季4勝6敗と負け越しているチームでした。とくに今年は、当該時点でホームランと打点の2冠でありながら、残念にもオールスターから漏れた畠山を中心にした猛打のチームですので、防御率トップをめざす前田健太がどう立ち向かっていくのか、たいへん楽しみな一戦でした。

  しかし、参加者は教員11名、職員19名の計30人(男性14人・女性16人)で「陣取る」というには、やや寂しい人数で周辺の集団よりは、やや(たいへん?)盛りあがりに欠ける状態でした。かつては、教員の参加者も多く、それなりに盛りあがったのですが、今年は定年が視野に入った年齢層が三分一強をしめて肩身がせまく、試合開始前からビールで平生の「憂さ晴らし」でした。日常、裁量労働制その他で、個々に分断されている教員は、絶え間ない書類作成をはじめ様々な校務に忙殺され、時間的(かつ精神的)焦燥感もあって研究ひいてはカープどころではないという個々人の判断がなされたことの反映かもしれません。

  試合は、5割で首位になれるという史上まれにみるリーグ戦のなかで、某チーム状況を反映するかのような、オレンジ色の夕日が落ちていくなかで開始され、マエケンが、かつて先頭打者ホームランも喫したことのある、やや苦手とみえる山田をはじめとする強力打線の初回を無難にきりぬけると、先発古野の制球難につけ込んで、初回に打者一巡の猛攻で5点をあげました。それでも、6月27日の中日戦(初回4点のあと2回杉山にスリーランを喫した)の例があるので心配でしたが、このミスを教訓にした前田が、2回を渾身の投球で抑えこむと、もう勝負あったの感で、余裕をもって試合とビールを楽しめる状況になり、授業等で遅れて入場してきた人たちが、たいへんお気の毒な状況でした。

  5回ヤクルトの攻撃が終わりゲームも成立、お腹もすいてきたので、球場ではカープうどんと決めている40年来の習慣で、店先に並んだところ、丸・菊池らの連打で勝利を決定づける2点が入りましたが、うどんの列に並んでいて、いいところが歓声だけという悲惨な状況のお返しをうけてしまいました。他人の不幸を笑って、罰があたったというところでしょうか。市民球場時代は、並びながらもゲームがみれる、雑ぱくさもあったように思うのですが、スタジアムがきれいに整備されすぎて、古い世代にはやや寂しいゲーム観戦でしたが、勝利したのですから、すべて良しでした。

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【2.内海文化研究施設 第33回 季例会・公開講演会 歴史文化学講座教授 中山 富広】           
     
  この会は、本研究科の内海文化研究施設と世界遺産・厳島-内海の歴史と文化プロジェクト研究センターとの共催による公開講演会で、平成17(2005)年7月に始まりました。

 第1回目の講師は、広島女学院大学名誉教授の藤井昭先生で「民俗学の視点から宮島を考える」という題目でお話しいただきました。この時の講演要旨は『厳島研究』第2号に掲載されていますので、興味のある方はぜひご覧下さい。

 話しが前後してしまいましたが、この会の目的は、厳島神社や宮島について造詣の深い学内外の研究者・有識者を講師にお招きし、市民・県民の皆さんに最新の成果をお伝えし、世界遺産である厳島の歴史・文化・環境に関する興味関心を一層高めていただくことにあります。季例会ですから本来ならば年4回開かなければならないのですが、だいたい7月・12月(もしくは11月)・3月の年3回の開催という形式をとっております。

 本年7月には第33回を催しましたが、歴代最年少講師・笛吹理恵さんに宮島の鹿の報告をいただき、フロアーからも建設的なご意見や感想が多く寄せられ、盛況のうちに閉会となりました。実は2、3年前頃から歴史・文化系の講師が底をつき、島内の植生や動物、さらには自然環境のご専門家が登壇することが多くなっています。これはこれで良いことなのですが、講師を探すのに苦労しているというのが現状なのであります。年3回は死守したいと思いますので、お心当たりの方はぜひ「あそこにこのような方がおられますよ」という情報を下されば幸いです。

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【3.第13回「文藝学校」講演会  欧米文学語学・言語学講座教授 今林 修】

  例年ですと、本講演会は10月もしくは11月に開催されるのですが、今年は高校生の集客を睨んで、夏休み前の連休の中日、7月19日(日)、鳥取県米子市の今井ブックセンターにて、文学研究科とNPO法人「本の学校」の共催による第13回「文藝学校」講演会が開催されました。今年の講演会が例年と違ったことがもう一つ、講師が5名で、昼食をはさみ、終日になったことであります。

 午前中は、本研究科博士課程前期を修了し、今井書店吉成店ご勤務の小谷裕香氏による「多和田葉子 ―「言葉」は穴だらけ」と有元伸子教授による「三島由紀夫『金閣寺』と映画・演劇」があり、午後からは、筆者の「『はらぺこあおむし』を英語で読む」、妹尾好信教授による「奥書から古典を読む ― 定家筆『土佐日記』・『更級日記』の場合 ―」、松本陽正教授の「サルトル「壁」― <実存>について考える」がありました。いずれの発表も「テクスト」を精緻に読むことからはじまり、小谷氏は、翻訳や映像を通して「言葉」を外から眺めることで多和田の作品に迫り、有元教授は、映画と演劇から『金閣寺』が読まれつづけられている意味を探り、今林は、『はらぺこあおむし』の製作過程を言語的証拠がいかに物語るかを示し、妹尾教授は、写本に添えられた奥書から『土佐日記』と『更級日記』の伝来や書写の事情をわかりやすく説明し、松本教授は、サルトルの短編「壁」から「実存は本質に先立つ」という有名な言葉が、いかに巧みにイメージ化されているのかを例証しながら、<実存>についても聴衆に問いかけました。

  位藤邦生先生(本学名誉教授)と永井伸和氏(今井書店グループ代表取締役会長)との出会いで始まった「文藝学校」も今年で13回目となり、企画・世話人も位藤先生から松本先生、そして妹尾先生と引き継がれてまいりました。二代目の松本先生も来年の三月にご定年をお迎えになり、今年で最後です。ここまでリピーターやファンが多い講演会も少ないのではないかと思います。松本陽正先生、長年ありがとうございました。先生のファンクラブの元女子高校生が第二ボタンを欲しがっていらっしゃるようでした。最後になりましたが、妹尾先生、もうひと頑張りお願いいたします。

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【4.コラムー映画と学生時代、そして『七人の侍』 総合人間学講座准教授 太田 淳】           

 ご存知のように私は、昨年から文学部で西条フィルムイブニングという映画鑑賞会を毎月開いています。私は映画について全くの素人ですが、ある時から東アジア文化史の授業で映画を取り上げるようになり、このようなイベントを開催するに至りました。

 映画に強く惹かれるようになったのは大学一年生の時ですが、それはあまり積極的な理由からではありません。私は高三の時に大学では文学部で勉強すると決心し、その時から早稲田に進む以外ほとんど考えませんでした。福岡・筑豊に生まれ育った私にとって、五木寛之の『青春の門』はこのさびれた地と私の出身校に全国的スポットを当てたバイブルであり、その主人公が進んだ第一文学部の名は、「人文学」や「東京」と同じ眩しさを持っていました。こうして彼と同じ道をたどって東京に出た私は、すぐに大きな不満と挫折を味わいました。文学部学生の相当は他学部の入試に失敗して入って来た者で人文学に何の希望も持っておらず、それにも拘わらず英語など彼らの学力にもクラブなど流行の場で遊ぶ時のスマートさにも私は到底太刀打ちできず、劣等感に打ちひしがれました。そんな私は、場末のうらぶれた名画座に1人で足を向けるようになりました。渋い旧作を観ては、自分が通になれた気になって自尊心を取り戻していたのです。

 先日フィルムイブニングで上映した『七人の侍』は、その頃に観た中でも特に印象に残っている作品です。暗い地の底から響くような声で泣き喚く農民たちは、野武士との闘いを前にして下卑た冗談に身をよじって哄笑し、恋する者の死を予期した少女は狂おしい情熱を見せながら、翌日には何も無かったように日常に戻って行きます。岩に張り付く松の根のような彼らの逞しさに、ただ圧倒されました。
 
  今、広大の教室でかじりつくようにスクリーンに見入っている学生たちは、まるでかつての私のように、見終わった後は少しだけ生意気になり、少しだけ成長して帰っているように見えます。そんな学生を見に、フィルムイブニングに来て頂けませんか。

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【5. 文学研究科(文学部)ニュース】

○広島大学オープンキャンパス2015/研究室訪問及び受験相談を行います
【日時】平成27年8月18日(火)・19日(水) 11:30~12:30及び14:10~15:00
【場所】文学研究科講義棟 B151大会議室
詳しくは、文学研究科HPをご覧ください。

○リテラ「21世紀の人文学」講座2015を開催します
【テーマ】「終活」を哲学しよう―生と死の幸福論―
【日時】平成27年12月5日(土)13:30~16:40
【場所】広島市まちづくり市民交流プラザ 北棟6階 マルチメディアスタジオ
【申込期間】平成27年10月1日(木)〜10月31日(土)
詳しくは、文学研究科HPをご覧ください。

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【6.広報・社会連携委員会より 野島 永】

  暑中お見舞い申し上げます。夏本番になってきました。文学研究科・文学部も前期セメスターの試験期間まっただなかです。学生さん、がんばってくださいね。

イブニング・フィルム「七人の侍」(黒澤明監督、1954年公開)、学生のみなさんと一緒に見てみたかったですね。劇中、志村喬演じる主人公島田勘兵衛、歴戦の智将ながら一国一城の主(あるじ)とはなれず、ひょんなことから非情な野武士たちとの分の悪い戦いに巻き込まれます。しかも見返りはろくにないときた。

 この映画で志村のファンになられたご年配の方々も多いのでは、というぐらい「かっこいい」。世に出られなかった中年の悲哀を漂わせつつも、圧倒的な武芸達者。トリックスターの三船敏郎演じる菊千代と絶妙なコンビを組むことになります。彼がなぜこの戦いを引き受けたかはわかりませんが、死地を見つけることも武芸に秀でた武士の大事な素養のひとつではなかったかと感じさせます。

 「死地を見つける」、少し物騒ですが、現代社会にも省みられるべき観点かもしれません。現代社会では「アンチ・エイジング」が市場経済を席巻しつくしています。「死」を極端なまでに「隠蔽」していく趨勢からは、殺し殺される戦国時代とはまったく異なる社会のように見えますが、かけがえのない自分の人生そのものに引きつけて見た場合、さして違いはないのではないでしょうか?それが志村の演技に親近感をもつ根源的な情動なのかもしれません。

  今年のリテラ「21世紀の人文学」講座は、「終活」―生と死の幸福論―。これまでになかったテーマですが、幸福に生き、そして幸福に死ぬための知恵を授かることができるかもしれませんよ、とさりげなく宣伝しておきましょうね。

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リテラ友の会・メールマガジン

オーナー:広島大学大学院文学研究科長 勝部 眞人
編集長:広報・社会連携委員長 吉中 孝志
発行:広報・社会連携委員会

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