メールマガジン No.89(2019年 1月号)

リテラ友の会 メールマガジン No.89(2019年 1月号) 2019/1/25

□□目次□□
1.広島大学公開講座2018を終えて
2.リテラ「21世紀の人文学講座」2018を終えて
3.文学研究科(文学部)ニュース
4.広報・社会連携委員会より

 

1.広島大学公開講座2018を終えて【応用哲学・古典学講座教授 衛藤吉則】

  昨年11月17日と12月8日・15日に応用哲学・古典学講座のスタッフで、「西洋と東洋と日本の思想について考える」をテーマに公開講座に臨みました。

  講義のテーマは、第1回が硲先生による「カントの平和論」、第2回が赤井先生による「「主観」と「客観」は逆転したか?」、第3回は根本先生の「幸せに生きるとは-チベットの幸福論」、第4回は有馬先生による「幸せに生きるとは-中国の幸福論」、第5回が衛藤の「近代日本の倫理思想から生き方と平和を考える」、第6回は有馬先生による「江戸の儒学者は何を問題にしたか」です。

  ありがたいことに聴講希望者が105名にまで増え、会場を県民文化センターから東千田キャンパス未来創生センターに移しての講演となりました。講義に臨む者としては、「難解な哲学の話を分かりやすく伝えられるだろうか」「西洋と東洋と日本という視点から思想を語る試みはうまくいくだろうか」など未知数な部分もありましたが、講義での皆さんのまなざしや受講後のアンケートからある程度、各講義とも成功したように感じました。

  「期待通りだった」「興味・関心と合致していた」「理解できた」というアンケートの評価項目については、「強くそう思う・そう思う」の割合が8割から9割以上でした。記述回答には、「内容が難しく、短い時間では理解できないところが多かった」というご指摘もありましたが、私たちへの励ましも込め、いくつか肯定的な評価を最後にあげさせていただきます。
  「専門的なのにわかりやすく、興味深くおもしろい講座ばかりでした」「生活とつながっていたように思う」「ユーモアを交えて楽しかった」「幅広い話題で楽しく勉強になりました」「少し手ごわい内容でしたが、最前線の研究者の高いレベルが分かりました」「学校で学んだことがよく分かっておらず、ずっと思っていたことがこれだったんだと思えた」

  年の瀬に向け、哲学を通して活発で温かい思索の世界に導くことができたとしたらなによりです。

赤井清晃准教授(応用哲学・古典学講座)
【「主観」と「客観」は逆転したか?】

根本裕史教授(応用哲学・古典学講座)
【幸せに生きるとはーチベットの幸福論】

有馬卓也教授(応用哲学・古典学講座)
【幸せに生きるとはー中国の幸福論】

2.リテラ「21世紀の人文学講座」2018を終えて【欧米文学語学・言語学 准教授 上野貴史】

   昨年12月1日(土)に「合人社ウェンディひと・まちプラザ(まちづくり市民交流プラザ)」(広島市中区袋町)を会場として、2018年度リテラ「21世紀の人文学講座」を開催し、当日は44名の参加がありました。2018年度の講座のテーマは「南ヨーロッパの言語と文化を楽しもう!」で、宮川朗子先生(フランス文学語学)と上野貴史(言語学)が講師を担当しました。

  上野の演題は「中世ルネサンス文学とイタリア語の成立:ダンテ・ボッカッチョ・ペトラルカを中心に」で、南ヨーロッパ全般の歴史から始まり、俗ラテン語からイタリア語へ至る言語史を紹介しました。この中で、中世において、ダンテが「高貴な俗語」を模索する中で、「オイルのことば」(フランス北部)・「オックのことば」(フランス南部)・「スィのことば」(イタリア)を評価し、フィレンツェ方言を「高貴な俗語」として採用したことを指摘しました。そして、ダンテに続いてトスカーナ方言で書かれたボッカッチョの散文とペトラルカの韻文を模倣するというベンボなどの主張が基盤となり、「言語論争」を経て現在のイタリア語に至っていることを説明しました。

  宮川先生は「もう一つのフランス文学:19世紀におけるオック語文学の復興-フレデリック・ミストラル『ミレイユ』を中心に-」という演題のもと、中世に隆盛を極めたオック文学(プロヴァンス文学)がその後オイル語(フランス語)のもと衰退していく中で、19世紀にノーベル文学賞受賞者であるプロバンスの詩人ミストラルらによって南仏文学復興運動が起こり、現代オック文学に続いていることを紹介されました。このオック文学においては、現代オック語に地域によって多くの方言差が存在し、オック語標準語が成立していないことがオック文学の発展を阻害していることが指摘されました。また、オック語の民族音楽の音声も紹介され、普段聞くことのできない言語に触れることもできました。

  講演の後に質問の時間を設けましたが、その際に参加者から多数の質問と意見が寄せられ、活発な質疑応答があり、受講者の皆様の関心の高さを感じました。

 

上野貴史准教授(欧米文学語学・言語学講座)
中世ルネサンス文学とイタリア語の成立:ダンテ・ボッカッチョ・ペトラルカを中心に

宮川 朗子教授(欧米文学語学・言語学講座)
【19世紀におけるオック語文学の復興 ―フレデリック・ミストラル『ミレイユ』を中心に―】

公開講座を終えて

3.文学研究科(文学部)ニュース

○「古文書を見る会」を開催します
【 日 時 】2019年2月7日(木) 13:30~16:30
【 会 場 】文学研究科(文学部)1階 大会議室
【 出 陳 】
足利直義下知状・高師直奉書・後光厳天皇綸旨・足利義政袖判御教書・松永久秀書状・毛利元就書状・加藤清正書状・本多正純書状・柳沢吉保書状・女房奉書など約30点

詳しくは文学研究科HPをご覧ください。

○平成30年度広島大学学位記授与式(卒業式)を開催します
【日時】2019年3月23日(土) 11時開式 (12時頃終了予定)
【場所】東広島運動公園体育館 (アクアパーク)
(住所: 東広島市西条町田口67-1、TEL:082-425-2525)

○平成31年度広島大学入学式を開催します
【日時】2019年4月3日(水) 11時開式 (12時頃終了予定)
【場所】東広島運動公園体育館(アクアパーク)
(住所:東広島市西条町田口67-1、TEL:082-425-2525)

 

4.広報・社会連携委員会より【広報・社会連携委員会委員 根本裕史】

   メールマガジンNo.89をお届けします。今号では主に市民講座2件のレポートを掲載しています。
広島大学公開講座「西洋と東洋と日本の思想について考える」は私自身も一講義を担当させて頂きましたが、参加者の皆様と共に東西の思想に触れることで、躍動する哲学の時間を共有できたのではないでしょうか。「南ヨーロッパの言語と文化を楽しもう!」と題されたリテラ「21世紀の人文学」講座では、イタリア語の成立史やオック文学といった興味を惹く話題が続き、こちらも盛況であった模様です。
  年が改まり、2019年になりました。今年はチベット仏教思想家ツォンカパ没後600年にあたり、チベット研究者にとっては特別な年です。ゲルク派(黄帽派)と呼ばれる一大勢力を築いた傑僧ツォンカパは、明朝の永楽帝からの再三の招聘を断り、使者を追い返すほどの大人物でしたが、学問に対しては謙虚でした。彼は大著『ラムリム・チェンモ』の末尾で「菩薩行はその入口すらも会得するのが大変難しい。私は愚者中の愚者である」と述べています。ここには真に偉大なものを目の前にした人のみが経験する畏怖の思いが率直に表現されています。ツォンカパに倣って初心を忘れることなく、今後も学問の魅力を伝えていきたいものです。
  それでは、次号もお楽しみに。

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オーナー:広島大学大学院文学研究科長  久保田 啓一
編集長:広報・社会連携委員長  宮川 朗子
発行:広報・社会連携委員会

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