メールマガジン No.69(2015年9月号)

リテラ友の会 メールマガジン No.69(2015年9月号)
2015/9/30 広島大学大学院文学研究科・文学部

□□目次□□
1.オープンキャンパス2015文学部、盛況でした!
2.第13回「文藝学校」講演会
3.文学部互助会旅行参加記
4.AIMS-HUプログラムについて
5.文学研究科(文学部)ニュース
6.広報・社会連携委員会より

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【1.オープンキャンパス2015文学部、盛況でした! 日本・ 中国文学語学講座教授  妹尾好信】

  8月18日(火)・19日(水)の両日、広島大学オープンキャンパス2015が開催されました。台風の影響が心配されましたが、うまい具合に天候が回復して初日を迎え、バスを連ねて学校単位で、親しい友人同士で、また家族でと、たくさんの高校生が東広島キャンパスに集まりました。文学部にも1,200人を超える高校生が来てくれました。両日ともメイン会場では足りず、サブ会場での中継映像を含めて、学部紹介ビデオの上映や、教員や在学生による学部の教育内容や学生生活の紹介に、熱心に耳を傾けてくれたのでした。

  各研究室も公開し、それぞれに展示や体験企画に工夫を凝らして高校生をお迎えしました。我が日本文学語学研究室も、例年同様、授業で実際に使われているテキストや演習の発表資料、近年に提出された卒業論文などを展示しました。変体仮名やくずし字で書かれた古典文学の原典資料を解読する過程や、近現代小説の研究にどのような方法や視点があるのかなど、在学生たちが経験を踏まえて説明し、もともとこの分野に関心のある高校生は興味津々で聴いてくれました。そして、誰もが知っている古典『百人一首』の江戸時代の写本・版本 (木版本)、そして版本を刷るための原版である版木も展示しました。それも、眺めるだけではなく手にとってページを繰ってみてよいのです。200年ほど 前の写本や版本の手触りを肌で感じ取ってもらう体験企画です。「授業ではこんな古い本を使うのですか?」と質問されましたが、残念ながら授業のテキスト はコピーや写真版を使います。しかし、古典が現代に伝わるまでの長い時間の経過と、その間に多くの人々が作品の伝播と継承に努力してきたことを常に意識しながら読んでいくためには、古い本に実際に触れる機会を持つことがとても 大事なのです。

  実は、今年のオープンキャンパスは、文学部を訪れる高校生の数が減ってしまうのではないかという心配がありました。ひとつには、4学期制導入のあおりで開催時期が例年より10日ほど遅くなってお盆休みの直後になったこと。遠くか ら学校単位で移動するのが難しい日程なのではないかという不安です。それともうひとつには、6月に文部科学大臣が全国の国立大学に対して、人文社会科学系の学部・大学院を廃止または社会的要請の高い分野に転換するよう検討を求めるという、とんでもない通達を出したことです。国立大学に文系学部はいらないと言わんばかりの内容で、文学部は一番に廃止されてしまうのではないかとマスコミで大きく報道されました。就職に有利とされる実学重視の昨今、文学部を志望する高校生は親や進路指導の先生を説得して受験してくれています。私たちはそんな熱い思いを抱いて入学してくれる学生たちに、やっぱり文学部に来てよかったと思ってもらえるよう熱意をもって指導しているのです。そこに国が冷水をあびせたわけですから、今さら文学部に行ってもしょうがないとそっぽを向かれてしまうのではないかと危惧したのです。

  しかし、杞憂でした。今年も文学部には例年とあまり変わらない数の高校生が訪れてくれて大賑わいでした。国の軽率極まる通達ですぐに文学部に閑古鳥が鳴くというようなことにはなりませんでした。とてもうれしいことです。でも、今後の不安はぬぐえません。

  そこで、この場を借りて学長先生にお願いがあります。監督官庁の顔色をうかがって黙っているのではなく、医学部の代表でも理系の代表でもない総合大学のトップとして、国が何と言おうと広島大学は文系学部を廃止したりは絶対にしない!と高らかに宣言していただけないでしょうか。そうすれ ば、これから広島大学の文系学部をめざす高校生は動揺することなく安心して受験勉強に取り組めます。それは広島大学全体の社会的評価を高めることになるはずですし、見識のある学長として後世まで讃えられるに違いありません。

  来年のオープンキャンパスも今年と同じようにたくさんの高校生が参集してくださることを心から期待しています。

○ オープンキャンパスに参加して 哲学・思想文化学コース中国思想文化学専攻 太田若葉
                      
  私は先日のオープンキャンパスにスタッフとして参加しました。そこでは現在広島大学文学部に興味を持っている高校生たちに、広島大学文学部ではどのようなことを学んでいるかを説明し、また、大学についての疑問や受験に臨む上でのアドバイスをしました。

  参加している高校生の中には不安でいっぱいな子や、友達と楽しそうにオープンキャンパスに参加している子など様々で、学生の相談コーナーでは受験勉強の仕方から、大学の魅力まで幅広く対応することになりました。

  全体でのコース紹介、学生生活紹介では大学、文学部での学びや学校生活について説明しました。この紹介は、自分の学びや生活を振り返り、文学部での学ぶことの意味を改めて考える機会となりました。また、高校生のころに抱いていた疑問や専攻分野を学びたいと考えていた気持ちを思い出すことができ、自分を見つめなおすことができました。そして、それを高校生に大学生生活の魅力や、文学部で学ぶことの面白さとして伝えるよう心掛けました。また、大学では主体的に学んだり行動したりすることの大切さを伝えました。ある高校生から「参加して広島大学文学部に行きたいと思うようになりました。」と声をかけられたとき、私を通して文学部や大学生活の魅力を伝えられたように感じ、嬉しく思いました。

  オープンキャンパスに参加した高校生たちがこの二日間で少しでも不安や悩みを解消し、広島大学文学部へ入りたいという思いを強くしてくれていたらいいと思います。そしてスタッフとして参加した私自身も、一生懸命な高校生たちをみて元気をもらい、自分を振り返り見つめなおすことができた、有意義な二日間になりました。
 
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【2.第13回「文藝学校」講演会 欧米文学語学・言語学講座教授 今林 修】 
           
  例年ですと、本講演会は10月もしくは11月に開催されるのですが、今年は高校生の集客を睨んで、夏休み前の連休の中日、7月19日(日)、鳥取県米子市の今井ブックセンターにて、文学研究科とNPO法人「本の学校」の共催による第13回「文藝学校」講演会が開催されました。今年の講演会が例年と違ったことがもう一つ、講師が5名で、昼食をはさみ、終日になったことであります。

  午前中は、本研究科博士課程前期を修了し、今井書店吉成店ご勤務の小谷裕香氏による「多和田葉子 -「言葉」は穴だらけ」と有元伸子教授による「三島由紀夫『金閣寺』と映画・演劇」があり、午後からは、筆者の「『はらぺこあおむし』を英語で読む」、妹尾好信教授による「奥書から古典を読む - 定家筆『土佐日記』・『更級日記』の場合 」、松本陽正教授の「サルトル「壁」- <実存>について考える」がありました。いずれの発表も「テクスト」を精緻に読むことからはじまり、小谷氏は、翻訳や映像を通して「言葉」を外から眺めることで多和田の作品に迫り、有元教授は、映画と演劇から『金閣寺』が読まれつづけられている意味を探り、今林は、『はらぺこあおむし』の製作過程を言語的証拠がいかに物語るかを示し、妹尾教授は、写本に添えられた奥書から『土佐日記』と『更級日記』の伝来や書写の事情をわかりやすく説明し、松本教授は、サルトルの短編「壁」から「実存は本質に先立つ」という有名な言葉が、いかに巧みにイメージ化されているのかを例証しながら、<実存>についても聴衆に問いかけました。

  位藤邦生先生(本学名誉教授)と永井伸和氏(今井書店グループ代表取締役会長)との出会いで始まった「文藝学校」も今年で13回目となり、企画・世話人も位藤先生から松本先生、そして妹尾先生と引き継がれてまいりました。二代目の松本先生も来年の三月にご定年をお迎えになり、今年で最後です。ここまでリピーターやファンが多い講演会も少ないのではないかと思います。松本陽正先生、長年ありがとうございました。先生のファンクラブの元女子高校生が第二ボタンを欲しがっていらっしゃるようでした。最後になりましたが、妹尾先生、もうひと頑張りお願いいたします。

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【3.文学部互助会旅行参加記  地表圏システム学講座准教授 伊藤奈保子】

  大山祇神社紫陽殿展示の国宝・大鎧も素晴らしかったが、今治市村上水軍博物館の推定室町時代中期、黒韋威胴丸(くろかわおどしどうまる)の肩上・押付板の飴色に輝く韋が胸を打った。表面は色褪せるも、背に張られた革は幾多の戦の汗が染み込み、先ほど脱いだかと見間違うほど当時を物語っていた。  

  平成27年9月12、13日、16名(幼児2名含)の参加をもって今年の旅行が敢行された。青空のもと、しまなみ海道を巡り愛媛県松山市への道程。大山祇神社参拝、村上水軍博物館観覧、下田水港を横にサザエ等新鮮な海鮮バーベキューに舌鼓、タオル美術館ではムーミン、スヌーピー展。水が峠を越えて、その夜は道後温泉で汗を流し、翌日は四国霊場第51番札所・石手寺を参拝、その後タルトの香りが漂うハタダお菓子館、そしてアサヒビール四国工場にてこの旅の祝杯をあげるという行程であった。説明上手なガイドの方、6人のお孫さんのいる女性ドライバーの安全運転のもと、皆、思い思いに羽を伸ばすといった感。

  時代は移り変わっても常にどこかで戦いは強いられる。それゆえ、人生の歓びとは何たるかを、ぽっかりと考えさせられる時間であった。

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【4.AIMS-HUプログラムについて 教育研究補助職員 財満邦子】

 AIMS(ASEAN International Mobility for Students Program)とは、ASEAN諸国間で学士課程における専門分野間の学生交流を促進することを目的としたプログラムです。文学部は、教育学部とともに、春学期(4月~8月)に協定校であるチュラーロンコーン大学(タイ)からの留学生10名を受け入れ、秋学期(8月~12月)に本学学生8名を派遣しています。「そもそもタイに行って何をするのか?」「他のプログラムと何が違うのか?」そんな疑問を持たれている方も多いかと思いますので、今回は本プログラムの具体的な内容に少し踏み込んでご説明させていただきます。

1.ハイレベルな英語講義の受講,事前学習
  派遣先であるチュラーロンコーン大学(Chulalongkorn University,以下:CU)は「タイの東大」とも言われる、タイトップクラスの大学です。派遣学生はBALAC:Bachelor of Arts in Language and Culture(文学部内のインターナショナルプログラム)に所属し、英語で幅広く人文学に係る科目を受講します。所属する学生の殆どは非常に高度な英語力を有しており、アメリカ留学帰りで本プログラムに参加した学生もそのレベルの高さに驚いた程です。また、意外にも(?)欧米圏からの留学生も多いようで、多国籍なクラスに身をおくことができます。そんなCU・BALACへ留学するためには、本来TOEFL iBT79,IELTS 6.0というスコア(英語圏の大学とほぼ変わらない水準)が必要ですが、AIMSでは学生交流促進のため、特別に少々低めのスコアで申請できます。とはいえ、本来は高度な英語力が要求されているのですから、そのままの英語力で送り出すわけにはいきません。また、大学では学生も教員も英語を話しますが、一歩街に出れば、やはりタイ語が必要な場面もあります。そうした不安を払拭するため、派遣前(4~7月)に英語で授業を受講するにあたり必要なスキル(プレゼン、ディスカッション、ノートテイキングなど)や、サバイバルタイ語および文化・マナーに関する事前学習を実施しています。ちなみに、後者については春に受け入れるタイ人留学生がTAとして会話練習・文化紹介を担当しており、彼らからも「自国の言葉や文化を見つめなおす良い機会になった」と非常に好評です。

2.現地での個人研究科目『国際課題研究』の受講
  受入・派遣学生双方に課される、本プログラムのメインとも言える共通科目です。それぞれの大学で担当教員の指導の下、東南アジア/日本に関する諸問題をテーマとした個人研究を行い、最終的には英語での発表およびレポート作成を行います。昨年度派遣学生の研究の例を挙げますと、文学部欧米文学語学コースのある学生は、事前学習で学んだタイ語に興味を持ち、タイ語における借用語の研究に挑戦しました。また、英語教師を目指しているある教育学部生は、タイにおける小学校の英語教育の実態を調査し、日本との比較研究を行いました。(タイの英語教育は日本よりも随分進んでいるようです。)また、個人研究とは別に、学生全員が協働で「AIMS-HU学生セミナー」を開催することとなっています。これは、ある1つのグローバルなテーマ(例:「大学のグローバル化を進めるには?」など)について、渡航先の学生を招き、学生同士で討論を行うものです。セミナーの進め方については事前指導を受けますが、テーマ設定、当日の進行は勿論、渡航先教職員への協力依頼、現地学生への広報など,ほぼ全てを学生が企画・運営します。昨年度学生の報告書によれば,期末試験、研究レポートなどで時間がない中、実施は困難を極めたとのことですが、適切なセミナーの運営方法や異文化間で議論することの難しさなど、多くの学びがあるセミナーとなったようです。

3.留学先での現地日系企業訪問、留学後の中長期インターンシップを通じた国際キャリア教育
  経済成長の著しい東南アジアは、現在多くの日本企業が進出する市場となっており、今の学生が将来社会に出る頃には、様々なビジネスで関わる機会が増えていることが予想されます。そんな地に赴任され、実際にビジネスの第一線で活躍されている企業人と直接面談できる機会を持つことで、今後のキャリア形成の一助とすることを目的として、留学先での現地日系企業訪問、留学後の中長期インターンシップを実施しています。2015年度派遣学生は、JETROバンコク、JICAタイ、カルビー、SATAKE、MAZDAへ訪問予定です。

  以上、AIMS-HUプログラムの内容についてご説明させていただきました。ここには字数の都合上基本的な内容のみ書かせていただきましたが、学生が東南アジアに留学して何を得たか、何を感じたかということを知りたい方は、是非プログラムHP内の留学報告書を一読いただければ幸いです。

  最後に、昨年度プログラム参加学生が始めた取り組みについてご紹介します。先述の通り、本学からの学生派遣は秋で、春にはCUの学生を受け入れていますが、派遣学生は基本的に全員受入学生のチューター(留学生の生活・勉学などのサポートをする学生)を務めてもらうことになっています。CUには元々チューター制度はなかったようですが、受入学生は帰国後自分たちでこの制度を立ち上げ、生活のサポートはもちろん、本学の派遣学生をはじめとした留学生のため、タイ各地へのバス旅行を何度も企画してくれたそうです。これを受け、派遣学生も留学生のために東広島市の魅力を伝えるトリップを実施したいと奮起。帰国後、「東広島市わくわく魅力探検隊」なる団体を立ち上げ、東広島市の「市民協働のまちづくり活動応援補助金」の支援対象事業へ応募したのです。市の補助金を受けるわけですから、市の発展に貢献し、今後も継続できる形の企画を予算計画まで含め,一から考えなくてはなりません。非常に大変な作業であったようですが、彼らは見事、採用枠を勝ち取りました。派遣前に「本当にこの子たちを送り出して大丈夫なのだろうか」と心配ばかりしていた身としては、何とも感慨深いものがあります。

 「東広島市わくわく魅力探検隊」は東広島市に住む外国人を対象として、市内の様々な地域を訪問するバスツアーや文化体験会などを企画・運営しています。2015年8月現在2回のバスツアー(正福寺山公園,トムミルクファーム等を訪問)を実施しており、いずれもAIMS受入学生を始めとした多数の外国人が参加し、非常に好評であったとのことです。東広島市にはまだまだこんな魅力的なスポットがあるぞ!という方、是非彼らのFacebookページヘ情報をお寄せください。
留学報告書
Facebookページ

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【5. 文学研究科(文学部)ニュース】

○リテラ「21世紀の人文学」講座2015を開催します
【テーマ】「終活」を哲学しよう-生と死の幸福論
【日時】2015年12月5日(土)13:30~16:40
【場所】広島市まちづくり市民交流プラザ 北棟6階 マルチメディアスタジオ         
【申込期間】平成27年10月1日(木)〜10月31日(土) 
 詳しくは、文学研究科HPをご覧ください。

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【6.広報・社会連携委員会より 金子 肇】

  昨年も9月発行のメルマガで編集後記を担当したので、その号を取り出してみると、出張中の上海で広島市の土砂災害を知り衝撃を受けたことを書いていました。現在、復興の途上にあるとはいえ、まだまだ被災者の皆さまはご苦労が絶えないことと思います。改めて、心よりお見舞い申し上げます。
 
  今年も8月に上海へ出かける機会があったのですが、今回興味深かったのは「七夕情人節」です。今年は、8月20日が旧暦の七夕でした。中国では、七夕に男性が女性にバラの花やチョコを贈り、優雅に食事をして恋人同士で愛を語らうのが定番になっているのだそうです(因みに、2月のバレンタインデーも男性が女性にプレゼントするとのこと)。いつ頃からそんなことになったのか、恋愛から遠ざかって久しい私は全く知らないのですが、やはりバレンタインデーと同じく商業主義の影響なのでしょう。食事に出かけるカップルの車で道が大渋滞するなか、乗ったタクシーの運ちゃんがカップルの車に罵声を浴びせているのが笑えました。彼らにとっては迷惑な話なのだと思います。

 さて、メルマガ第69号をお届けします。今回のメニューもなかなか充実しています。オープンキャンパスについて妹尾先生、第13回の開催になる「文藝学校」講演会について今林先生、「互助会旅行記」は伊藤先生にご執筆いただいています。そのほか、AIMS-HUプログラムについての紹介など内容盛りだくさんです。ぜひ、ご味読下さい。
    
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オーナー:広島大学大学院文学研究科長 勝部 眞人
編集長:広報・社会連携委員長 吉中 孝志
発行:広報・社会連携委員会

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